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バーチャルスター声優学1

七色の声音を持つ声優

七色の声音を持つ声優

エンディングのスタッフロールを見ていると、あっ!と声を上げることがある。それは自分の知っている声優が、自分の知らない声で演じていたときである。「こんな声も出るんだ…」 声の記憶という自分のデータベースをいい意味で裏切られた時、それは声優系オタにとって至福の瞬間である。

具体例を挙げてみよう。

まずは古典的な例から。小山 茉美と言ったらまずどんな役を思い浮かべるだろうか。もちろん大ベテランなのでそれこそ山のように数をこなしているわけだが、どの役を思い浮かべるかでその人のアニメ遍歴をかいま見ることができるかもしれない(?)。なにも思い浮かばない!と言う人も、「Dr.スランプ アラレちゃん」の則巻アラレと言えば分かるだろう。そう、「んちゃ!」である。だが、その一方でなんと、「機動戦士ガンダム」のキシリアも演じているのだ。「んちゃ!」と言ってたと思ったら「シャアかっ!?」である。キシリア様の言を借りれば、さすがに素性を知ったときは笑ったよ、という感じか。しかし、言われてみれば面影がある、とは言えまい。さらには、「ミンキーモモ」のモモ(初代)も演じている。もうだめ押し、「んちゃ!」と「シャアかっ!?」と「ピピルマピピルマ…」が同一人物なんである。驚くほかない。キャラから言ってもう相当長いキャリアになるわけだが、最近も「X」の夏澄火煉役を演じている。さすがにもう少(幼)女役は無理だろうが、まだまだ健在である。

お次は矢島 晶子。この人も恐ろしく声の幅が広い。気弱な美少女から、勝ち気な少女、お姉さん、少年、そしてちょっとお色気系まで、なんでもござれである。しかもそのどれもがぴったりフィットしているのだ。気弱な美少女系は最近では、「フィギュア17」のつばさ。これ、スタッフロール見るまでさっぱり気づかなかった。未熟なり。気弱ではないが、「地球防衛家族」の白鳥エレンも美少女役に挙げられるだろう。勝ち気な少女といったらなんと言っても「新機動戦記ガンダムW」のリリーナ様。思わず様をつけてしまう。「ヒイロ〜、早く殺しにいらっしゃ〜い」というのは衝撃的であった。むしろ筆者はこっちから入ったので、絵に描いたような美少女役も様になっていることを後から知って非常に驚いたのだが…。お姉さん系もOK。例えば「魔法戦士リウイ」のアイラなど。これはリリーナ系の声なのですぐに分かるだろう。少年系では「少女革命ウテナ」の石蕗美蔓くんの熱演や「新白雪姫伝説プリーティア」の万年などショタ系もこなすが、最も有名なのはなんと「クレヨンしんちゃん」の野原しんのすけだろう。「みさえ〜」である。リリーナ様としんちゃんが同一人物というのはまず、普通の人は理解できないだろう。そしてゴールデンタイムに出ていたかと思うと、裏ではお色気系の役もきっちりこなしている。例えば同級生2の舞島可憐ちゃん。他にもアレとかアレとか…しんちゃんと同じ人とは知らずお世話になっている人も多々いるだろう。比較的最近の役を挙げたが、「アイドル伝説えり子」のえり子もやっている。筆者は見ていなかったのでコメントできないのだが、ここから入った人もいるのだろう。ということは結構なキャリアの持ち主ということになる。

次は同じ番組内で声色を使い分けた人を挙げてみよう。ちょい役などで役を兼ねることはよくあるが、レギュラー級の役をしかも敵味方分かれてやった人はそういないだろう。その人は、潘 恵子である。彼女は「美少女戦士セーラームーン」の中で敵の大ボス・クリンベリルとうさぎちゃんの飼い猫?ルナを兼ねていた。「うさぎちゃん!しっかりして!」というセリフに続いて「はっはっは、セーラームーン!」というようなこともあってなかなか苦労したようである。それも分けて収録したのではなく、そのまま続けて収録したそうだ。技である。もっとも潘 恵子といえば、やはり「機動戦士ガンダム」のララァ・スン、「銀河英雄伝説」のアンネローゼがメイン。彼女の独特のけぶるような声色はキャラの印象を深めた。

さて、ベテラン級の紹介が続いてしまったが、今の若手にはいないのか? そんなことはない。若手筆頭として桑島 法子を挙げることができる。筆者が彼女を認識したのは「機動戦艦ナデシコ」のミスマル・ユリカだった。まさに天真爛漫といったキャラクターで、声ものびのびという感じだった。神風怪盗ジャンヌのまろん(怪盗ジャンヌ)も同系統のキャラで「強気に元気・本気に勇気」と素直に頑張ると言った声。単にこれだけの特徴なら、あまり注目しないのであるが、筆者がショックを受けたのがそれらのキャラクターと桑島 法子自身のキャラクターの乖離だった。確か声優トーク番組「渋谷でチュ!」だったと思うが、彼女がゲスト出演した。岩手県出身だそうで、岩手のお祭りちゃぐちゃぐ馬っこの紹介とそれを題材にした宮沢賢治の詩を朗読した。宮沢賢治は彼女の大好きな詩人だそうで、その詩を暗〜く暗〜く朗読するのだ。トーク番組中の彼女はポツポツとしか喋らず、浮きまくっていた。そこにはミスマル・ユリカは微塵も感じられない。これを筆者がいまだに覚えていることから衝撃の度合いをくみ取っていただきたい。その後彼女に注目していると、さまざまな役をこなしていることが分かった。少年系の役としては「鋼鉄天使くるみ」の仲人、ジーンシャフトのチキ。この辺りは元気のいい女の子系の役から推測もできなくはない。だが、高音の少女系、「鋼鉄天使くるみ2式」の那己 「はにはにだよ〜」や「アルジェントソーマ 」のハリエット「妖精く〜ん」も同一人物となると…。さらにお姉さん系では「X」の楓姫や「犬夜叉」の珊瑚なども演じている。「NOIR」の夕叢霧香も難しい役どころを演じきった。その一方でミスマル・ユリカ系の「Z.O.E」 ドロレスもまたやっているのだ。驚異の声色・演技力と言うほかない。

また、若手として川上とも子も挙げておきたい。彼女は当サイトが当代女性声優御三家と認定している。声色を使い分ける実力派声優である。

スタッフロールに注目!

普通のドラマ・映画が始まるとき、×××役は誰々、と必ず話題になる。どれだけいい俳優・女優を持ってくるかは大変重要なファクターであり、大きく興行収入にも関わってくる。一般人でも誰がどの役をやっていたか、というのはよく話題にすることである。翻ってアニメ界を考えると、一般人はどの声優がどの役をやっているかということにあまり注意を払っていないようだ。もちろん声優系オタは自分の持てる知識と耳を傾けて聞き込んでいるが、オタ(その他の)ですらあまり関心を持っていないことがある。

これは大変残念なことだ。人間の感性において視覚情報が大きく、アニメに関しても絵柄が話題の中心になることが多いとは思うが、声も非常に重要である。なぜならそれこそが漫画とは違う、アニメをアニメたらしめている決定的な要因だと思うからだ。

ぜひ、エンディングのスタッフロールにもっと注目して欲しい。そうして声優の名前を覚えてくると、七色の声音を楽しむことができるようになるのである。

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