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第011話:戦略的撤退

作:◆PZxJVPJZ3g

ゲームが開始してから間もなく、蒼い殺戮者(ブルー・ブレイカー、025番) は二つの問題を抱えることになった。

1つは、遮蔽装置(ステルス・コート)が全く作動しないこと事だった。
遮蔽装置の方は、機能を凍結させられているのか、こちらからの信号に対して何の反応も示さない。
使えない物ならば仕方が無いと、遮蔽装置については諦めたが、もう片方の問題は思いの外深刻であった。
ある一定以上の高度になると、それ以上高度を上げる事が出来ないのだ。
最初は複合センサのエラーかと思った。しかし出力をどれだけ上げても、高度は全く変化しないのだ。
イメージとしては、自身の位置だけ固定させられて、周りの景色だけが通り過ぎてゆく感覚といえば分かるだろうか。
ただ問題は、それがアンカーでワイヤー等の物理的な物でもなく、こちらの推力不足でもなく、ましてや火乃香のような『気』の力とも異なる全く別の力によってそれが成されているという事だった。

上昇と下降を繰り返すこと数回、彼はここから離脱を不可能と結論付けて、支給されたバッグの中身を確かめる事にした。
最初に出てきたのは、簡素な地図だった。
地図に書かれたおおよその地形や建築物の配置を記録すると、すぐに地図をしまって次のアイテムを取り出す。
次に出てきた物は、彼に支給された武器──、緋色に染めあげられた太い木刀であった。
しかし、木刀という物が無い世界に住み蒼い殺戮者には、それは単なる木の棒にしか見えなかった。
木刀の柄を握って、軽く2、3回振ってみる。
ただの木の棒にしてはそれは少々重い。長さは火乃香の持つ刀と同じぐらい、だが刃の大きさはあの刀よりも2倍は大きい。
内臓武器の電磁衝撃ロッドさえも取り上げられてる今、こんな木の棒でも武器となるならばそれはそれで有り難かった。

そして他のアイテムを取り出そうとした瞬間、銃声とともに来た衝撃で彼はわずかに姿勢を崩した。
銃声の有った方へ視線を向けると同時に、セルフメンテナンスを開始する。
視線の先には、拳銃を構えた見知らぬ人間が油断なくこちらに照準を合わせている姿が見えた。
先ほどの銃弾は飛行ユニットの翼に命中したようだが、どうやらさしたる問題はなさそうだった。

現在の状況について、蒼い殺戮者は冷静に考える。
相手は銃器を所持しており、こちらは近接攻撃用の木の棒が一本のみ。
”拳銃弾程度で自分の積層装甲を貫通できるとは思っていないが、可動部に命中すると後々厄介な事になる”
そう判断した彼はすぐさまスラスタを稼動させ、木刀を手に早々とこの場から離脱した。

【蒼い殺戮者(025)@ザ・サード】
飛行ユニットの翼に銃弾痕有り、ただし飛行に関しては問題無し
所持アイテム:地図のみ(記録装置にデータ保存)、残りはその場に置いたまま
装備アイテム:梳牙(くしけずるきば)
現在地:F-2より高速移動中
行動指針:未定

【銃を撃った人間については次の書き手におまかせ】
【残り117人】

2005/04/10 修正メール

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