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国鉄があった時代
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国立国会図書館から引用

決戦非常措置要綱

    昭和20年1月25日 閣議決定

       第一 方針
    第一条 帝国今後ノ国内施策ハ速カニ物心一切ヲ結集シテ国家総動員ノ実効ヲ挙ケ以テ必勝ノ為飽ク迄戦ヒ抜クノ確固不抜ノ基礎態勢ヲ確立スルニ在リ
     之力為具体的施策ヲ更ニ強化徹底シテ近代戦完遂ニ必要ナル国力並国力ノ維持増強ニ遺憾ナキヲ期ス
     而シテ今後採ルヘキ各般ノ非常施策ハ即刻之ヲ開始シ昭和十九年度末ヲ目途トシテ之カ完成ヲ図ルモノトス
      第二 国力並戦力造成要綱
    第二条 当面ノ情勢ニ鑑ミ国力並戦力造成上ノ基本方針左ノ如シ
     一 作戦上ノ中核戦力トシテ依然航空機並限定セル特攻屈敵戦力ヲ優先整備ス
     二 国力ノ造出ハ日、満、支資源ヲ基盤トシ自給不能ナル南方資源ヲ充足シ其ノ総合的運営ノ下ニ近代戦争遂行能力ノ確立ヲ主眼トシ併セテ各地域毎ノ攻戦略態勢ノ強化ヲ図ル之カ為
       液体燃料ノ急速増産
       海陸輸送力ノ維持増強
       生産防空態勢ノ徹底的強化
      食糧ノ増産特ニ国内ニ於ケル自給ノ飛躍的増強ヲ最重点的ニ実現ス
      而シテ現状ニ鑑ミ左記事項ニ関シテハ特段ノ措置ヲ講ス
        航揮ノ急速還送
        自給不能ナル南方資源ノ急速還送
    第三条 昭和二十年度戦力並国力ノ造出目標並之カ完遂ノ為準拠スヘキ事項左ノ如シ
     一 陸海軍ノ軍需整備
     1 戦力ノ増強ハ航空戦力ノ維持増強ト特攻屈敵戦力ノ急速ナル大量造成トヲ図ルヲ第一義トシ次テ対潜、対空兵器等ノ可及的多量整備ヲ期スルモノトス
     2 航空機ノ生産ハ益々重点機種ノ整備並機種ノ整理統合ヲ重視シツツ上半期努力目標二〇、〇〇〇機完遂目標ヲ一六、〇〇〇機トシ下半期ニ就テハ差当リ其ノ努力目標ヲ二四、〇〇〇機トシテ各般ノ施策ヲ推進シ其ノ完遂目標ニ関シテハ本年三月頃当時ノ情勢ヲ勘案シ決定ス
       重要物資供給力ノ低下ニ対処シ本目標ノ必達ヲ期スル為歩留リノ向上、鋼製並木製機ノ量産促進、「アルミ」供給力ノ増強施策ヲ強行スルト共ニ改修ノ緊縮化、審査規格ノ戦時化、補用品ノ徹底的合理化等凡有施策ヲ強力ニ推進スルモノトス又特ニ陸海軍ハ其ノ協力支援ニ格段ノ努力ヲ傾注スルモノトス
     3 戦力ノ運用並戦備ノ建設ハ陸海軍真ニ一体トナリ之カ総合的運営ト最高能力ノ発揮トニ遺憾ナキヲ期スルモノトス
     二 物的国力(液体燃料ヲ除ク)確保ノ規模
      1 近代戦争遂行能力ノ保続運営ニ遺憾ナキヲ期スル為昭和二十年産普通綱鋼材二七〇万屯、之ニ即応スル関連重要物資ノ供給力ヲ絶対最低限確保目標トシ万策ヲ尽シテ基本国力普鋼鋼材三〇〇万屯ノ達成ニ努ム
       輸送力窺迫ノ現状ニ鑑ミ特ニ鉄鋼生産ニ在リテハ
        国内鉄源供出ノ徹底化
        内地鉄鋼石ノ最大活用
        海送強粘結炭配合比ノ合理的節減
        余剰電力ノ活用ニ依ル電撃製錬ノ促進
        満支ニ於ケル製鉄ノ増強
        農山村ニ於ケル木炭銑ノ生産奨励
     等各般ノ非常措置ヲ断行スルモノトス
     2 国内石炭ノ昭和二十年度ノ生産努力目標ヲ五、五〇〇万屯確保目標ヲ五、二〇〇万屯トシ之カ達成ノ為資材及労務ノ確保等ニ関シ特段ノ措置ヲ講スルモノトス
      3 「アルミニウム」ノ昭和二十年度生産確保目標ヲ十五万屯トシ之カ生産設備拡充ヲ強力急速ニ促進スルト共ニ生産用原材料確保ニ関シ特段ノ措置ヲ講ス
      国内原料へノ転換期ニ於ケル過渡的対策トシテ昭和十九年度第四、四半期並昭和二十年度初頭ニ「ボーキサイト」ノ可及的繰上還送ヲ行フ   4 生「ゴム」、錫等真ニ南方依存脱却不可能ナル南方特産物資ハ陸海軍ニ於テ之カ還送確保ノ方途ヲ講スルモノトス
     三 液体燃料
      1 液体燃料ハ昭和二十年度二〇〇万竏(製品)ヲ絶対最低限確保目標トシ万策ヲ尽シテ努力目標ニ五〇万竏ノ達成ニ努ム而シテ各般ノ施策ハ昭和二十年度第一、四半期ニ於ケル危機ヲ克服スルヲ主眼トシ飽ク迄昭和十九年十月二十八日最高戦争指導会議決定ニ基ク日満支液体燃料生産努力目標ノ必成ニ邁進スルト共ニ南方燃料ノ還送ハ上半期約五〇万竏ノ確保ヲ目標トシ下半期ニ就テハ日満支自給対策ノ補強的性格ニ於テ行フモノトシ其ノ還送量ハ当時ノ情勢ニ依リ決定ス
      2 日満支ノ増産ハ昭和二十年度初頭以降台湾砂糖ノ還送ニ期待シ得サルヲ本則トシテ之カ対策ヲ講スルモノトス
     之カ為所要資材ノ可及的確保ニ努ムルト共ニ日満支油田ノ徹底的開発、甘藷、馬鈴薯等ノ大増産ヲ強行シ且石炭乾溜設備余剰能力ノ活用支那油脂ノ取得ヲ図ルモノトス
     但シ上半期ニ於ケル危機克服ノ為右施策ト併行シ極力台湾砂糖ノ還送ニ努ム
      3 現行施策ニ膚接シテ益々軍官民共ニ高度ノ消費規正ト代燃化ノ促進トヲ図リ特ニ陸海軍ハ酒精ノ航揮代換促進ニ関シ画期的ノ措置ヲ講スルモノトス
     四 船舶建造
      1 甲造船
      (イ) 昭和二十年度建造目標ヲ約一五九万総屯トシ貨物船ト油槽船トノ建造比率ハ前記物的国力ノ最低限確保ニ必要ナル貨物船ノ建造ヲ優先充足シテ配分スルト共ニ上半期ニ於ケル繰上建造ニ努力スヘキコト等ヲ主眼トシ
        貨物船  約一〇七万総屯
        油槽船  約 三八万総屯
        雑船   約 一四万総屯
      ヲ建造スルモノトス
      尚造船量ノ減少ハ一応油槽船ニテ調整スルヲ本則トス
      (ロ) 既往ノ多量生産主義ヲ脱却シテ質的ヘノ転換特ニ其ノ優速化ト竣工船ノ質的確保トヲ図ルト共ニ対潜、対空強化並荷役能力向上ノ見地ヨリ可及的ニ小型且短切揚搭適格船ノ多量生産ニ移行シ且燃料需給ノ逼迫ニ対処スル為重油焚貨物船ヲ極力石炭焚ニ切替フルモノトス
      (ハ) 新造船油槽船ハ全部航空揮発油搭載船トシ且状況ノ推移ニ対応シ得ル如ク一部油槽船ハ貨物船ニ改造シ得ル如ク設計ス
      (ニ) 益々損傷並故障船ノ修理促進ヲ重視ス
     2 乙造船
     二十年度建造目標ヲ四十五万総屯以上(前年繰延ヲ含ム)トシ之カ急速ナル整備完成ヲ図ルト共ニ特ニ曳船被曳船ヲ重視ス尚現続行船及既発註分ヲ可及的ニ代燃機関ニ切換フルト共ニ速力ニ現存船ノ多量代燃化ヲ図ル
      又昭和二十年度国力ノ基底ハ乙造船二依存スル所大ナルニ鑑ミ其ノ計画完遂特ニ資材ノ現物化ニ関シ格段ノ努力ヲ傾注スルモノトス
     3 情勢ノ推移ニ依リテハ前記甲、乙造船量ヲ総合的ニ調整スルコトアルヲ予期ス
     五 車輌建造
      1 鉄道車輌
       昭和二十年度建造目標ヲ機関車二〇七輌、貨車七、五〇〇輌トシ特ニ之カ早期落成ヲ図ル
      2 小運送車輌
       昭和二十年度建造目標ヲ貨物自動車五、五〇〇輌、軽車輌一四九、〇〇〇輌トシ特ニ荷車ノ増備ヲ行フ
     現有貨物自動車ノ修理ニ特設ノ処置ヲ講シ代燃機ノ急速増産ヲ図ル
     六 生産防空態勢ノ強化
      1 敵ノ本格的大規模空襲ニ対シ生産ノ保続運営ニ遺憾無カラシムルヲ主眼トシ直接重要企業ニ於ケル防空、企業形態、勤労体制等ニ関シ有機的且抜本的措置ヲ講シ且国力造出ノ基盤トシテ日、満、支陸海交通路ノ保全運営ニ関シ特段ノ措置ヲ講ス
      2 生産防空能体勢ノ急速活発ナル促進ヲ期スル為先ツ分散疎開ヲ急速概成スルト共ニ特ニ重要ナルモノハ地下施設へノ移行スルモノトス
      之カ為差当リ航空兵器、甲造船関係其ノ他特定緊要工場ノ分散疎開ヲ第一義トシ之等ハ遅クモ本年度末迄ニ概成スルモノトス、尚之二関連シ極力地域別生産態勢ノ確立ヲ図ルモノトス
      3 空襲等非常事態特ニ交通機関杜絶等ノ場合ニ於テ必要ナル通信(放送ヲ含ム)連絡ノ確保ヲ図ル為通信非常体制ヲ強化ス
     七 食糧
      内地ニ於ケル食糧自給ノ画期的増強ヲ期スルト共ニ食糧ノ現行配給基準ヲ堅持スル為左ノ方途ヲ講ス
      1 内地ニ於ケル食糧ノ増産及管理ノ徹底的強化ヲ図ル、之力為
       (イ) 米麦ノ外此ノ際補填食糧並アルコール原料トシテ藷類ノ画期的増産ヲ図ル
       (ロ) 麦類及藷類ノ集荷確保並処理加工ニ付特段ノ措置ヲ講ス
       (ハ) 食糧ノ供出割当量ノ強化及其ノ絶対確保ヲ期スルト共ニ現行配給方法ニ付改正ヲ加フ
       (ニ) 国内補填食糧給源ノ徹底的開発培養ヲ図リ特ニ蛋白補給源トシテ水産食糧ノ確保ニ努ム
       (ホ) 食糧増産確保ニ必要ナル肥料及農機具等ノ最低必要量ヲ充足ノ為所要資材ノ確保ヲ図ル
      2 昭和二十年米穀年度食糧需給上外地及満洲穀類ニ依存セサルヲ得サル所要量ニ付テハ之カ輸移入ニ依リ補填ス
      3 強靱確固タル食糧自給体制確立ノ見地ヨリ都市遊閑人口ノ疎開ヲ強化ス
     八 労務
      1 人的国力ノ総合発揮ノ為軍動員ト勤労動員トノ適正ナル総合調整計画ノ樹立ト之カ運営強化ヲ図ル
      2 勤労総動員ヲ強化スルト共ニ将来ニ於ケル軍動員実施ニ弾力ヲ保有スル為労務ノ配置転換、機動配置ノ徹底、要員指定制ノ実施等国民動員ノ適正刷新ヲ図ルト共ニ学徒勤労動員ノ強化並女子ノ徴用ヲ断行シ之カ積極的代替活用ヲ促進ス
    第四条 輸送力ハ戦力並国力造出ノ根基タルニ鑑ミ昭和二十年度海上輸送力約三、二〇〇万屯陸上輸送力約八五、〇〇〇万屯ヲ確保目標トシテ之カ増強(海上輸送力ニ在リテハ努力目標ヲ約三、五〇〇万屯トス)ヲ図ルト共ニ海陸輸送ノ総合運営ヲ強化スル為各般ノ施策時ニ左ノ措置ヲ講ス
     1 海上輸送力ノ増強
     (イ) 船舶損耗防止特ニ海上護衛ノ強化
       之カ為特ニ陸海一体ノ飛躍的ナル措置ヲ講ス
     (ロ) 海運行政ノ抜本的刷新ト港湾行政ノ一元化
     (ハ) 船舶修理ノ画期的促進強化
     (ニ) 稼行率ノ向上
     (ホ) 南方航路ニ於ケル各種船舶ノ総合輸送力ノ向上
     (ヘ) 船員ノ整備強化
     (ト) 木船建造並運航体制ノ刷新強化ト内地帆船ノ計画的利用
     2 陸上輸送力ノ増強
     (イ) 旅客列車ノ極限的圧縮等ニ依ル貨物輸送ノ増強並職場附近転居ニ依ル通勤輸送ノ極限
     (ロ) 貨車運用効率ノ向上
     (ハ) 隘路線区ニ於ケル輸送施設ノ増強
     (ニ) 要員ノ確保並之カ勤労力ノ強化
     (ホ) 陸上小運送ノ画期的強化
     3 海陸輸送総合運営ノ強化
     (イ) 大陸輸送ノ一元的運用
     (ロ) 中継輸送カノ強化
    第五条 今後ノ国家諸計画ノ策定ハ本要綱ノ強力ナル実行ニ遺憾無カラシムルモノトス
        第三 国内態勢強化刷新要綱
    第六条 精神動員ノ強化ヲ重視シツツ国内態勢ヲ強化刷新シテ挙国総力戦態勢ノ確立ヲ期ス
    第七条 国政運営並国内一般態勢ニ対シ成ルヘク速カニ左ノ施策ヲ断行ス
       一 国力作戦トノ緊密一体化ヲ具現セシムル如ク必要ナル措置ヲ実行ス
       二 日、満、支ノ生産及輸送ノ計画並之カ運営ヲ総合的ニ行ヒ得ル如ク所要ノ措置ヲ講ス
       三 鞏固ナル国内防衛態勢ヲ確立ス
       四 生産、交通、食糧、労務等ニ関シ中央ノ計画ニ基キ国内各地域ノ戦力ヲ組織化スルト共ニ防衛ト緊密一体化セシムル為地方行政機関ヲ強化刷新シ陸海軍関係機関トノ緊密ナル吻合関係ヲ樹立ス
       五 軍需生産行政ノ一元化及労務並資金ニ関スル行政ノ一元化ヲ図ル
       六 戦局ノ苛烈化ニ対処シ重要軍需企業、交通運輸機関並金融機関ノ整備ヲ断行シ其ノ保続運営ニ遺憾無キヲ期ス
       七 各部門ノ統制機構及現行各般ノ統制法規ニ就キ生産性ノ昂揚ニ徹スル如ク所要ノ改廃整備ヲ断行ス
       八 闇ノ粛正、配給制度ノ合理化等ニ依リ国民生活ノ明朗化ヲ図ル
       九 行政特ニ生産輸送部面ノ監察及生産技術ノ指導ヲ励行ス

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