参ったな…と、心底オーフェンは思った。
こんな殺し合いの場に急に放り出されても、と呆れてしまう。
それと同時に、怒りも沸くのだが。
「まぁしかし…袋の中身とかも見ないとな」
彼はそう呟くと、袋をごそごそとまさぐる。
出てきたものは………。
「ダイヤの指輪………無理、俺もう無理」
ダイヤの指輪なんざ武器としての転用は不可能である。
それにこの状況で買い物が出来るわけではない。宝の持ち腐れだ。
そこまで考えると、オーフェンは一気に自信をなくして項垂れた。
どこまで続くのか分からない石段の一段目に、デイバッグを置いて。
そして一方……。
かつてある若い男に、そしてあの旅をする少女に自分を「師匠」と呼ばせた女性。
その彼女が静かに歩いていた。
彼女に配られたアイテムはパチンコ。残念だが弾は無かった。
「弾は小石でも良いでしょう……ですが、些か不安ですね」
落ち着いた物腰、
だがまっすぐに光る瞳。
そんな整った印象を持つ彼女は、何をするとも無く歩いていた。
そして長く続く石段を見つけた。
目に付いたのも何かの縁……それに、人の気配も感じる。
まずはそこに行くかと、歩みを速めた。
「……こんばんは」
「……ん?」
それから、数分にも満たない頃だった。
オーフェンと女性は、出会った。
「何者ですか、答えなさい」
「まずはアンタの名前が聞きたい」
「私のことはどうでも良いです。答えなさい、名前を」
「………オーフェン。で、アンタは」
「どうでも良いのです、聞こえないのですか?…オーフェン」
オーフェンは心底不愉快になった。
異常なほど押しの強い女性と、現状では使えないアイテム降臨の2連コンボ。
最悪だった。
だが打ちひしがれている場合ではない、これはオーフェンにとってはチャンスなのだ。
早速オーフェンは彼女に話を持ちかけた。
「おい、アンタ…俺と一緒に行動する気はないか?」
しばらく女性は黙っていた。
黙って、見透かすような瞳でこちらを見ている。
そして女性は、口を開いた。
「あなたがこのゲームからの脱出を考えているのであれば、仲間にしてあげても良いです」
オーフェンはご機嫌になった。
天にも昇る心地だった。
それを女性は、静かに見ている。
しかし、些か気になるフレーズがあった。
訂正しようとオーフェンはまた話しかける。
「いや、だからアンタが俺の仲間に…」
「あなたが私の仲間になるのではないのですか?」
「俺がなるんじゃない、アンタが」
「私の仲間になって脱出を考えるのでは?」
「…………あのな…だから俺がしたい事の為にアンタが」
「あなたが仲間ではないのですか?」
主導権争いを少々続けた所で、オーフェンは折れた。
「分かったよ、じゃあ俺がアンタの仲間になる」
「わかりました」
そしてオーフェンが指輪を片付けようとしたとき、
女性の目は、光った。
「待ちなさい」
「……今度は何だ?」
「その指輪、私が預かります」
「………はぁ?」
「私が預かると言っているのです」
硬直するオーフェン。
確かに現状では役に立たないが、出会い頭の取引道具などにも使えそうだ。
それに金額にすればかなりのものだ、そうそう手放したくは無い。
「これは俺に配られたんだ、俺が持つ権利がある」
「預かります、渡しなさい」
「いや、だからこれは俺に」
「渡しなさい」
「なぁ、アンタ……"オニ"だって言われた事あるだろ」
「渡しなさい」
オーフェンはまた折れた。
未練を引きずりながら女性に指輪を渡す。
女性がそれを受け取り、袋に入れるとある方角を指差した。
「まずはこの石段を登りましょう」
「なんでだ?」
「勘です」
「嫌だといったら?」
「そんな答えに興味はありません、登りましょう」
「………わかったわかった!!」
このゲーム、人災もアリかよ……と、オーフェンはため息をついた。
確かに災いだ、彼にとっては。
そして2人は、石段を登りだした。
【C-5/長い石段/1日目・0:23】
『逆関白(キノの師匠 (若いころver)/オーフェン』
【キノの師匠 (若いころver)(020)】
[状態]:正常
[装備]:パチンコ
[道具]:デイバッグ(至急品入り) ダイヤの指輪
[思考]:長い石段を登る
【オーフェン(111)】
[状態]:正常
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(至急品入り)
[思考]:女性(キノの師匠)についていく
【残り117人】
2005/05/23 挿し絵追加
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