行政簡素化実施要領
昭和17年6月16日 閣議決定
時局ニ適応シ行政各庁ノ事務ヲ能フ限リ簡素且強力ナラシムルト共ニ人員ヲ整理シ其ノ余剰ハ之ヲ大東亜全般ニ亘ツテ活躍スル人士ノ充実ニ資スルノ要アルヲ以テ左記各項ヲ実施スルモノトス
記
一、行政各庁ノ定員増加ハ予算ニ計上セラレタルモノト雖モ勅任官、奏任官、判任官、雇員傭人ヲ通ジ真ニ已ムヲ得ザルモノニシテ特ニ閣議ノ承認ヲ得タルモノノ外一切之ヲ行ハザルコト
二、行政各庁ハ左ノ要領ニ依リ本年六月一日現在定員(雇員及傭人ニ在リテハ仝日現在ノ予算定員)ヨリ人員ヲ減少シ之ニ基キ事務ノ刷新、機構ノ簡素化ヲ図ルコト
(イ)定員減少ノ率ハ勅任官、奏任官、判任官及雇傭員(嘱託ヲ含ム)毎ニ中央官庁ハ三割、地方官庁ハ二割、作業庁ハ一割ヲ標準トスルコト但シ勅任官ニ於テ三割ヲ減ジ難キ場合ハ奏任官ノ減員ヲ以テ之ニ替フルモ已ムヲ得ザルコト尚学校、養成所、研究所、試験場其ノ他之ニ準ズベキモノ等ハ作業庁ニ準ズ
又別途必要ニ応ジ昇格ノ方途ヲ講ズルコト
(ロ)減員ハ朝鮮総督府、台湾総督府、樺太庁、関東局及南洋庁ニ於テモ前記ノ基準ニ準ジ之ヲ実施スルコト
其ノ他ノ大東亜諸地域ニ在勤スル官吏ニ就テハ別途考慮スルコト
(ハ)減員ハ戦時重点主義ニ基ク事務ノ刷新及機構ノ簡素化ニ依ルモノトシ、一率天引ノ方式ハ極力之ヲ排除スルコト
(ニ)右ノ為当分ノ内行政各庁ノ欠員ハ真ニ必要已ムヲ得ザルモノノ外勅任官、奏任官、判任官、雇傭人ヲ通ジ之ヲ補充セザルコト
三、司法裁判所、行政裁判所、会計検査院、貴衆両院事務局等ニ付テモ右ニ準ジテ減員ヲ行フコト
四、高等官、判任官、雇傭人ヲ通ジ其ノ待遇ノ改善ニ関シ資格ノ向上及給与ノ改善等ニ付至急適切ノ方途ヲ講ズルコト
五、行政簡素化ノ実行ニ付キテハ概ネ左ノ方法ニ依ルコト
(イ)各省ハ以上ノ方針ニ基キ左記ノ区分ニ依リ行政簡素化ノ計画及其ノ実施ニ関スル具体案ヲ立案ノ上、本年七月十五日迄ニ之ヲ内閣ニ提出スルコト
(一)警視庁官制、北海道庁官制及地方官官制ニ依ルモノニ付テハ内務省ニ於テ関係各省ト協議ノ上之ヲ一括取扱フコト
(二)地方待遇職員令及之ヲ準用スル勅令ニ依ルモノニ付テハ内務省ニ於テ主務省及関係各省ト協議ノ上一括取扱フコト
(三)各省所管ノ特別官庁其ノ他ニ付テハ夫々各省ニ於テ之ヲ取扱フコト
(ロ)官制案等ハ遅クモ八月末日迄ニ之ヲ閣議決定シ逐次実施スルコト
(ハ)行政簡素化ノ実施ニ依テ得タル余剰員ニ付テハ大東亜諸地域ニ供出スべキ要員ノ所要トモ見合セテ明年三月末日迄ヲ期限トスル臨時定員制ヲ設クル等適切ナル措置ヲ講ズルコト