未完成工事ノ整理戦力化要綱
昭和19年2月12日 閣議決定
第一、方 針
工場事業場又ハ其ノ設備ノ新設増設等ノ工事ニシテ其ノ進捗甚ダシク遅延シ居ルモノ少カラザル現状ニ鑑ミ未完成工事ニ付現下ノ国政全般ノ見地ヨリ綜合的ニ判断シ当面ノ戦力増強上緊要ナルモノハ極力之ガ促進ヲ図ルト共ニ不急ト認メラルルモノハ之ヲ整理シ其ノ建物、設備、資材等ヲ緊要方面ニ転活用(屑化ヲ含ム以下同ジ)シ以テ戦力ノ急速ナル増強ニ資セントス
第二、要 領
(1) 未完成工事ノ整理戦力化ニ当リテハ軍官民ヲ通ジ綜合的ニ調整ヲ行フモノトシ之ガ為速カニ業種別ノ実施方針ヲ策定スルコト
(2) 前号ノ実施方針ノ策定ハ特殊ノ必要アルモノヲ除キ昭和十九年度ノ供給力ニ確実ニ寄与シ得ルコトヲ目途トシ概ネ次ノ如キ着眼ニ依リ之ヲ行フコト
(イ)未完成工事ニ付完成期、需給度、立地条件等各般ノ見地ヨリ綜合的ニ判断シ優先順位ノモノヨリ急速完成ヲ期スルコト
(ロ)後順位ノ工事ニ付テハ之ヲ廃止スルト共ニ之ガ建物設備資材等ハ優先順位ノモノヘ急速転活用スルコト
(3) 政府ノ命令又ハ指導斡旋ニ係ル工事ノ廃止ニ付テハ其ノ廃止ニ因ル損失ヲ国庫ニ於テ補償スルコト
第三、措 置
(1) 可及的広範囲ニ未完成工事ノ進捗状況及進捗阻害ノ原因ヲ調査スルモノトシ特ニ必要ナルモノニ付テハ現地調査ヲ行フコト
(2) 前号ノ調査ニ基キ未完成工事ヲ甲、乙及丙ノ三種類ニ分類スルコト
(イ)甲ニ属スル工事ハ可及的早期完成ヲ期スルコト
(ロ)乙ニ属スル工業ハ業種毎ニ重要度ニ依リ順位ヲ附シ置キ資材ノ供給見込ニ従ヒ且業種間ノ均衡ヲ失セシメザル考慮ノ下ニ逐次甲又ハ丙ニ編入スルコト
(ハ)丙ニ属スル工事ハ之ヲ廃止スルト共ニ右工事ニ係ル建物、設備、資材等ハ一旦産業設備営団等ヲシテ之ヲ一括買取ラシムルコト
(3) 前号ノ未完成工事ノ分類ニ応ジ各取引金融機関ニ付夫々早期完成ニ要スル資金ノ供給等所要ノ資金的措置ヲ講ズルコト
(4) 丙ニ属スル工事ニ係ル建物、設備、資材等ノ評価、解体、運搬等ニ関シテハ簡易迅速ヲ旨トシ特段ノ措置ヲ講ズルコト
(5) 政府ノ命令又ハ指導斡旋ニ係ル工事ノ廃止ニ因リ当該事業者又ハ工事請負人ノ蒙ルベキ損失ノ補償ハ当該建物、設備、資材等ノ産業設備営団等ヲシテ相当価格ヲ以テ買取ラシムルコトニ依リ之ヲ為スコト之ガ為産業設備営団等ノ蒙ルコトアルベキ損失ハ国ニ於テ之ヲ補償スルコト
(6) 本要綱実施ニ伴フ不要資金ノ処理竝ニ資金浮動化防止ニ付必要ナル措置ヲ講ズルコト
(7) 工場事業場又ハ其ノ設備等ノ新設増設等資材設備等ヲ必要トスル工事ニ付テノ臨時資金調整法、各種事業法、軍需会社法等ノ許可認可等ハ特殊ノ必要アルモノヲ除キ未完成工事整理ノ見透ノツク迄之ヲ為サザルコト
(8) 本要綱実施ノ為必要ナル場合ハ法令ノ整備ヲ為スコト
(9) 関係官庁ハ左記日程ニ依リ処理スルコト
(イ)業種別ノ実施方針ノ策定
本要綱決定ノ日ヨリ遅クモ三週間以内ニ終了ス
(ロ)甲、乙及丙ノ区分ノ決定
本要綱決定ノ日ヨリ遅クモ一月以内ニ終了ス
(ハ)丙ニ属スル工事ニ係ル建物、設備、資材等ノ転活用ノ決定
昭和十九年三月末日迄ニ終了スルヲ目途トス
備 考
(1) 外地ニ付テモ本要綱ニ準ジ措置スルコト
(2) 工場事業場ニ属セザル軍官民ノ土木建築工事ニシテ未完成ノモノニ付テモ本要綱ノ趣旨ニ準ジ措置スルコト
(3) 将来ニ於ケル未完成工事ノ発生ヲ防止スル為軍官民ヲ通ジ工場事業場又ハ其ノ設備等ノ新設増設等ヲ綜合的ニ計画実施スルノ体制ヲ確立スルコト
(4) 甲、乙及丙ノ区分ヲ決定シタルトキ及丙ニ属スル工事ニ関シ転活用先決定シタルトキハ速ニ之ヲ閣議ニ報告スルコト(尚後段ニ付テハ転用協議会トノ連繋ヲ密ナラシムルコト)
(5) 要綱実施ニ関スル連絡調整事務ハ軍需省之ニ当ルコト