日本国有鉄道 ＪＮＲ ＪＲ 鉄道省 国鉄 国鉄型車両 第３セクター鉄道 分割民営化 鉄道史 昭和 労働運動史

　　一　方針
昭和十七年度物資動員計画ハ大東案戦争遂行ノ為メ直接軍需、船舶建造用資材ノ優先確保ヲ期セル為之ニ即応セル本年度生産拡充計画ニ於テハ専ラ現有設備ノ最高度利用ニ依リ物資動員計画ニ基ク物資供給力ノ生産確保ヲ期シ後年度ニ於ケル増産ニ対処スベキ設置拡充ニ付テハ概ネ戦争遂行力ノ確保増強ニ必須ナルモノニ局限セルコトトナセリ　而シテ之ガ為メ生ズベキ長期整備計画ニ対応スベキ生産力拡充ノ一時的停滞ノ打開及回復ニ関シテハ速カニ別途方策ヲ樹立シ長期戦ニ即応スル生産力拡充計画ノ遂行ニ支障ナカラシムルコトヲ期セントス
本年度ニ於ケル生産目標及資材配当額ハ別表ノ如ク之ヲ定ム
　　二　一般要領
一　海上輸送力不足ノ現状ニ鑑ミ船舶ノ急速建造ニ全力ヲ傾倒スルト共ニ鉄鉱、特殊鋼原鉱石、原料炭、銅、鉛其ノ他重要不足資源ニシテ海上輸送ヲ要スルモノニ付テハ可及的国内資源ノ応急的開発ニ依リ之ヲ充足ス
二　設備ノ拡充ハ当面ノ軍需充足上不可欠ノ重要国防資源タル鉄鉱、ニッケル、アルミニウム、航空燃料、工作機械、電力等ニ付可及的之ヲ行ヒ生産ノ増強ヲ期ス
三　資材ノ需給並ニ南方資源ノ取得ニ因ル新事態ノ展開ニ対応シ目下応急建設中ニ関スル礬土頁岩ニ依ルアルミナ製造設備、低温乾溜留設備、錫及金等ニ付テハ一時之ガ設備ノ拡充ヲ中止若ハ繰延ベヲ行フ
四　工場、石炭、非鉄金属山等ニ於ケル補修又ハ維持用資材並ニ製品原材料タル運転用資材ニ付テハ可及的其ノ確保ヲ期スルト共ニ極力現有資材ノ有効利用等ヲ図リ之ガ充足ノ完璧ヲ期セントス
　　三　産業別要領
一　鉄鋼
　　鉄鉱石、特殊鋼原鉱石等ニ付極力国内資源ノ開発ヲ促進ス
　　設備ノ拡充ハ既存設備ノ能率向上ヲ主眼トシ本年度物動確保ニ必要ナルモノハ之ヲ極力継続スルモ今後ノ生産増ニ備フル重要設備等ニ付テハ緊要已ムヲ得ザルモノノミニ止ム
二　石炭
　　輸送力、資材、労力等不足ノ現状ニ鑑ミ原料炭、発生炉用炭並ニ近距離地域炭ノ増産ニ主眼ヲ置クト共ニ極力炭質ヲ向上スル為選炭ノ励行ニ努ムルモノトス　尚新坑ノ開発上資材ノ増配ニ関シ考慮ノ要アリ
三　電力
　　電力ノ需要増大ニ伴ヒ之ガ供給均衡ヲ失スルノ趨勢ニアルニ鑑ミ極力資材ノ増配ニ努メタルモ尚十八、十九両年度ニ於ケル発電力ノ増加ハ十七年度ノ約七割程度ニ止マル見込ナリ
四　軽金属
　　本年度物動確保上必要ナル設備ノ拡充ハ極力之ヲ行フモ今後ノ飛躍的需要増ニ対応スル生産拡充ニ付テハ別途之ガ計画樹立ヲ要ス
五　非鉄金属
　　銅、鉛其ノ他不足資源ノ増産ニ主眼ヲ置キ金及錫ニ付テハ可及的所要資材ノ節減ヲナシ必要ニ応ジ之ガ設備ノ一部転用ヲモ行フモノトス
六　石油
　イ　航空揮発油及高級潤滑油ノ増産ヲ主眼トシ石油精製及人造石油工場ニ付テハ既着手工場ノ整備ヲ行フニ止メ其ノ他工場ノ整備拡充ハ一先ヅ之ヲ繰延ベ又ハ中止ス
　ロ　国内原油ハ資材、技術者等不足ノ為一時的減産ヲ免レズ
七　硫酸アンモニア
　　設備ノ拡充ハ既着手ノモノニ付テハ一工場ヲ完成シ他ハ之ガ完成期ヲ繰延ブ
八　工作機械及重要機械
　　軍需ノ増大並ニ新機種ノ国産化計画ニ対応シ之ガ生産確保ヲ期セントス
九　鉄道車輌及自動車
　　車輌製造用資材ニ付テモ所要ノ削減ヲ行ヒ尚　設備ノ拡充ハ修理工場ノ一部ヲ除キ之ヲ中止ス
十　ソーダ、パルプ、セメント及工業塩
　　ソーダ、パルプ及セメントニ付テハ可及的生産ノ維持ニ努メ設備ノ拡充ハ之ヲ行ハズ
　　工業塩ニ付テハ主トシテ既設塩田ノ熟田化ヲ図ルコトトシ既着手塩田ノ拡充ハ一部之ヲ継続スルニ止ム
　　四　措置
本計画生産目標達成ノ為ニハ特ニ原材料ノ輸送、労力、動力等ノ確保上多大ノ困難ヲ予想セラルル外本年度ニ於ケル配当資材圧縮ノ影響モ亦鮮少ナラザルモノアルヲ以テ担当各庁ハ緊密ナル連絡強調ノ下ニ万全ノ対策ヲ講ズルノ要アリ　之ガ為特ニ措置ズベキ事項左ノ如シ
一　生産、輸送、労務、原材料其ノ他生産確保ニ必要ナル事項ニ付テハ常時迅速ナル情報ヲ徴スル等絶エズ其ノ実績ヲ検討シテ速カニ応急ノ対策ヲ講ズルコト
二　配般計画ノ確保及陸上輸送ノ円滑化ヲ図リ特ニ液体燃料ノ供給ヲ確保スルコト
三　労力ノ確保ヲ期スル為国民動員ノ徹底特ニ労務管理ノ改善及能率ノ増進ニ努ムルト共ニ必要ニ応ジ徴用制度ヲ活用スルコト　尚重筋労働者ニ対シテハ特ニ食糧ノ確保ヲ期スルコト
四　所要電力ニ付テハ豊水時ニ於ケル余剰電力ノ利用及渇水時ニ於ケル重点的供給ノ徹底ヲ期スルコト
五　資材殊ニ副資材ノ不足ニ対処シ之ガ節約及代用化ヲ徹底スルト共ニ在庫資材ノ合理的活用ヲ図ルコト
　　尚石炭山ノ坑枠用ニ付テハ極力鉄道用古軌条ヲ以テ之ニ充当ス
六　屑鉄其ノ他ノ資源回収ヲ徹底シ特ニ南方ヨリノ取得及未働遊休設備ノ整理回収ニ努ムルコト
七　死蔵鋼材ノ強権的収用ニ依リ生産拡充用資材ノ増配ヲ行フコト
八　生産拡充部門ニ於テ設備ノ更改又ハ代用化ニ依リ特ニ供出スル故銅ニ付テハリンク制ヲ活用シ電気銅ノ特配ヲ行フコト

　　了解事項
一　基礎産業ト其ノ他産業相互間ニ於ケル生産力ニ付キ現在及将来ニ亘ル均衡並ニ之ガ維持拡充ニ要スル労務、資金、輸送力等ニ関シ総合的検討ヲ遂ゲ速ニ長期戦ニ即応スベキ第二次生産力拡充計画ヲ樹立スルモノトス
二　死蔵鋼材ノ収用其ノ他ニ依ル資材ノ増配ハ別途之ヲ定ム
三　別表生産目標及資材配当額ハ各分科会ニ於テ工場事業場別実施計画設定ノ結果若干修正スルコトアルベシ

（別表省略）