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国鉄があった時代
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国立国会図書館から引用

総動員基本計画綱領規定ノ件

昭和5年4月8日 閣議決定

  第一章 総則
第一条 総動員計画ノ目的ハ有事ニ際シ国防上国ノ全力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル様一切ノ人的及物的資源ノ体用ヲ平時状態ヨリ非常時状態ニ移スニ在リ
第二条 総動員計画ハ国ノ全力ヲ挙ゲテ行フベキ戦争ニ対シ之ヲ設定シ其ノ範囲ハ資源ノ統制運用ニ関シ必要ナル一切ノ事項ニ亘ルモノトス
    但シ事ノ軍機軍令ニ係ルモノノ設定ニ関与スルコトナシ
第三条 総動員計画ハ開戦ノ時ヲ基準トシ之ヲ設定スルモ開戦前ニ対スル計画ヲ包含スルモノトス
    開戦前ニ対スル計画事項概ネ別表ノ如シ
第四条 開戦前及開戦直後ニ対スル計画ハ軍ノ戦争準備完了ヲ迅速確実ナラシメ爾後ニ対スル計画ハ長期戦ヲ顧慮シ戦争力ヲ維持増進セシムルヲ旨トス
第五条 総動員計画ニ包含スベキ資源ハ帝国ノ領域(関東州、南満洲鉄道附属地及南洋群島ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ在ルモノヲ主トシ尚利用上必要且可能ノ見込アル外国資源ニ及ブモノトス
第六条 総動員計画ノ内容タル資源ノ配当及補填並ニ管制ハ左ノ方針ニ依ル
 一  戦争遂行ノ為直接欠クベカラザル需要ハ完全ニ之ヲ充足スルヲ旨トス但シ国民生活ハ之ヲ最小限度ニ保障スルモノトス
 二  資源需要ノ軽重緩急ニ応ジ之ニ優先順位ヲ付ス
 三  資源需給ノ統制ハ各資源毎ニ全般的ニ之ヲ行フヲ旨トシ其ノ実施ハ必要ニ応ジ総動員管区ヲ設定シテ之ヲ行フ
第七条 総動員計画ノ実施ニ付テハ当該戦争其ノ他ノ事件ノ特性及状況ノ変化ニ即応シ特ニ作戦上ノ要求ヲ顧慮シ遺憾ナキヲ期シ得ルヲ旨トシ国外出兵又ハ事変ニ当リテモ必要ニ応ジ適当ニ其ノ一部ヲ実施スルコトアルベシ
第八条 総復員計画ノ目的ハ非常時状態ニ在ル資源ノ体用ヲ円滑迅速ニ平時状態ニ移シ以テ国力ノ恢復ヲ最モ有効ナラシムルニ在リ
    第二章 資源ノ配当及補填
第九条 資源ノ配当ハ重要又ハ供給困難ニシテ特ニ各庁ニ配当スルノ必要アルモノニ付之ヲ行フ
第十条 戦争遂行ノ為直接欠クベカラザル需要ニ付資源配当上ノ優先順位ハ左ノ方針ニ依ル
 一  開戦ニ際シ軍ノ戦争準備完了ニ必要ナル資源(作戦上必要ナル輸送力、通信力、土地、家屋、倉庫其ノ他ノ工作物及軍機兵器製作上必要ナル工場ヲ含ム)ノ需要ハ優先第一順位トス
 二  軍用ノ補給及国ノ機関ガ所管業務遂行ニ必要ナル資源ノ需要ハ優先第二順位トス
第十一条 資源配当上ノ特則左ノ如シ
 一  人員 
   工場及事業場、船舶其ノ他ノ設備ノ従業者ハ資源需要官庁ニ於テ特ニ需要セザル場合ヲ除クノ外当該設備ト供ニ配当ス
 二 電力
   使用シ得ベキ電力ヲ配当シ設備ヲ配当スルコトナシ
 三 工場及事業場
   陸海軍省ニ於テ管理、使用又ハ収用スベキモノニ付配当ヲ行ヒ其ノ他ノ各庁ニハ必要已ムヲエザル場合ヲ除クノ外配当ヲ行ハス
 四 鉄道及軌道
   利用シ得ベキ輸送力ヲ配当シ設備ヲ配当スルコトナシ但シ輸転材料ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
 五 船舶
   船舶ハ陸海軍省ニ配当シ其ノ他ノ各庁ニハ利用シ得ベキ輸送力ヲ以テスル配当ヲ行ヒ必要已ムヲ得ザル場合ヲ除クノ外船名ヲ以テスル配当ヲ行ハズ
 六 陸海連絡輸送設備
   前号ニ準ズ
 七 通信施設
   陸海軍省ニ配当シ其ノ他ノ各庁ニハ通信力ヲ以テスル配当ヲノミヲ行フ
 八 土地、家屋、倉庫其ノ他ノ工作物
   政府ニ於テ管理、使用又ハ収用スベキモノニ付配当ヲ行フ
 九 治療施設
   前号ニ準ズ
 十 財力
   戦費ハ配当スルコトナシ
第十二条 資源全需要ニ対シ戦時供給力(現存額及現在設備ニ依ル全能力)不足スルモノニ付テハ之ガ補填ヲ為ス
第十三条 補填ニ関シテハ需要ノ軽重緩急及資源ノ特性等ヲ考慮シ所要ノ時期ニ所要額ヲ得ル如ク適切ナル方法ヲ講ズルモノトス
第十四条 人員ノ充足ニ付テハ左ノ方針ニ依ル
 一 軍事労務者ハ完全ニ之ヲ充足スルヲ旨トス
 二 直接総動員労務者ハ出来得ル限リ之ガ充足ニ努ム之ガ為必要アルトキハ軍事上許シ得ベキ範囲ニ於テ陸海軍省兵役関係者ノ召集ヲ猶予ス
第十五条 資源需要官庁ハ資源配当数量ノ範囲内ニ於テ之ガ取得使用ヲ行フモノトス
  第三章 資源ノ編成、利用、管理等
    第一節 通則
第十六条 国論ヲ統一シ国民ノ団結ヲ強固ナラシムルト共ニ進ンデ其ノ分ヲ為サシムル様精神作興ノ処置ヲ講ズ
第十七条 戦時経済組織ノ転移ニ付テハ特ニ迅速円滑ヲ旨トシ各種組織ノ有機的連繋ヲ確保スルヲ要ス
第十八条 団体ハ其ノ特性ニ応ジ戦時ノ目的ニ適合スル様管制ス特ニ産業団体ニ付テハ左ノ各号ニ依ル
 一 生産及輸入ノ維持増加、需給ノ調整並ニ配給ノ適正円滑ヲ期スル為産業団体ノ助長、改編又ハ新設ヲ行フ
 二 左記事業ハ必要ニ応ジ特殊ノ企業団体ヲシテ之ニ当ラシムルノ外特別ノ事情アル場合ニ於テハ現存ノ会社等ニ特別ノ使命ヲ付与シ之ヲ行ハシム
   イ 海運業
   ロ 重要物資ノ輸入
   ハ 食糧ノ配給
   ニ 主要燃料及電力其ノ他主要物資ノ生産及配給
第十九条 必要ニ応ジ未利用資源ノ開発利用ニ努ムルト共ニ外国資源ノ輸入利用ヲ図ル
第二十条 生産力増加ノ障害ト為ルベキ各種ノ制限ハ必要ニ応ジ緩和又ハ撤廃ス
第二十一条 価格ノ安定及配給ノ円滑ヲ期スル為概ネ左ノ処置ヲ講ズ
 一 配給組織ノ規正
 二 輸送ノ規正
 三 商取引ノ規正
   イ 売惜、買占ノ禁止其ノ他ノ暴利取締
   ロ 契約其ノ他商行為ニ対スル特別措置
 四 必要ニ応ジ物価、賃銀、料金、運賃等ノ規正
第二十二条 資源確保ノ為必要ナル物資ノ消費ヲ制限又ハ禁止ス
第二十三条 戦争ニ基因スル国民の損害ノ補償及救済ニ付テハ概ネ左ノ各号ニ依ル
 一 戦争遂行上政府ガ加ヘタル左ノ損害ニシテ必要アルモノハ之ヲ補償ス
   イ 管理、使用又ハ収用ニ依リ工場及事業場等ノ受ケタル損害
   ロ 徴発令適用ニ因リ生ジタル損害
   ハ 警備上ノ必要ヨリ直接加ヘタル損害
 二 前号ノ外戦争ニ基因スル左損害ニ対シテハ之ガ救済ノ処置ヲ講ズ
   イ 産業管制上ノ制限又ハ禁止ニ因リ生ジタル損害
   ロ 其ノ他救済ノ必要アル損害
第二十四条 戦時災害ニ対シ特別ナル保険制度ヲ設ク
第二十五条 対敵取引ニ付テハ概ネ左ノ処置ヲ講ズ
 一 敵国及敵国人トノ取引禁止
 二 前号ノ外敵国ヲ利スベキ取引ノ禁止
第二十六条 敵国財産管理ニ必要ナル処置ヲ講ズ
    第二節 労務
第二十七条 労務ニ関スル基礎資料ヲ得ル為左記各号ノ趣旨ニ依リ戦時国民登録制ヲ実施ス
 一 登録義務設定ノ範囲ハ状況ニ応ジ国民ノ一部又ハ全部トス
 二 登録義務者ハ本人又ハ関係者トス
 三 登録事項ハ左ノ如シ
   イ 氏名、性別及年齢
   ロ 兵役関係別
   ハ 住所又ハ居所
   ニ 身体ノ状況
   ホ 職業、経歴、性能等
   ヘ 係累
   ト 労務ニ関スル希望
第二十八条 労務管制ノ為採ルベキ方策中一般的事項左ノ如シ
 一 労務ノ管制ハ中央及地方ニ労務管制官庁ヲ特設シ之ニ当ラシム
  前項労務管制官庁ニハ政府、事業主、労働者等ノ代表者ヲ以テ組織スル
 二 労務ニ関スル資格要件其ノ他ノ制限ハ必要ニ応ジ之ガ緩和又ハ撤廃ヲ図ル
 三 労務者ノ雇入ハ原則トシテ公益職業紹介機関ニ依リ之ヲ行ヒ其ノ職業紹介ハ関係事業主及労働者団体トモ連絡ヲ保チ之ヲ行フ
 四 労務者ノ解雇ニ関シ一定ノ制限ヲ附シ労務者転換ノ円滑ヲ図ル
 五 労務ノ軽重及其ノ需要ノ緩急ニ応ジ之ニ対スル充足ノ順位ヲ定
 六 各種労務者ニ付諸般ノ事情ヲ較量シ之ガ就業ノ順位ヲ定ム
第二十九条 戦争遂行上必要ナル労務充足ノ為左記各号ノ趣旨ニ依リ国民労務制ヲ実施ス
 一 帝国臣民ニ付兵役以外別ニ戦争遂行上必要ナル労務ニ就クベキ□務ヲ設定ス
 二 前号ノ国民労務ハ之ヲ分チテ左ノ三種ト為ス
   イ 軍事労務
   ロ 直接総動員労務
   ハ 間接総動員労務
 三 軍事労務ハ陸海軍ノ所属ノ労務トス
   直接総動員労務ハ軍事労務ヲ除クノ外戦争遂行上直接必要ナル労務トシ左記労務ニ就キ之ヲ定ム
   イ 官公署所属ノ労務
   ロ 企業経営ニ関スル労務
   ハ 軍需産業ニ関スル労務
   ニ 運輸通信ニ関スル労務
   ホ 貿易ニ関スル労務
   ヘ 金融ニ関スル労務
   ト 特殊技能者養成ニ関スル労務
   チ 発明、考案其ノ他之ニ類似ノ労務
   リ 医療ニ関スル労務
   ヌ 情報、宣伝ニ関スル労務
   ル 警備ニ関スル労務
  間接総動員労務ハ軍事労務及直接総動員労務ヲ除クノ外外国民生活ノ維持ニ欠クベカラザル労務ニ就き之ヲ定ム
 四 国民労務ノ充足方法ニ付テハ先ヅ合意ニ依リ、合意ニ依ル能ハザルトキハ指定ノ労務ヲ強制ス
 五 軍事労務者ハ陸海軍所定ノ統制ニ服ス
  直接総動員労務者ハ其ノ労務遂行ニ関シ公務員ニ準ズル責任ヲ負ヒ政府ノ監督ニ服ス
  間接総動員労務者ハ其ノ転業ニ付制限ヲ受ク
第三十条 労働争議ノ予防及解決ノ為採ルベキ方策左ノ如シ
 一 労働争議ノ原因ト為リ易キ事項ハ政府ニ於テ之ヲ管理ス
 二 特ニ労資協調ヲ勧奨シ事情ニ応ジ工場委員会其ノ他労資意志疎通機関ヲ設置セシム
 三 雇主ノ不法又ハ不当ナル処置ニ対スル労務者ノ救済請求ニ関シテハ特ニ簡易迅速ニ之ヲ処理ス
 四 労働争議ハ斡旋調停ニ依ルノ外必要ニ応ジ強制仲裁制ニ依リ解決ス
 五 主張貫徹ノ手段トシテノ左記行為ハ必要ニ応ジ之ヲ禁止ス
   イ 怠業又ハ罷業
   ロ 工場閉鎖又ハ解雇
第三十一条 総動員上必要ナル特殊技能者養成ノ為採ルベキ方策左ノ如シ
 一 特殊技能者ノ養成ハ出来得ル限リ現存ノ施設ノ利用ニ努メ必要ニ応ジ之ガ拡張又ハ新設ヲ為ス
 二 養成ノ課程ハ実用ト迅速トヲ主眼トシ之ヲ編成ス
 三 職工養成ノ為工場ニ之ガ速成機関ヲ附設セシメ他面教育機関ノ状況ニ応ジ委託制度ヲ併用セシム
第三十二条 労務ニ関シ特ニ施設スベキ事項左ノ如シ
 一 左記労務者ノ雇入ヲ奨励シ必要ニ応ジ之ガ雇入ニ関シ特典ヲ付与ス尚之ニ必要ナル授産施設ヲ為ス
   イ 失業者
   ロ 戦争遂行上必要ナラザル業務ニ従事スル者
   ハ 婦人
   ニ 老幼者
   ホ 不具病疾者
二 婦人、老幼者及不具病疾者ヲシテ従事セシムベキ業務ノ範囲ヲ定メ且之カ紹介輔導ヲ行フ之ガ為特種労務者ニ対スル作業形態ヲ採用シ其ノ就業ヲ容易ナラシム
 三 囚人ニ対シ必要ナル労務ヲ課ス
 四 必要ニ応ジ俘虜ニ労務ヲ課ス
 五 団体ニハ其ノ結成ノ動機及目的ヲ考慮シ之ニ適当ナル労務ヲ課ス
 
    第三節 食糧
第三十三条 主要食糧生産維持ノ方策トシテ概ネ左ノ処置ヲ講ズ
 一 農業経営ノ集約、空地ノ耕作ヲ奨励シ必要ニ応ジ作付ヲ指定シ事業半途ニ在ル開墾、耕地整理、用排水幹線改良等ノ事業ヲ国営トス
 二 農業運営ノ為官有地ノ払下貸下ヲ簡易ナラシム
 三 耕作ノ持続ニ関シ必要ナル事項ヲ規定ス
 四 農業上紛争ハ主トシテ小作調停法ノ運用及農会等ノ斡旋調停ニ依リ迅速解決ヲ図ル
 五 必要ニ応ジ学校生徒ヲシテ農作ノ援助ヲ為サシム
 六 町村耕作組合、利用組合等ノ設置ヲ特ニ奨励シテ協同利用ノ施設ヲ講ズ
 七 農業用及漁業用機械器具、経営材料ノ生産ヲ維持シ配給ヲ円滑ナラシム
 八 肥料ノ生産、消費及其ノ配給ノ円滑ヲ図ル為肥料管理ノ方策ヲ講ズ
 九 農業及漁業資金特別融通ノ途ヲ講ズ
第三十四条 主要食糧ノ節約、代用食ノ利用拡張ヲ図ル為概ネ左ノ措置ヲ講ズ
 一 米ヲ酒造又ハ製菓原料トスルコトヲ制限又ハ禁止ス
 二 主要食糧ヲ飼料其ノ他ノ用途ニ使用スルコトヲ制限又ハ禁止ス
 三 混食日ノ設定其ノ他代用食混食ノ奨励ニ努メ穀類ノ精白歩合又ハ製粉歩止ヲ定メ調理方法ヲ指導スル等ノ方法ヲ講ズ
第三十五条 食糧配給ノ適正円滑ヲ期スル為概ネ左ノ措置ヲ講ズ
 一 食糧ノ生産及配給ニ関スル公共団体及公益団体ノ事業ヲ奨励シテ食糧ノ供給ヲ規正スルト共ニ購買組合其ノ他ノ協同購入ノ施設ヲ奨励スル等配給ノ連絡保持ノ方法ヲ講ズ
 二 食糧輸送順位ヲ定ムル等其ノ移動ヲ規正ス
 三 主要食糧及重要飼料ノ輸出入ハ政府之ヲ管理ス
 四 主要食糧ノ価格及取引関係ニ付所要ノ規正ヲ行フ
 五 米及砂糖ニ関スル管理方策ヲ講ズ
 六 農業倉庫ハ必要ニ応ジ政府之ヲ管理ス
 七 食糧確保ノ為必要アル時ハ現有量ノ申告ヲ為サシム
 八 米、麦ノ国内予備貯蔵量ヲ定ム
第三十六条 個人ニ対スル食糧定量ヲ定メ必要ニ応ジ特定ノ主要食糧ニ付個人配分量ヲ定メ購買券ヲ発行シ各市町村ヲ通ジテ之ヲ分配ス

    第四節 産業
第三十七条 軍需産業ニシテ生産力ノ維持増加ヲ図ルニ困難ナルモノニ付テハ努メテ之ヲ助成ス    
第三十八条 国民生活ノ最小限度ヲ保障スルニ必要ナル産業ハ之カ維持ニ努ム
第三十九条 国家的産業ハ戦争ニ直接有効ナラザルモノト雖モ戦争遂行上支障ナキ範囲ニ於テ之ガ維持ニ努ム
第四十条 戦時比較的有用ナラザル産業ハ必要ニ応ジ之ヲ制限又ハ禁止ス
第四十一条 戦時打撃ヲ受クベキ産業ハ其ノ特性ヲ顧慮シ戦争遂行上成ルベク之カ有効ナル利用ヲ図ル
第四十二条 戦時有用ナル産業ニ付テハ之ガ最モ有効ナル利用ヲ図ル為必要ニ応ジ企業ノ併合又ハ合同及標準主義ノ採用等企業ノ合理化ヲ図ル
第四十三条 戦争遂行上特ニ重要ナル事業ハ政府ニ於テ之ヲ管理ス(必要ニ応ジ其ノ一部又ハ全部ヲ国営トス)
第四十四条 戦争遂行上特ニ重要ナル物資ノ生産ヲ為スコトヲ得ベキ工場及事業場中必要ナルモノハ政府ニ於テ管理、使用又ハ収用ス但シ主要軍需品ノ生産上特ニ必要ナル工場及事業場ハ直接陸海軍省ニ於テ管理、使用又ハ収用ス
第四十五条 戦争遂行上重要ナル原料材料及成品ニ付テハ一般ニ消費ノ節約ヲ行ハシメ且必要ニ応ジ之ガ消費ヲ制限又ハ禁止ス
第四十六条 戦争遂行上必要ナル原料材料及成品ハ之ガ充足ヲ完全ナラシムル為工場及事業場ノ拡張、新設又ハ転用等ニ依リ極力増産ヲ図リ且注文ノ分配ヲ規正ス
第四十七条 戦争遂行上必要ナル原料材料及成品中軍需上特ニ重要ナルモノニ付テハ之ガ管制ノ為必要ニ応ジ左ノ処置ヲ講ズ
   確保ノ処置
   イ 現有量ノ申告
   ロ 貯蔵ノ規正
   ハ 移動ノ規正
   ニ 使用ノ規正
   ホ 売買及加工ノ規正
   ヘ 輸出入ノ規正
 二 配給ノ処置
   イ 輸送優先順位ノ設定
   ロ 配給優先順位ノ設定
   ハ 配給機関ノ特設
   ニ 政府ノ直接供給
第四十八条 重要ナル物資ノ生産ニ必要ナル原料材料ニ付テハ之カ十分ナル供給ヲ図ル為前三条ニ依ルノ外代用品ノ使用□廃品及不要品ノ利用並ニ既製品ノ再用ヲ図ル
第四十九条 鉱産能力増加ノ手段トシテ特ニ左ノ処置ヲ講ズ
 一 採鉱場、選鉱場及製錬場間並ニ之ガ外部トノ輸送連絡設備ノ完備ヲ図ル
 二 廃坑、休坑等ノ利用ヲ図ル
第五十条 林産ニ対シテハ特ニ木材濫伐ノ防止ノ処置ヲ講ズ
第五十一条 畜産物ニ対シテハ各需要ノ緩急ニ応ジ努メテ之ガ維持増殖ヲ図リ家畜伝染病予防ノ処置ヲ講ズ
第五十二条 馬ノ確保及増殖ニ付テハ国内馬数ト各需要ノ関係ヲ顧慮シ概ネ左ノ処置ヲ講ズ
 一 移動ノ規正
 二 処分ノ規正
 三 優良馬ノ輸入
 四 種馬及牝馬ノ適当数ノ維持
第五十三条 水産維持ノ為特ニ漁場ノ確保ノ処置ヲ講ズ

   第五節 燃料及電力
第五十四条 一般ニ燃料消費ノ節約ヲ行ハシメ且必要ニ応ジ之ガ消費ヲ制限又ハ禁止ス
第五十五条 燃料ノ増産ニ付テハ特ニ大規模ノ試掘ヲ行ヒ且集約的生産ノ処置ヲ講ズ
第五十六条 燃料ノ合理的利用ヲ図ルト共ニ特ニ石炭瓦斯副生産物ノ強制採取ノ処置ヲ講ズ
第五十七条 代用燃料ノ増産ヲ図リ之ガ使用指定又ハ奨励ス
第五十八条 前各条ノ外燃料ノ管制ハ左ノ各号ニ依ル
 一 石油ハ政府之ヲ管理シ石炭ハ必要ニ応ジ政府之ヲ管理ス
 二 石油管理ハ左記ニ依ル
   イ 採油場及製油工場ノ管理
   ロ 所有量ノ申告
   ハ 移動ノ規正
   ニ 使用ノ規正
   ホ 輸出入ノ規正
   ヘ 分配ノ規正
 三 石炭ニ付テハ第四十七条ニ準ズルノ外炭質及輸送関係ニ応ジ分配ノ規正ヲ行フ
第五十九条 電力消費ノ節約ノ為左ノ措置ヲ講ズ
 一 電燈飾ノ制限又ハ禁止
 二 照明用電力ノ制限
 三 前二号ノ外電力使用ノ制限
第六十条 電力ハ必要ニ応ジ左ノ各号ニ依リ政府之ヲ管理ス
 一 発電所及変電所ノ管理
 二 送電線路ノ管理
 三 分配ノ規正特ニ電力配給優先順位ノ設定

   第六節 運輸通信
第六十一条 運輸通信ノ管制ハ開戦初期ニ在リテハ作戦上ノ要求ニ応ジ軍ノ戦争準備完了ヲ迅速確実ナラシメ爾後ニ在リテハ長期ニ亘ル戦争遂行ヲ容易ナラシムル様其ノ需要ノ緩急ニ応ジ各種運輸通信機関ノ全能力ヲ最モ有効ニ発揮スルヲ主眼トス
第六十二条 重要物資ニ付之ガ輸送目的、輸送時期、輸送量、利用スベキ運輸施設特ニ陸上輸送力ト海上輸送力トノ関係、物資移動ノ変化、配給組織等ヲ考慮シ生産地、集散地、消費地ヲ適当ニ連繋スル戦時輸送系統ヲ設定ス
第六十三条 鉄道及軌道ハ必要ニ応ジ政府之ヲ管理ス
第六十四条 専用ニ供スルモノノ外海運ニ従事スル船舶ハ必要ニ応ジ政府之ヲ管理ス
第六十五条 専用ニ供スルモノノ外航空施設ハ必要ニ応ジ政府之ヲ管理ス
第六十六条 戦地及作戦上特ニ必要ナル地域ニ於ケル必要ナル運輸施設ハ軍ニ於テ之ヲ管理ス
第六十七条 輸送物件ニ関シ其ノ需要ノ重要性及時期、輸送区間等ヲ考慮シ輸送ノ優先順位ヲ定メ尚輸送能力全般ノ発揮ノ為必要ナル指定、制限又ハ禁止ヲ行フ
第六十八条 国外ニ在ル船舶ニ対シテハ開戦ニ先チ其ノ所在ニ応ジ発航若ハ帰還ノ時期又ハ帰還地、寄港地若ハ航路ヲ指定シ必要ニ応ジ重要物資輸送又ハ情報蒐集ノ任務ヲ賦課ス
第六十九条 輸送状態ノ変化ニ応ジ必要ナル運輸施設及保管施設ノ移動拡張等ヲ図ル
第七十条 各地方ノ状況ニ応ジ小運送ノ適当ナル利用ヲ図ル
第七十一条 各種輸送ノ連絡ヲ確保シ特ニ陸上輸送ト海上輸送トノ連絡及鉄道輸送ト小運送ノ連絡ヲ円滑ナラシム
第七十二条 各種港務機関ノ連絡ヲ緊密ナラシメ必要ニ応ジ各地域毎ニ適当ナル機関ヲ設ケテ港務ヲ管制ス
第七十三条 輸送力ノ浪費ヲ予防シ輸送能力ヲ発揮スル為特ニ包装ノ規正、復行輸送具ノ利用、交叉輸送ノ防止其ノ他輸送速度ノ調節等ノ措置ヲ講ズ
第七十四条 通信力需要ノ変化ニ応ジ各種通信施設ノ全能力ヲ発揮セシムル為戦時通信系統ヲ設定シ必要ナル施設ノ変更ヲ為シ必要ニ応ジ通信ノ方法、種類、時間等ニ付指定、制限又ハ禁止ヲ行フ
第七十五条 放送無線電話施設ハ必要ニ応ジ政府之ヲ管理ス
第七十六条 戦地及作戦上特ニ必要ナル地域ニ於ケル必要ナル通信施設ハ軍ニ於テ之ヲ管理ス
第七十七条 無線電信及、無線電話ニ付テハ円滑確実ナル様管制シ特ニ左ノ処置ヲ講ズ
 一 周波数、時間、電力等ハ関係各庁ニ於テ協定ヲ行フ
 二 無線電信及無線電話ノ不法施設及不法使用ノ取締ヲ徹底シ必要ニ応ジ施設無線電話ノ使用ヲ制限又ハ禁止ス
 三 軍ニ於テ管理スル以外ノ無線電信電話ニ対シ其ノ所在及設備ニ応ジテ戦争遂行上必要ナル任務ヲ課ス
第七十八条 電話及無線電話ニ付テハ之ガ優先使用ニ付必要ナル処置ヲ講ズ
第七十九条 隠語及秘辞其ノ他ノ秘密通信ハ之ヲ制限又ハ禁止ス必要ニ応ジ電報ニ使用スル外国語ヲ制限ス
第八十条 通信力需要ノ変化ニ応ジ必要ナル通信施設ノ拡張等ヲ図リ特ニ海底d線ノ急速施設ニ付必要ナル処置ヲ講ズ
第八十一条 運輸通信施設ノ天災其ノ他ニ因ル損害ノ予防及復旧其ノ他交通上ノ安全保持ノ為必要ナル処置ヲ講ズ
  主運輸通信線ニ生ズベキ障害ヲ顧慮シ復運輸通信線ヲ予定ス

   第七節 貿易
第八十二条 貿易ノ管制ハ全国的ニ之ヲ行フ
第八十三条 戦争遂行上必要ナル重要物資ニ就キ之ガ輸出ヲ制限シ必要ニ応ジ輸出禁制品ヲ定ム
   外国市場ヲ目的トスル物資ノ輸出ハ戦争遂行ヲ妨ゲザル限リ努メテ之ヲ奨励ス
第八十四条 戦争遂行上必要ナル重要物資ハ内外ノ情勢ニ応ジ関税ノ軽減又ハ撤廃等ノ方法ニ依リ極力之ガ輸入ニ努ム
   戦争遂行上必要ナラザル物資ノ輸入ハ必要ニ応ジテ之ヲ制限又ハ禁止ス
第八十五条 重要物資ノ輸入ハ政府之ヲ管理シ海外ノ原産地又ハ調達地ニ特殊購買施設ヲ設クル等ノ処置ヲ講ズ
第八十六条 戦費ハ之ヲ臨時軍事費及総動員費ト為シ各開戦前戦争準備ニ要スル経費、開戦後戦争準備完了ニ要スル経費及戦争継続ニ要スル経費ニ分ツ
  臨時軍事費ハ陸海軍所要ノ経費トス
  総動員費ハ総動員実施ニ要スル左ノ経費トス
 一 総動員機関ノ編成維持及総動員事務ニ要スル経費
 二 直接戦争ニ必要ナル国営事業ノ創設又ハ拡張及其ノ維持ニ要スル経費
 三 直接戦争ニ必要ナル民間事業特ニ軍需産業ノ助成ニ要スル経費
 四 戦役従事者ノ家族、戦死者及戦病死者ノ遺族等ノ救護及扶助ニ要スル経費
 五 前各号ノ外専ラ総動員業務遂行ニ要スル経費
第八十七条 臨時軍事費ハ事件ノ開始ヨリ其ノ終局迄ヲ一会計年度トスル特別会計ヲ設置ス
  戦費予算ハ出来得ル限リ弾力性ヲ保タシムル様簡易ナル形式ニ於テ之ヲ編成スルモノトス
第八十八条 中央及地方ヲ通ジ既定経費ノ節約ヲ断行ス
  戦争遂行上必要ナル場合ヲ除クノ外新規事業ハ之ヲ認メザルモノトス
第八十九条 戦時税制ニ付テハ概ネ左ノ各号ニ依ル
 一 租税収入ヲ以テ公債利子以外ノ戦費ノ支弁ニモ充当スルコトニ努ム
 二 広ク戦時税ヲ設定ス特ニ戦時利得其ノ他ノ不労利得及奢侈品等ニ重課ス
 三 一般ニ増税ニ当リテハ国民生活ヲ著シク壓迫セザルコトニ努ム
第九十条 戦争遂行上必要ナル場合ヲ除クノ外中央、地方及民間ヲ通ジ起債ヲ抑制ス
  起債ニ当リテハ特ニ戦争遂行上有用ナラザル事業ニ対スル民間投資ノ吸収ニ努メ小額公債、愛国公債等ノ発行方法ヲ講ズ
第九十一条 金ノ引出及流出ノ防止乃至正貨ノ充実ニ関スル処置ヲ講ズ
第九十二条 通貨増加ノ為銀行券ノ発行制限ノ緩和、小額紙幣及補助貨幣ノ増発、戦地ニ流通セシムベキ特別通貨発行ノ処置ヲ講ズ
第九十三条 開戦前後対外為替、公債其ノ他主要有価証券ノ暴落、銀行取付、金融梗塞等ニ対スル応急的措置ヲ講ズ
第九十四条 戦時産業金融ノ便ヲ図リ主要金融機関ノ連合ノ組織、産業助成債券ノ発行等ノ処置ヲ講ズ

   第九節 其ノ他
第九十五条 国民教化ニ関シテハ左ノ各号ニ依ル
 一 愛国教育ノ普及其ノ他戦争遂行上必要ナル教化ノ処置ヲ講ジ戦争遂行上有害ナル宣伝及邪教、送信等ノ流行ヲ防止シ其ノ実施ニ当リテハ教育機関及関係諸団体ノ利用ニ努ム
 二 教育ハ平時ノ如ク維持スルヲ旨トシ必要ニ応ジ学科課程及其ノ程度ノ改廃ヲ行フ但シ職業教育及専門教育ニ関シテ 必要アルモノハ第三十一条ノ各号ニ準拠シ戦争遂行上ノ目的ニ適合セシムルニ努ム
第九十六条 国民保健ニ関シテハ左ノ各号ニ依ル
 一 特ニ戦時発生又ハ増加ノ恐アル伝染病其ノ他ノ疾病ノ予防ニ努ム
 二 左記地域ニ付テハ特ニ防疫ノ徹底ヲ図ル
   イ 戦地トノ交通頻繁ナル地域
   ロ 開港
   ハ 重要ナル工場及事業場地帯
   ニ 物資特ニ食糧ノ大集散地
   ホ 重要都市ノ水源地帯
   ヘ 細民街
 三 治療関係者、医療品及治療設備ノ不足ニ応ズル為必要ナル処置ヲ講ジ必要ニ応ジ特殊ノ医療品及治療設備ハ政府之ヲ管理ス
 四 左記ノ者ニ付保健上必要ナル処置ヲ講ズ
   イ 妊産婦及乳児
   ロ 戦時新ニ労務ニ従事スル婦人、老幼者及不具者並ニ労務量ノ急激ニ増加スル者
第九十七条 科学研究ニ関シテハ左ノ各号ニ依ル
 一 科学研究機関(工場及事業場等ニ附属スルモノヲ含ム以下同ジ)ニシテ戦争遂行上必要ナルモノハ単一機関ニ依リ之ヲ管制ス
  科学的研究ノ全国的連繋ヲ保持シ之ガ促進ヲ図ル為研究分科別ニ代表委員会ヲ設置ス
 二 重要ナル科学研究機関ハ必要ニ応ジ政府之ヲ管理ス
 三 必要ニ応ジ科学研究機関ノ組織変更ヲ行ヒ必要ナル科学研究機関ニ対シ研究項目、研究担当者其ノ他研究ニ関スル事項ニ付指定ヲ行フ
第九十八条 発明、考案及著作ノ管制ニ付特ニ必要ナル処置ヲ講ズ
第九十九条 保護及救済ニ関シテハ左ノ各号ニ依ル
 一 戦死者及戦病死者ノ遺族、戦役従事者及其ノ家族並ニ戦病者及其ノ家族ニ対スル慰問救護ニ関シ必要ナル処置ヲ講ズ
 二 特ニ非傭者其ノ他少額所得者ニ対スル簡易金融、簡易食堂、托児設備等ノ保護施設ヲ講ズ
 三 戦時縮小又ハ休止セラルルベキ企業関係者ニ付予メ其ノ失業救済ノ処置ヲ講ズ

  第四章 総動員ニ必要ナル情報、宣伝及警備
   第一節 総動員ニ必要ナル警備
第百条 総動員ニ必要ナル警備(以下警備ト略称ス)ハ資源ノ潰滅ヲ防止シ治安ヲ維持シ其ノ他国防目的達成ノ妨害トナルベキ諸行為ヲ排除スルヲ目的トス
第百一条 警備ハ関係各庁ノ警察力ヲ主体トシ尚必要ナル関係諸機関及諸団体ヲ以テ之ヲ行ヒ軍ノ行フベキ警備ト密接ナル協調連絡ヲ保持スベキモノトス
第百二条 開戦時ニ於ケル警備ハ特ニ迅速徹底ヲ期スル為特別ノ処置ヲ講ズ
第百三条 警備上一般ニ考慮スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 警備担任官庁相互間ノ密接ナル協調連絡
 二 情報宣伝ニ関スル機関トノ密接ナル連絡
 三 警備通信網ノ整備
 四 事故発生ニ対スル応急処置
 五 警備員ニ関スル処置
第百四条 軍機及総動員上ノ機密保護ノ為概ネ左ノ事項ノ徹底ヲ図ル
 一 間諜ノ取締
 二 通信ノ取締
 三 新聞其ノ他出版物ノ取締
 四 内外人出入国及旅行ノ取締
 五 其ノ他軍機及総動員上ノ機密ニ接触スル者ノ特別取締
第百五条 治安維持其ノ他国防目的達成上有害又ハ危険ナル行動宣伝等ノ防止ノ為必要ニ応ジ左ノ処置ヲ講ジ之ガ徹底ヲ図ル
 一 流言蜚語ノ取締
 二 要視察人ニ対スル処置
 三 罷業、怠業及工場閉鎖ノ禁止
 四 各種階級闘争ノ防止禁圧
 五 国外ニ於ケル陰謀其ノ他ノ諸運動ニ対スル適当ナル処置
 六 銃砲火薬類其ノ他危険物ノ取締
 七 其ノ他国防目的達成上有害又ハ危険ナル言論、結社、示威運動其ノ他ノ行為ノ取締
第百六条 戦時ニ於ケル犯罪ニ対シテハ非常時ノ情勢ニ適スル様特別ナル処置ヲ講ズ
第百七条 内地以外ノ帝国領域ニ於ケル警備ニ付テハ特ニ深甚ナル考慮ヲ払ヒ未然ニ事故発生ノ防止ニ努ム
第百八条 電力施設、工場及事業場、並ニ鉄道軌道及通信施設ノ直接ノ警備ハ主トシテ従業者自ラ之ニ当リ必要ニ応ジ警察官其ノ他ノモノヲ以テ之ヲ援助ス
  警備ニ付特ニ処置スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 火災ノ予防及消防機関ノ整備
 二 軍事上秘密ノ保持
 三 重要設備箇所ノ防護
 四 警備ノ分担ヲ明ニシ協同連絡ヲ緊密ナラシムルコト
 五 従業員不穏行動ノ防止ニ対スル応急措置
第百九条 一般通信取締ニ付テハ特ニ通信組織的科学的検閲ヲ励行シ概ネ左ノ処置ヲ講ズ
 一 秘密通信ニ関スル資料ノ蒐集
 二 秘密通信検閲ノ為専門技術員ノ養成
 三 其ノ他通信ノ検閲及取締ニ関スル施設ノ整備
第百十条 主要警備地ノ警備ハ概ネ左ノ各号ニ依ル
 一 主要警備地ノ範囲ハ概ネ左ノ如シ
   イ 大廟所在地
   ロ 六大都市
   ハ 衛戌地及要塞所在地
   ニ 軍港、要港地及主要ナル港湾
   ホ 主要ナル工、鉱業地域
   ヘ 重要ナル資源集積地
   ト 主要ナル運輸通信系統ニ於ケル重要地域
 二 主要警備地ニ関シ一般ニ警備ヲ要スベキモノ概ネ左ノ如シ
   イ 主要官公署
   ロ 上水道施設
   ハ 発電、送電、変電及配電施設
   ニ 瓦斯供給施設
   ホ 重要ナル工場及事業場
   ヘ 重要ナル運輸通信施設
   ト 主要ナル銀行、取引所、市場及倉庫
   チ 主要ナル教育機関、科学研究機関及歴史的記念物
 三 主要警備地ノ警備ニ付特ニ処置スベキ事項左ノ如シ
   イ 宣伝ノ取締
   ロ 機密ノ保護
   ハ 水道断絶ニ対スル応急措置
   ニ 防火特ニ特別防火区域及避難所ノ設定並ニ同時数ヶ所発火及重要資源防護ニ対スル処置
   ホ 防疫、防毒
 四 港湾ノ警備ニ付テハ特ニ左ノ事項ノ徹底ヲ期ス
   イ 海陸連絡輸送設備ノ警備
   ロ 出入船舶ノ取締
   ハ 内外人出入ノ取締
   ニ 密輸出入ノ取締
   ホ 沈置物ニ対スル警戒
第百十一条 防空ニ伴フ警備ハ軍ノ防空計画ニ則リ関係各庁概ネ左記事項ヲ処置スベキモノトス
 一 防空ニ関スル警戒及通信
 二 燈火、音響、信号等ノ管制
 三 消防、防毒、避難、救護、交通整理及警報ノ伝達
 四 警備ノ為市民ノ組織的訓練

   第二節 総動員ニ必要ナル情報及宣伝
(別ニ立案ス)


  第五章 総動員機関ノ組織
(別ニ立案ス)

  第六章 戦時法令ノ準備
(別ニ立案ス)

  第七章 総復員
(総動員計画ノ進捗ニ伴ヒ別ニ立案ス)

昭和5年前半

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