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「ビッグイシュー」購入と分析3

「ビッグイシュー」購入と分析1
「ビッグイシュー」購入と分析2
 平成16年3月10日(水)午前、新宿南口で第6号を購入。

署名記事の発信地の割合
第4号第5号第6号
ノース3本25%0本0%1本6.7%
ロンドン2本16.7%4本25%2本13.3%
スコット
ランド
1本8.3%1本6.2%1本6.7%
日本6本50%11本68.8%10本66.7%
合計12本16本14本
 たった3号分だけで判断するのは僭越かもしれませんが、国内発の記事が増加傾向にあるように思います。この傾向を否定的に捉えるならば、ビッグイシュー日本版の持ち味の一つである(?)イギリステイストが薄れることを意味し、肯定的に捉えるならば、ビッグイシュー日本版が自立をしつつあるということなのでしょう。どちらの解釈を採るか、あるいは、そもそもこの傾向をどう解釈するかは読者のご判断に委ねます。
 それでは個別の記事についての梗概と批評を述べるとしましょう。
ダイド―とてもナイーブ、時としてすごく鈍感(P4-5)
(梗概)1000万以上のアルバムヒットを飛ばす、プラチナディスク級のシンガー、ダイド・アームストロング(Dido Armstrong)へのインタビュー。
(批評)ここで白状します。すいません、ダイド・アームストロングなんて知りませんでした。曲も存じません。ただ、敢えて言うとすれば、使われた写真がJPEG画像らしいということです。
結構よ、私はやってみせるわ(P6-7)
(梗概)ソウルミュージックの新星、テリ・ウォーカーへのインタビュー。
(批評)ここで白状します。すいません、テリ・ウォーカーなんて知りませんでした。曲も存じません。ただ、敢えて言うとすれば、使われた写真がJPEG画像らしいということです。
臓器移植ツアーの内幕(P8-10)
(梗概)欧州会議のルース=ゲイビー・バーモット=マンゴルドの手による、ヨーロッパにおける臓器の不正取引の実態についての報告を中心にした記事。モルドバの貧しい人たちがトルコへ連れてゆかれ、そこでヨーロッパやイスラエルから来たお金持ちの患者に腎臓を移植するという。
(批評) ガクガク(((((((゚Д゚;)))))))ブルブル
イラク戦争に参戦した日本で(P12-13)
(梗概)1982年にレバノンのパレスチナ人難民キャンプで起きた虐殺事件をスクープしたカメラマン・広河隆一へのインタビュー。自らの体験をもとに日本の自衛隊イラク派遣に苦言を呈し、又、現在の戦争報道に危機感を持つ。
(批評)少女の死体写真が大きく掲載されていて、これは強烈な衝撃を与えます。
 又、氏の強烈な体験の前に私なんぞはグウの音も出ないのですが、それでも敢えて、「それは違うんじゃないか」と思ったことを述べます。
 氏は記事の中で、次のように述べています。
「自衛隊といってもイラク人にとっては占領軍に変わりないんです。こちらは人道支援のつもりでも、アメリカ兵のように犠牲者が出るようになれば、日本にも好戦論がうずまき、より深く占領に加担せざるを得なくなります。」(P12)
 この発言の前半部の「占領軍」というのは事実ですし、「こちらは人道支援のつもり」というのも日本の復興支援報道の多さから見てその通りだと私も思います。
 しかし、発言の後半部、すなわち自衛隊に犠牲者が出れば日本でも好戦論が渦巻くというのは、可能性としては低いと思います。というのは、そもそも好戦論といっても、どこと戦うのでしょうか。まさかイラクではありますまい。テロ組織なら、アル=カイーダの幹部が日本でのテロを画策していたこと(※1)や、スペインのマドリードの列車同時爆破テロの犯行声明文(※2)を見ても、テロ組織とわが国とが敵対関係にあるのはとっくの昔にわかりきったことです。
 又、自衛隊に多くの犠牲者が出た場合、日本では好戦論より撤退論が噴出するのではないかと私は思います。例えばソマリアで米軍のブラックホークが撃墜された時(※3)のように、「こっちは善意でやってるのにお前らは恩を仇で返しやがって…」という感情が国民の間に沸きあがり、かつて派遣反対を唱えていた人たちが「それみたことか」と息を吹き返し、小泉政権がクリントン政権と同様の電撃的撤退をするのではないでしょうか。
イラクで小学校を修復(P14)
(梗概)イラクで小学校を修復しているNGO(非政府組織)のJENの赤堀久美子へのインタビュー。
(批評)民間のイラク復興支援と現地のローカル情報は新鮮で興味を引きます。
 そんな中、こんな文章がありました。
「軍事はプロでも支援では経験のない自衛隊を送った日本政府は、イラクの復興支援を考えるほどに最悪の選択をしたのではないか、と私(※4)には思えてくる。赤堀さんは、現地でネットワークを持つNGOは安価で現地のニーズにこたえる支援が可能で、はるかに多くの雇用を生み出せると付け加える。」(P14)
 ここには、「自衛隊なんかより、ウチらNGOの方がうまくやれるんだから、お前ら自衛隊は引っ込んでろ」とでも言いたげなのがヒシヒシと感じられます。NGOの自負でしょうか。
 しかしながら、果たして赤堀さんのいう通りなのでしょうか。
 自衛隊の支援活動は、喩えて言うならば象のようなものです。巨大な組織であり、その動きは鈍く、NGOに較べて初動が遅く小回りも利きません。それが身軽なNGOにはもどかしく見えるのかもしれません。しかし、この巨大な像がひとたび動き出したなら、そのパワーたるや非常に大きいのです。例えば先日、自衛隊は給水車を12台、サマワ市に寄付しました。果たして資金力に劣るNGOにこれと同じことができるでしょうか。
 又、自衛隊は支援物資をクウェートからサマワまで運搬するのに民間委託してトラックで運ばせているのですが、それが度々略奪に遭うので、自衛隊の装甲車がトラックの警護に当たるとのこと。これが自前の武力を持たないNGOだったら、民間の軍事会社(※5)に警備を委託することになるのでしょうが、その代金を工面するのは並大抵のことではないでしょう。
 ほんの2つの例を挙げただけですが、これだけでも自衛隊にできてNGOに出来ないことがあるということはお分かりいただけるだろうかと思います。もちろんNGOにできて自衛隊にはできないことも多々あるでしょうから、そこはお互い様ではないでしょうか。
テロ組織からの帰還(P15)
(梗概)北アイルランドのテロ組織UVF(アルスター義勇軍)に所属していた元テロリストで、現在は兵庫県で宣教師をしている、ヒュー・ブラウンさんへのインタビュー記事。「加害者を許すことで被害者は救われる」と説く。
(批評)記事の殆どをテロリスト時代の回顧に費やしており、これを否定的に捉えるならば、他の記述が少ないということでしょうし、肯定的に捉えるならば、それだけ彼の半生が物語として面白いということです。
踊らされるな、自分で踊れ(P16-17)
(梗概)黒目さん、橋本尚樹さん、鈴木茜さんの三者三様の反戦運動を紹介。
名前年齢活動内容
黒目35サウンドデモ
橋本尚樹29ピースウォーク
鈴木茜23「関西ピースウォーカーズ」創刊

(批評)若い人たちによる「旧来の慣習にとらわれない反戦運動」(P16)というのは新鮮です。樺美智子さん(※6)は草葉の陰でどう思っていらっしゃるのでしょうか。
ITワーカー、マッジとその恋人ケリーの挑戦(P18)
(梗概)著名なミュージシャンの反戦歌をまとめたCD『ピース・ノット・ウォー』を作って売り、その収益を平和運動グループへ寄付するという活動を紹介したもの。
(批評)このビジネス手法は、日本でも行なわれるでしょう。ただし、成功するとは限りませんが。
守り神は”あめのうづめのみこと”(P19)
(梗概)廃材や古着などを様々なグッズに再生・販売している「さいせい工房うづ芽」の紹介並びにその経営者・加藤志帆さんへのインタビュー。
(批評)色々な意味で面白いですね。以上。
徴兵制度(P20)
(梗概)各国の徴兵制度を比較したもの。 (批評)将来、我が国で徴兵制度が真剣に議論されることを見越してこの記事を執筆しており、その点は見事です。
 又、右下の表(各国の現役総兵力・国防費とそのGDP比のグラフ)は要注目。アメリカは軍事費をかけすぎだし、北朝鮮は無理して巨大な軍隊(強いとは限らない)を持っています。色々見てゆくと、なにがしかの面白い発見があるかもしれません。
踊らせたい。楽しませたい(P24-26)
(梗概)東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦・川上つよしへのインタビュー。
(批評)正直に白状します。すいません、東京スカパラダイスオーケストラを私はロクに聴いたことがありません。よって割愛。
別れのストーリー(P27)
(梗概)書籍の紹介。テーマは「別れ」ということで、『春にして君を離れ』(アガサ・クリスティー)、『雪のひとひら』(ポール・ギャリコ)、『コレデオシマイ。風太郎の人生横着論』(山田風太郎)、『さよならおじいちゃん……ぼくはそっといった』(エルフィー・ドネリー)、『お気に入りの孤独』(田辺聖子)の5冊を紹介。
(批評)正直、私はこれらの書評を読んでも、買う気は起きませんでした。趣味嗜好が合わないからでしょう。
今どきのヘアスタイル(P28)
(梗概)最近の若者のヘアスタイルと、髪型別ラブチャート。
(批評)ラブチャートがちょっとわかりにくいですね。矢印がゴチャゴチャしています。
今月のひと(P29)
(梗概)ビッグイシュー販売員の馬原長重朗さんを取り上げたもの。「握りしめた百円玉から、お客さんの”温かさ”が伝わってくる」と語る。
(批評)ちなみに私も百円玉2枚を握りしめて買いに行ってますよー。まあ、温かいかどうかはともかくとして。
おわりに
 今号の記事の中で一番面白いと感じたのは、「臓器移植ツアーの内幕」です。はっきり言って慄然としました。これからもこういう記事を期待します。
(次号へ続く)

※1.幸いこの時は、日本にムスリムが少なすぎて実行に移せなかったとか。
※2.イギリスのアラビア語紙に寄せられた犯行声明文に、標的の一つとして日本を挙げている。
※3.この事件では、米軍兵の死体がソマリアの民衆に引きずりまわされる映像が世界中に流れ、アメリカ軍はソマリアから撤退した。尚、この事件は映画化された(「ブラック・ホーク・ダウン」)のでご記憶の方も多いだろう。
※4.赤堀さんのこと。
※5.民間の軍事組織。元軍人たちによる傭兵会社といったところか。現在のイラクにはこのテの会社が多く参入していると竹村健一氏が仰っていました。
※6.安保闘争で押し潰されて死んだ人。死後、殉教者の如くたてまつられた。

【参考文献】
「ビッグイシュー日本版 第4号」(有)ビッグイシュー日本 2004.1.8
「ビッグイシュー日本版 第5号」(有)ビッグイシュー日本 2004.2.5
「ビッグイシュー日本版 第6号」(有)ビッグイシュー日本 2004.3.4

著・泉獺(H16.3/15)
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