放送施設決戦態勢整備強化要綱
昭和20年3月9日 閣議決定
一、方針
決戦下国内放送ノ戦時諸施策ノ徹底、輿論ノ指導、士気ノ昂揚、治安ノ維持就中警報、情報ノ伝達ニ依ル民心ノ安定、被害ノ防止等ノ重大使命ニ鑑ミ戦局ノ現段階ニ即応スル如ク送受信両面ニ亘リ之ガ施設ヲ整備強化スルト共ニ対外宣伝機関タル海外放送ニ就テモ其ノ施設ノ急速整備ヲ図ルモノトス、更ニ敵ノ謀略放送ニ関シテハ速カニ対抗施設ヲ拡充シテ之ガ徹底的制圧ヲ期スルモノトス
二、措置
(一) 国内放送施設ノ整備方策
1 国内放送施設ノ隠蔽、対弾防護、分散代位及ビ予備放送機ノ配備、中継線ノ整備等ヲ強化シ敵襲下ニ於ケル機能ノ低下ヲ極力防止スルコト
2 聴取施設ニ関シテハ現有聴取能力ノ維持ヲ目途トシテ受信機、真空管及部品ノ供給ヲ確保スルト共ニ之カ配給ノ適実ヲ期スルコト
3 一般公衆ニ対スル警報、情報等ノ伝達ニ資シ符ニ受信側停電ノ場合ニモ備フル為駅、通信官署、主要街路、広場等適当ナル個所ニ固定式放声装置ヲ設クルト共ニ移動式放声装置ノ整備ヲ図ルコト
4 前二項ノ実施ニ資スルタメ適当ト認ムル地域ニ共同聴取施設実施ノ方途ヲ講ズルト共ニ不要不急ノ受信機、電気蓄音器、拡声機、真空管及部品ノ回収ヲ図ルコト
5 全国民間ラジオ技術者ノ組織化ヲ実施シ技術ノ向上、部品ノ供給ノ斡旋ヲ図リ受信機器ノ修理能力ヲ強化スルコト
(二) 海外放送施設ノ整備方策
海外放送施設及東亜中継放送施設ノ機能ノ確保及防空強化ヲ図ルト共ニ現在計画中ノ大電力放送施設ノ実現ヲ促進スルコト
(三) 敵側謀略放送ノ対抗措置
1 現ニ実施中ノ妨害電波ノ発射ヲ強化スルト共ニ今後敵ノ行フコトアルベキ周波数変更、多重放送、航空機等ニ依ル放送其他ニ対シ急速ニ対抗措置ノ拡充ヲ図ルコト
2 必要ト認ムル地域ノ公共用及共同用有線放送実施ヲ促進スルコト
備考
警報及情報放送ヲ成ルベク多衆ニ周知セシムル為
(一) 拡声機ヲ利用シ或ハ受信機ヲ高声ニ調節セシメ
(二) 公衆ノ集合スル場所、街頭、列車、隣組等ニ於テ其ノ放送内容ヲ口頭伝達スルノ方途ヲ実行セシムルモノトス