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「FIRST JEALOUSY」3



久しぶりの日本。とても寒い。香港と違って日本の冬は寒いから。でも、それだけじゃない。
マンションの方にはまだ行かない。偉がいるかどうか自信がない。いきなり二人きりになってしまうと怖いから。
あなたから「話」とやらを聞く前に、自分で確かめたいことがあるの。

「それまで待ってらんないわよ!」
大道寺さんとなにやら深刻そうに話し込んでいたあなた。その話が聞こえてくるのが怖いばかりにわたしは大声を出した。
わたしがここにいるわよ!話の内容には注意してーって。
でも、小狼の驚き方ったらないわ。こんな可愛いわたしがわざわざやってきてあげたのに…なんて、ちょっと虚しい。

久しぶりに見た小狼。やっぱり電話なんかじゃダメ。顔を見られるのがいいわ。
あなたの髪が好き。好き勝手な方向を向いているけど、とっても似合ってる。抱きついたときに頬をくすぐる和毛(にこげ)。
あなたの口が好き。いつもキチンと結ばれている。
あなたの顎(おとがい)から頬にかけてのラインが好き。
白桃のような両の頬も。
でも、一番好きなのはあなたの目。
大きくて、よく見ると優しそうな色をたたえている茶色の瞳。長い長い睫毛が綺麗に縁取っている。
でも、今はその瞳を見つめても、あなたは気まずそうにすっと目をそらせてしまう。
残念で、そして、悲しい。

クラスのみんな全然変わってない。
変わったのは多分、小狼。そしてわたし。
そしてわたしは気づいてる。大道寺さんが時々とても優しげな目でわたしを見ること。その優しさの中には悲しみが混じっていることに。
あなたも知ってるわけね、大道寺さん…。

放課後、以前みたいに4人そろって校門を出ておなじみの下校路を歩く。
一緒に遊ぼうと木之本さんが言ったから。木之本さんも変わってない。
あなたは知らないのね、木之本さん…。

小狼はやっぱり大道寺さんと話してる。二人とも深刻そう。あ〜、やだやだ。

懐かしいペンギン公園にさしかかったとき、木之本さんと小狼の様子が変わり、緊張が場を支配した。
突然、可愛いペンギンたちが一斉に襲いかかってきた。
「これね、妙なことって!」
納得。次から次に襲ってくる。小狼は大道寺さんを庇ってる。わたしは木之本さんを。確かに、こんなことがたびたび起こるようじゃ、 小狼でなくても木之本さんを助けようという気になるわね。
でも、それとこれとは違う!違うわ!
(なによ、バカ、バカ、バカバカバカ!!小狼のバカー!!!)
わたしは理不尽な怒りをおもいっきりペンギンたちにぶつけて撃破していく。

ペンギンたちが次々倒れ、やっと周囲を見る余裕ができたとき、砂煙の向こうから小狼が大声で叫びながら駆けてくるのが見えた。
「苺鈴、さくら、大丈夫か!?」

…それが、不安が確信に変わった瞬間…。



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なんか、前置きがダラダラと長くてすみません。
どうしても3章くらいが書きやすいみたいで。
掲示板で「苺鈴ちゃんが幸せになるサイド」というのを
リクエストしていただいておきながら、こんなていたらくで申し訳ありません。

でもでも、苺鈴ちゃん「幸せ」サイドは絶対に書きたいと思います。
苺鈴ちゃんは、一番シンパシーを感じるキャラですし。