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九四式軽装甲車(TK)

製作記


 前々から組みたいと思っていた九四式軽装甲車の製作を始めました。重量3.45トン、装甲は最大で12ミリしかない二人乗りの豆戦車。本来は特殊牽引車(TKというのは特殊牽引車の頭文字)として、敵弾雨下での物資輸送や連絡任務用として作られましたが、実際の戦場では歩兵直協戦車として使われました。当時の史料を見ても、軽装甲車にも関わらず現場では「戦車」と呼ばれています。新聞報道などでも「戦車隊」として報じられていますが、日本の一般人が戦車と装甲車の区別がつかないのは、昔も今も同じですな。

 特に、昭和12年からの日中戦争(いわゆる支那事変)で大活躍した車両ですが、敵の対戦車砲を食らえば一瞬で燃える棺桶と化し、地雷を踏めば何メートルも吹き飛ばされてしまうような、小さな「戦車」でした。

 今回作ったのは、初期生産型。後部手誘導輪の小さいタイプです。モデルカステンの連結式キャタピラの入った限定生産版を使用しています。

 ハッチの取っ手を真鍮線に換えた以外は素組です。エッチングもしっかり入っていて、部品点数も多くないのに超精密です。さすがファインモールドさん!!さくさく組み上がりました。バリが少しあるけど、そんなこと問題なしっ!

 ハッチ裏も素晴らしいモールドですが、車内がないので・・・。中を作り込むのが大変なのでクローズ。

 私は、この後ろからみたフォルムが大好きです。日中戦争の写真を見ると、この後姿の可愛らしい戦車が隊列を組んで前進しているものがたくさんありあます。有名なのは南京の中華門前の戦闘での藤田部隊の写真なんかがありますね。

 ということで、今回は独立軽装甲車第二中隊、藤田實彦中隊長車を再現することに。元々ファインモールドのマーキング例の中にあったからなのですが、「どうせなら藤田少佐も作るべしっ」ということで史料を探しやした。奮闘の記録はこちら。

 カステンのキャタピラ。1/72かと見紛うばかりのサイズ。小さいので組み立てに相当苦労しました。

2005年6月13日

 小さな車両なので、全体的に明るめのイメージで塗装しました。今回は、九七式中戦車と同様に、油粘土マスキングを行いました。多少油じみができますが、ウェザリングをすればわからなくなります。細かいモールドに詰まった粘土を除去するのが大変ですが。今回は、全てタミヤカラーで塗装しています。

 明るい色から塗るため、黄帯から塗りました。少しくすませるため、デザートイエローを微量混ぜてあります。基本塗装とした黄土色は、明るくするためにバフ+ホワイトで作りました。以下、その他の色にもバフを微量混ぜることによって、色の統一感を出しています。次に塗った褐色は、焦茶色との差を出すために、レッドブラウン+バフで、かなり明るい色としました。緑色は、暗緑色+グリーンとして色味を整えた後、バフを加えています。最後の焦茶色は、ハルレッド+バフで作りました。

 車体の方は、所謂ドライブラシは行っていません。その代わり、リベットや蝶番、装甲のエッジの部分に、光をエナメルのバフで丁寧に描き込んでいます。ドライブラシをすると、装甲板の平面の部分など余計な場所にも塗料がついてしまうので、私はしません。・・・単にドライブラシの仕方が間違っているのかもしれませんが(笑)

 足回りはいつもの塗り方。やっぱりカステンの履帯はいいですわ。九四式履帯は、めっちゃ高いですが。

 車体のウォッシングもしていません。こんな小さな車両でウォッシングを行うと、真っ黒になってしまう恐れがあるのと、拭き取るのが面倒なのもあります。仲田師匠に教わったとおり、非常に薄くしたエナメルのレッドブラウン+ブラックを使い、古くなって毛先の開いた筆で、微かに触れるくらいで擦ることによって、雨だれを描き込んでいます。

 焦茶色は、もう少し明るくても良かったのではないかと反省。墨入れしてもよく見えませんでしたから。迷彩塗装は、ファインモールドの説明書を参考にしましたが、厳密ではないです。藤田中隊長車の迷彩も載っていましたが、微妙に違っていまする。だって、小さいから塗りにくいんだもん。

 車体下部は、足回りと同じ色でドライブラシしています。ヘッドライトは、メタルックを内部に貼った後、透明プラ板をテンプレートとケガキ針を使って切り出したものを、レンズとしてはめ込んでいます。

 富士山のマークとは、藤田中隊長の「ふじ」からとっているそうです。

 やっぱりこのアングルがいいですわ。フェンダーに開いている穴は、履帯のテンションを調節するためのもの。右の方についているクランクを、この穴に差し込んで、ぐりぐり回すと調節できるようになっていました。

 この車両、やたらとピストルポートが多い。車長は、ここから拳銃射撃を行って、肉薄してくる敵の歩兵を撃っていたようです。しかし、どこかの部隊では、拳銃を小銃のように顔の近くで照準して発砲したために大怪我をした兵がでて、ピストルポートの使用が禁止されたとか。そんなんでは、ろくに狙って撃つことも出来なかったのでは??戦車が車内に搭載していた三八式騎兵銃を使用するにしても、こんな小さな車両では絶対狭すぎるし・・・。結局気休め程度だったんですかねぇ。

 藤田少佐と撮影。てか、人間の身長より低い。ちょうど、今の軽自動車くらいの大きさです。

 この装甲車、ひっくり返っても人力で起こせるくらい軽いのがウリだったとか。てか、それは簡単にひっくり返るということと表裏一体だったのでは(汗)藤田さんの書いた「戦車戦記」の中にも、地雷を踏んで何メートルも吹き飛んだ話がでてきますし。もちろん、中の人は無事じゃないっすよ。工兵隊が、クリークに架けた仮設橋を渡ろうとしたら、重みに耐え切れずクリークに落下する話もありました。こんな3.45トンの車も通れないようでは、何も通れないではないか!!しっかりしろよ、工兵隊!

 さてさて、今回は木でベースを作ってみようかと☆

2005年6月30日

 市販の飾り台(300円)に、ヒノキで立ち上げ部を作ってみました。なんか出来損ないのヒノキ風呂みたいになっちゃいました(汗)

 木を綺麗に切る自信がなかったので、渋谷の東急ハンズで「プレジションマイターソー」(3,129円)なる秘密兵器を購入。90°、45°(四角形用)、54°(五角形用)、60°(六角形用)、67.5°(八角形用)、75°(十二角形用)で切るためのガイドがついております。しか〜〜し、世の中そんなに甘くない!やはりこの新兵器をもってしても、上手く切るには熟練が必要なのでありました。

 結局、綺麗にすり合わせが出来なかった角の部分は、エポパテを盛って削りだすことに・・・。色染めして、ニスを塗るからわからないだろうと、楽観しておりますが、果たして・・・・

2005年7月16日