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国鉄があった時代
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国立国会図書館から引用

総動員警備計画暫定綱領

昭和11年12月26日 閣議決定

一 本綱領ハ総動員警備ノ実施ノ為必要ナル事項ニ関シ総動員基本計画綱領第四章第一節ヲ拡充敷衍シ暫定的ニ関係各庁ノ統轄ニ資スルモノトス但シ必要ト認ムル事項ニ付テハ別ニ帰還計画綱領ヲ設定ス
二 本綱領及期間計画綱領ニ基キ各庁ハ各庁警備計画ヲ設定シ開戦ニ際シ適時之ヲ実施ニ移スベキモノトス
三 本綱領ハ空襲ニ対シ充分ニ考慮ヲ払ヒ設定シアルモ防空関係法令ヲ以テ定メラルベキ事項ハ差当リ之ヲ掲記セズ
 前項ノ事項ニ付テハ陸海軍ノ防空計画ニ則ル外防空関係法令ノ施行ト共ニ其ノ定ムル所ニ従フモノトシ其ノ施行前ニ在リテハ現ニ陸海軍ニ於テ指導シアル所ニ概ネ順応シ各庁事前ニ協議ヲ遂ゲ警備ノ完キヲ期スベキモノトス
四 本綱領中総動員庁ニ関スル記述ハ同庁特設前ニ於テハ資源局ニ之ヲ適用スルモノトス
五 本綱領ニ定ムル事項ニシテ戦時急速ニ施設シ難キモノハ予メ訓練ヲ施スヲ利トスルモノ等ニ付テハ平時ヨリ所要ノ準備ヲ整フルモノトス
六 本綱領及期間計画綱領ニ定ムル事項ノ実施ニ関スル命令、通報及報告ニハ努メテ暗号、隠語又ハ略語等ヲ用フルモノトス

目次(省略)
  第一章 総則
第一条 国ノ全力ヲ挙ゲテ遂行スル戦争ニ際シ全国ニ総動員警備ヲ実施ス但シ爾他ノ戦時又ハ事変ニ際シテモ必要ニ応ジ適宜其ノ大部分又ハ一部ヲ全国ニ若ハ地域ヲ限リ実施スルコトアルベシ
  総動員警備ハ資源ノ潰滅ヲ防止シ治安ヲ維持シ其ノ他国防目的達成ノ妨害トナルベキ諸行為ヲ排除スルヲ目的トス
第二条 総動員警備ハ宣戦布告ノ日ヨリ戦争全期間ニ亘リ之ヲ実施ス但シ必要アルトキハ宣戦布告ニ先チ前条第一項但書ヲ準用ス
  総動員警備実施ノ重点ハ当初之ヲ開戦ノ劈頭及空襲時ニ置クモ戦争長期ニ亘リ内外ノ情勢好転見ザルニ及ブヤ特ニ警戒ヲ常時至厳ナラシム
第三条 総動員警備ハ関係各庁ノ警察力ヲ主体トシ之ニ関係諸機関及諸団体ヲ糾合シ行政上ノ所管ニ従ヒ担任ヲ分チ之ヲ実施ス
第四条 総動員警備ハ陸海軍ノ警備ト緊密ニ連絡協調シテ実施ス
  陸海軍ノ警備ハ軍事行動及軍事施設ヲ掩護スルヲ主目的トシテ行ハルルモ其ノ範囲及程度ハ情勢ニ応ジ陸海軍ノ必要ニ依リ変化ス
第五条 情勢ニ依リ全国ニ若クハ地域ヲ限リ特殊ノ戦時法令ヲ施行シ総動員警備ノ確実徹底ヲ期ス
  第二章 一般要領
   第一節 各庁連絡協調要領
    第一款 内地
第六条 総動員警備ノ実施ニ関シ左記ニ依リ総動員警備協議会ヲ設ケ関係各庁ノ連絡協調ニ資ス
 一 中央
  総動員庁ニ中央総動員警備協議会ヲ設ク
  中央総動員警備協議会ハ総動員ノ実施ニ関シ各庁関連事項ヲ審議ス
  中央総動員警備協議会ハ総動員庁、情報局及び各省ノ関係職員ヲ以テ之ヲ組織ス
 二 地方
  道庁、府県庁及警視庁ニ地方総動員警備協議会ヲ設ク
  地方総動員警備協議会ハ地方長官、東京警備司令官、師団長(留守師団長又ハ留守司令官ヲ含ム)、要塞司令官、鎮守府指令長官、要港部司令官、戦時特設セラルル指揮官(以上ヲ以陸海軍司令官ト略称ス)、検事長、検事正、税関長、逓信局長、鉄道局長並ニ戦時特設スル地方工業官吏長、地方船舶管理局長及其ノ他必要ナル官庁間ノ連絡協調ヲ図リ且庁、部、局関連事項ヲ審議ス
  地方総動員警備協議会ハ道府県ノ警察部長、警視庁ノ部長、陸海軍司令官ノ幕僚(海軍ニ在リテハ防備戦隊司令官必要ニ応ジ二個以上ノ地方警備協議会ヲ合シ連合地方警備協議会ヲ開クコトヲ得)
第七条 総動員警備実施ニ際シ地方長官ハ其ノ庁ノ職員ヲ指定シテ連絡委員ト為シ関係陸海軍ニ設ケラルル連絡委員ト協力シ警察官憲トノ連絡ニ任ゼシム
第八条 前二条ノ協議会及連絡委員ハ平時ニ於テ総動員警備計画設定ノ為設ケラレタルモノヲ継承ス
第九条 総動員警備ノ実施ニ際シ平時計画ヲ変更スル必要ヲ生ジタル場合ニ在リテハ之ガ実施ニ先チ地方長官ハ関係陸海軍司令官ト協議ス
  陸海軍ノ警備ニ関連シ平時計画変更ノ必要アルトキハ関係陸海軍司令官ヨリ地方長官ニ通知ス
    第二款 外地
第十条 総動員警備ノ実施ニ関シ外地ニ在リテハ左記ニ依リ各当該地域ノ特性ニ応ズル如ク協定ス
 一 朝鮮及台湾
  総督、軍司令官及要港部司令官ニ於テ協定ス
 二 樺太
  庁長官、第七師団長及大湊要港部司令官間ニ於テ協定ス
 三 南洋
  庁長官及横須賀鎮守府司令長官間ニ於テ協定ス
 四 関東州及南満洲鉄道附属地
  満洲ノ特性及戦時ノ実情ニ適応スル如ク関東軍司令官及旅順要港部司令官ノ統制ヲ受ケシム
   第二節 機密保護要領
第十一条 軍機及総動員機密ノ漏洩ヲ未然ニ防止スルト共ニ其ノ漏洩状況ソ捜索シ取締ニ遺憾ナキヲ期ス
第十二条 軍機及総動員機密ノ保護ノ為講ズベキ処置概ネ左ノ如シ
 一 間諜ノ取締
  イ 関係各庁相協力シテ間諜ヲ索出シ、諜報機関及諜報網ヲ探知シ諜報機関、諜報網及間諜ノ活動状況並ニ通信手段ヲ明カニシ且通信文又ハ暗号ヲ入手ス
  ロ 関係各庁相協力シテ間諜ヲ逮捕シ、諜報網ヲ破壊シ、間諜ニ対スル内外ノ交通通信ヲ遮断シ及其ノ他必要ノ手段ヲ講ジ間諜ノ活動ヲ阻止スルニ努ム
  ハ 関係各庁ノ資料ニ依リ総動員警備協議会ハ間諜情報ヲ作製シ関係各機関ニ通知ス
   間諜情報ニ記録スベキ事項概ネ左ノ如シ
   1 間諜ノ類別及系統
   2 諜報機関及諜報網ノ編成、組織並ニ其ノ活動状況
   3 間諜ノ利用シアル通信連絡機関、通信手段、使用スル暗号、隠語又ハ略語等
 二 通信ノ取締
  間諜ノ利用スル通信手段ヲ顧慮シ第七章ニ掲グル所ヲ運用ス
 三 内外人出入国及旅行ノ取締
  イ 内外人出入国ノ取締ヲ厳ニス
  ロ 間諜容疑者、要視察人及要注意人等ニ対シ其ノ行動ヲ厳ニ監視シ特ニ其ノ出入国ニ対シ適時適切ナル処置ヲ講ズ
 四 新聞、雑誌及其ノ他出版物ノ取締
  イ 検閲取締ヲ厳ニス之ガ為各庁ハ緊密ニ連絡ス特ニ情報局トノ調整ニ遺憾ナカラシム
  ロ 各庁ハ予メ新聞社及其ノ他ノ出版業者ニ必要ナル指示ヲ与ヘ且適切ナル指導ヲ行ヒ違法ニ機会ナカラシム
 五 軍機及総動員機密ニ接触スル者ノ特別取締
  イ 軍機及総動員機密ニ係ル図書、物件、施設ノ監守ヲ厳ニシ之ニ関与スル者ノ監督ヲ密ナラシム
  ロ 関係法令ノ運用ヲ適切ニシ機密ノ漏洩防止及犯罪者ノ検挙ヲ徹底セシム
  ハ 商取引ニ対シ機宜ノ取締ヲ行ヒ之ニ関連誘発スル機密漏洩ヲ防止ス
   第三節 治安維持要領
第十三条 社会人心ノ不安ヲ除キ国論ヲ統一シ政府及陸海軍ニ全幅ノ信頼ヲ懸ケシメ其ノ他禍機ヲ包蔵スベキ社会的因子ノうん醸ヲ防止スル等国政一般ノ運用ヲ適切ナラシムルノ外治安ノ維持ノ為並ニ国防目的達成上有害又ハ危険ナル行動宣伝等ノ防止ノ為概ネ左ノ処置ヲ講ズ
 一 流言飛語ノ取締
  1 防止スベキ流言飛語ノ種類及之ヲ感受スルニ至ル社会的条件ヲ究明シ其ノ発生ノ根源ヲ芟除ス
  2 流言飛語打破ノ為必要ナル積極的宣伝ニ努ム特ニ真相発表ヲ適切ナラシメ流言飛語ノ発生ニ余地ナカラシム
  3 警察犯処罰令、出版法、治安維持法、電信法及無線電話法等現行諸法令ノ運用ニ依ルノ外必要ニ応ジ戦時法令ノ施行ニ依リ国防目的達成上有害又ハ危険ナル流言飛語ヲ取締ル
 二 要視察人及要注意人ニ対スル処置
  特ニ監視ヲ要スベキ要視察人及要注意人ノ新規発見ニ努メ之ヲ視察圏内ニ編入ス
  行政警察規則、行政執行法、警察犯処罰令、治安警察法、治安維持法、出版法、銃砲火薬取締法、同施行規則、明治三十二年内務省令第三十二号、大正七年内務省令第一号等現行諸邦令ノ運用ニ依リ要視察人及要注意人等ノ査察監督ヲ厳ニシ特ニ内外各機関ノ連絡協調ヲ緊密ニシ其ノ取締ニ遺憾ナカラシム
 三 罷業、怠業及工場閉鎖ノ禁止
  労働争議調停法等現行法令ヲ運用シ取締ルモ別ニ戦時法令ヲ施行シ罷業、怠業及工場閉鎖ヲ禁止ス
 四 各種階級闘争防止禁圧
  各種階級闘争ノ原因ヲ究明芟如シ階級間ノ利害ノ不一致又ハ感情ノ対立ノ未然防止ニ努メ其ノ発生ニ際シテハ之ガ激化ヲ避ケシメ既ニ其ノ激化スルヤ適時闘争禁圧ノ処置ヲ執ル
 五 反戦、反軍ノ言論及運動ノ防止禁圧
  現行法令ノ運用ニ依リ又ハ必要ニ応ジ施行スル戦時法令ニ依リ左記言論及運動ヲ防止禁圧ス
  イ 戦争意識ヲ消磨セシムルヲ目的トスル政治的、社会的、思想的、宗教的及文化的ノ言論及運動
  ロ 戦争反対ノ言論及運動
  ハ 軍民離間ヲ目的トスル言論及運動
  ニ 軍備、兵役制度軍事教練及其ノ他国防的施設ニ反対スル言論及運動
  ホ 軍秩ヲ破壊シ若クハ撹乱スルヲ目的トスル言論及運動
 六 内外ニ於ケル陰謀及其ノ他ノ諸運動ニ対スル措置
  イ 国内ニ於ケル陰謀及其ノ他ノ諸運動特ニ内乱ニ至ル恐アルモノニ付テハ断固弾圧ス
   外地ニ於テハ一般民心ノ之ニ付和スルヲ特ニ警ム
  ロ 満洲国又ハ戦時我ガ威力圏内ニ在ル外国ノ地ニ於ケル陰謀及其ノ他ノ諸運動ニシテ我ガ国内ニ紊訌ヲ生ゼシムルニ至ル恐アルモノニ対シテハ陸海軍其ノ他ト連繋シ必要ナル処置ヲ講ズ
  ハ 我ガ国威ノ及バザル外国及敵国ニ於ケル陰謀及其ノ他ノ運動ニシテ前号ニ準ズルモノニ対シテハ其ノ我ガ国内波及防止ノ手段ヲ講ズ
 七 銃砲火薬類及其ノ他危険物ノ取締
  銃砲火薬類取締法、同施行規則、爆発物取締罰則等ヲ運用シ郵便法ニ於ケル郵便禁制品ノ取締ヲ励行シ且特ニ密輸入及密売買ヲ防止ス
 八 其ノ他国防目的達成上有害又ハ危険ナル言論、結社及示威運動等ノ取締
  現行諸法令ノ運用ニ依リ取締ヲ厳ニスルノ外必要ニ応ジ戦時法令ノ施行ニ依リ公衆ノ合同、多衆運動ノ実施ニ付許可ヲ受ケシメ且要視察人、要注意人等ノ集会及運動ノ参加及一定地域ニ於ケル集会、運動等ノ開催ヲ禁止ス
   第四節 戦時犯罪処理要綱
第十四条 戦時ニ於ケル犯罪ニシテ前二節ニ係ルモノノ処理ニ関シテハ特ニ捜査及裁判ヲ迅速ニ行フ之ガ為必要ニ応ジ関係職員ヲ増加ス
第十五条 警備ニ関スル戦時法令施行シタル場合ニ於テハ同令ニ定ムル罰則ニ依リ戦時ニ於ケル犯罪ヲ処理ス
   第五節 警備員整備要領
第十六条 各庁ノ警備員ハ左記ニ依リ整備ス
 一 陸海軍ノ充員召集ニ依ル減員ヲ速カニ補充ス
 二 戦時ニ於ケル要増加人員ヲ充足ス
 三 諸団体(在郷軍人会ヲ除ク)ヲ適宜利用ス
第十七条 警備員特ニ警察職員整備ノ為左記処置ヲ講ズ但シ細部ニ付テハ期間計画綱領ヲ以テ之ヲ定ム
 一 未経験者ヲ公募シ之ニ必要ノ教育ヲ施ス
 二 既経験者中素質優良ナル者ヲ召募シ開戦前又ハ開戦初頭ニ於ケル応急ノ補充ニ供ス
 但シ兵役関係者ハ之ヲ採用セズ又公募ニ依ルモノニ対シテハ努メテ採用条件緩和シ且教養期間ヲ短縮ス
第十八条 警備員整備ノ為ニハ特ニ開戦当初ノ処置ニ遺憾ナキヲ期スルモノトシ陸海軍ノ充員召集依ル警察ノ警備力急減、動員実施間軍隊ノ警備出動能力減退、開戦時急変スル社会情勢及其ノ他諸般ノ状況ヲ顧慮ス
 特殊ノ経験技能ヲ要シ急速ニ余人ヲ以テ変ヘ難キ者等ノ為ニハ召集猶予ノ処置ヲ執ル
   第六節 警備用通信網ノ整備及利用要領
第十九条 警備用通信網トシテ左記ノモノヲ利用シ特ニ必要ナルモノニ付テハ之ガ整備ヲ図ル
 一 警察用電話及電信網
 二 公衆用電話網
 三 公衆用電信網
 四 鉄道用電話及電信網
 五 無線電信及電話
 六 無線放送
 七 軍用電話、電信等
第二十条 警察用電話及電信網ハ警備用通信網ノ主体トス
 警察用電話及電信網ハ為シ得ル限リ之ヲ拡充整備ス
 警察用電話及電信網ハ警察官憲相互間及軍警間ノ連絡ニ供シ且警察業務ニ支障ナキ場合ニ限リ陸海軍ノ使用ニ供ス
 警察用電話及電信網ヲ整備スルニ方リ支障ナキモノニ付テハ公衆用又ハ鉄道用ノ電話電信ノ電柱ニ添架シ若ハ其ノ回線ニ連絡セシムルコトヲ得シム
第二十一条 公衆用電話網ハ警備用通信網ノ副体トス
 公衆用電話ハ軍警間及各庁間ノ連絡等ニ広ク之ヲ利用ス
 公衆用電話網ハ警備ノ為特ニ必要ナルモノニ付回線ノ新設又ハ増加、加入ノ増加等ヲ行ヒ特ニ緊要欠クベカラザルモノニ付テハ一部ノ回線ヲ事情ノ許ス限リ警備用ニ専用シ得シム又重要ナル地方及緊要ナル回線ニ在リテハ予備施設ノ控置ニ努ム
 公衆用電話網ニ依ル警備ニ間スル緊急ノ通話ハ之ヲ「緊急通話」トシテ優先接続シ且継続通話時間ノ制限ヲ緩和シ又ハ撤廃ス
第二十二条 公衆用電信網ハ主トシテ警備ニ関スル重要ナル命令、通報、報告ニシテ迅速ニ伝達スルヲ要スルモノニ限リ之ヲ利用ス
 公衆電信ニ依ル警備下令ニ関スル電報ハ動員令電報ニ準ジ優先取扱トス
第二十三条 鉄道用電話及電信網ハ鉄道ノ警備ノ為之ヲ利用ス
 鉄道用電話及電信網ハ鉄道業務ニ支障ナキ場合ニ限リ警備関係ノ軍隊及警察特ニ鉄道ノ警備ノ為出動シタルモノノ使用ニ供ス
第二十四条 公衆用無線電信ハ特ニ遠大ナル距離ノ通信ニシテ第二十二条ニ準ズベキモノニ之ヲ利用ス
 小型無線電信機及小型無線電話機ニ在リテハ左記ニ依リ整備シ且之ヲ利用ス
 一 防空監視哨トノ連絡ノ為私設ノ無線電信機又ハ無線電話機ヲ必要ナル地点ニ配置シ無線通信網ヲ構成ス之ガ為無線電信法第六条ヲ運用シ私設機軍用ニ供用セシム
 二 離島又ハ僻地等トノ連絡ノ為必要ナル地点ニ携帯用小型無線電信機ヲ配置シ所要ノ通信系ヲ構成ス
 三 海上見張地点又ハ防空監視上若ハ其ノ他ノ軍事上特ニ緊要ナル地点ニ必要ニ応ジ小型無線電信機ヲ配置シ所要ノ通信系ヲ構成ス
 四 海上ニ於ケル哨戒又ハ防空監視ノ為努メテ船舶特ニ漁船ニ小型無線電信機ヲ設備セシム
 五 以上各種無線電信及無線電話ノ周波数配当等ニ関シテハ特ニ必要ナル処置ヲ講ズ
第二十五条 放送無線ハ都市防空ニ伴フ警備若ハ警備上民衆ニ通報スベキ事項ノ伝達ニ之ヲ利用ス
第二十六条 軍用電話又ハ電信ハ専ラ陸海軍自体ノ用ニ供スル為設置セラル但シ軍トノ協議ニ依リ特ニ必要ナルモノニ限リ軍警間ノ連絡等ノ為利用スルコトアルベシ
 軍用電話又ハ電信ニ付テモ第二十条第四項ヲ準用ス
第二十七条 第二十四条ニ掲グルモノ以外ノ私設ノ電信電話(営林署用及鉱山用電話ヲ含ム)ヲ警備用ニ利用スル場合ニ在リテハ電信法第三条ノ運用ニ依リ之ヲ軍用又ハ公衆用ニ供セシム
  第三章 開戦時ノ警備要領
第二十八条 開戦ノ機切迫スルニ至レバ関係各庁ハ機ヲ逸セズ左ノ処置ヲ講ズ特ニ之ガ迅速徹底ニ留意ス
 一 通信ノ取締
 二 港湾及国境ニ対スル必要ナル処置
 三 軍機及総動員機密保護ノ為必要ナル処置
 四 治安維持上緊急ナル処置
 五 警備力整備上応急ノ措置
第二十九条 開戦ニ際シ関係各庁ハ機ヲ逸セズ人心安定ノ為必要ナル処置ヲ講ズ特ニ之ガ為警備機関ト情報宣伝機関トハ緊密ニ連繋ス
第三十条 開戦ニ際シ関係各庁ハ緊密ニ連絡協調シ社会情勢其ノ他各般ノ状況ノ急変ニ臨ミ警備上些ノ遺憾ナキヲ期ス
 特ニ此ノ際一般警備力ノ希薄化ニ対シ充分ナル顧慮ヲ払フ
第三十一条 開戦ニ際シ警備上必要ナル戦時法令ハ適時之ヲ施行ス
  第四章 交通、通信、電力系統及施設警備要領
第三十二条 交通、通信及電力系統施設ハ特ニ陸海軍ト緊密ニ連繋シテ周到適切ニ之ヲ警備シ其ノ機能発揮ニ支障ナカラシム
第三十三条 交通、通信及電力系統ノ警備ニ在リテハ全系統中ノ要点特ニ重要施設ノ掩護ノ全キヲ期スルモノトシ地区ヲ分チ担任ヲ定メ且所要ノ予備警備力ヲ控置ス又地方団体等ヲ適当ニ運用シ自治体毎ニ警備ヲ分担セシムル等所要ノ処置ヲ講ズ
第三十四条 交通、通信及電力施設ノ直接ノ警備ハ当該官庁又ハ其ノ管理者若ハ其ノ所有者自ラ之ニ任ジ其ノ従業員ヲ為テ自衛ス
(一行?脱落)
 セラルルコトアルベシ此ノ場合各当該官憲ハ陸海軍ノ指揮官ト緊密ニ連繋ヲ保持ス
第三十六条 交通、通信及電力施設等ノ警備ニ於テ一般ニ処置スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 重要施設ノ警護特ニ其ノ破壊又ハ遮断ノ防止
 二 火災予防
 三 破壊又ハ遮断ニ対スル応急修理及復旧
 四 消防
 五 軍機及総動員機密ノ保護
 六 警備ノ分担ト共同連絡
 七 遊動予備警備力ノ控置
 八 従業員不穏行動ノ防止
第三十七条 交通系統特ニ警護スベキモノノ範囲左ノ如シ
 一 鉄道
  イ 主幹線上ニ於ケル重要ナル橋梁及隧道等及路線ノ要部
  ロ 重要ナル停車場及操車場
  ハ 給水、電力、通信及信号ノ設備ノ各要部
  ニ 機関車、電車庫
 二 航路
  イ 主要港湾ノ重要施設(港湾ニ関シテハ後述ス)
  ロ 主要航路上ノ航路標識
  ハ 主要航路上ノ狭隧道ニシテ特ニ閉塞ニ対シ警戒ヲ要スルモノ
  ニ 関係海岸無線局、羅針局、標識局及漁業関係無線施設
  ホ 援護設備等ニシテ特ニ警護ヲ要スルモノ
 三 航空路
  イ 飛行場及其ノ附属設備
  ロ 航空標識
  ハ 航空無線局
 四 道路
  重要ナル幹線道路上ノ緊要ナル橋梁及隧道等
第三十八条 警備スベキ主要交通系統概ネ左ノ如シ
 一 鉄道
   門司-鹿児島間(鹿児島本線)
   鳥栖-長崎間(長崎本線)   新宿-名古屋間(中央本線)
   篠ノ井-塩尻(篠ノ井本線)  上野-青森間(東北本線)
   上野-岩沼間(常磐線)    大宮-高崎間(高崎線)
   秋田-青森間(奥羽本線ノ一部)高崎-新潟間(信越本線)
   米原-直江津間(北陸本線)  敦賀-綾部間(小浜線、舞鶴線)
   新津-秋田間(羽越本線)   京都-幡生間(山陰本線)
   函館-旭川間(函館本線)   釜山-安東間(京釜本線、京義本線)
   基隆-高雄間(縦貫線) 京城-会寧-羅津間(京元線、咸鏡線、満鉄管理線)
  ロ 主幹線ヨリ衛戍地、要塞所在地、軍港及要港ニ至ル線
  ハ 主幹線ヨリ主要港湾ニ至ル線及臨港線
  ニ 主幹線ヨリ重要ナル工、鉱業地方等ニ至ル線
 二 航路
  下関-釜山間 下関-麗水間 門司-大連間 
  新潟、敦賀、伏木-清津、雄基、羅津間
  門司-基隆-高雄間 青森-函館間 稚内-大泊間
 三 航空路
  東京-福岡-新義州-大連間  福岡-台北間
 四 道路
  国道及府県道及外地ノ之ニ準ズル道路ニシテ特ニ緊要ナルモノ
第三十九条 通信系統中特ニ警護スベキモノノ範囲左ノ如シ
 一 通信中枢
  イ 最緊要ナル電話局及電信局
  ロ 緊要ナル無線電信局
  ハ 放送局
 二 通信軸
  多数回線集合シテ全通信系ノ軸ヲ為スモノ
 三 緊要ナル通信系
  重要ナル地方ニ通ズル回線又ハ其ノ連鎖
第四十条
 警備スベキ主要通信系及重要施設概ネ左ノ如シ
(二行塗りつぶし)
   東京 大阪 名古屋 広島 福岡 長崎 鹿児島 釜山 京城 平壌 新義州 元山 清津 台北 仙台 青森 札幌 豊原
  ロ 左記各地ノ無線電信(電話)局
   東京(小山 福岡 検見川 岩槻 名崎 小室)
   名古屋(依佐美 四日市) 落成(落石 根室) 長崎
   鹿児島 那覇 大連 京城 釜山 清津 台北(板橋 淡水)
  ハ 各地放送局
 二 通信軸
  内地及朝鮮ヲ縦貫スルモノ
 三 通信系
  イ 主幹線
   東京-大阪-下関 下関-京城-新義州間 京城-清津間 下関-福岡-長崎間 福岡-鹿児島間 長崎-台北間 鹿児島-淡水間-基隆-台北-高雄間 ヤップ-那覇間 東京-札幌間
  ロ 主幹線ヨリ衛戍地、要塞所在地、軍港、要港及主ナル前進根拠地等ニ至ル線
第四十一条 電力系統中特ニ警護スベキモノノ範囲左ノ如シ
 一 重要ナル発電施設
 二 重要ナル変電所
 三 重要ナル送電y配電施設
  イ 衛戍地、要塞所在地、軍港、要港及主ナル前進根拠地等ニ至ル重要ナル送電及配電施設
  ロ 大都市、大工鉱業地方ニ至ル重要ナル送電及配電施設
第四十二条 警備スベキ主要電力系統及重要施設概ネ左ノ如シ
 一 付図ニ掲グル電力系統及重要施設概ネ左ノ如シ
 二 左記各地方ニ於ケル主要電力系統及同系統中ノ重要施設
  京浜地方 京阪神地方 北九州地方 名古屋地方 広島地方 長崎地方 京城地方 平壌地方 台湾西部地方
第四十三条 交通、通信、電力及施設ノ警備ニ関シテハ必要ニ応ジ別ニ期間計画綱領ヲ以テ所要ノ事項ヲ定ムルコトアリ
第四十四条 主要ナル大都市ニ対スル上水道給水系統モ又前諸条ニ準ジ警備ス
  第五章 主要警備地ノ警備要領
第四十五条 総動員警備上重要ナル地域ヲ指定シテ主要警備地ト為ス
 但シ関東州予備南満洲鉄道附属地ニ在リテハ政府ハ大連以外ノ指定ヲ為サズ
 二 六大都市、京城府及台北市
 三 衛戍地、要塞所在地、軍港及要港 
 四 主要港湾
  イ 海上交通幹線ノ最緊要ナル関門ニ当リ交通量特ニ著大ナルモノ、物資ノ集散時ニ著シキモノ、軍事上最枢要ナルモノ、戦時交通量顕著ニ増加スベキモノ、港域又ハ付近ニ重要ナル特殊工場ヲ有スルモノ
   大阪 広島 神戸 横浜 下関 門司 釜山 大連 東京 名古屋 新潟 敦賀 羅津 清津 雄基 基隆 高雄 室蘭 長崎 若松 麗水 函館 青森
  ロ 海上交通線ノ関門ニ当ルモノ、特定物資ノ戦時搬入著シキモノ、軍事上重要ナルモノ又ハ軍事上時期ヲ許ス限リ重要ナルモノ
   小倉 博多 唐津 相ノ浦 三池 宇ノ島 高松 小樽 留萌 釧路 宇野 糸崎 下松 竹敷 詫間 三津浜 根室 稚内 花咲 原岸 与那原 狩俣 仁川 鎮南浦 新義州 淡水 花蓮港 大泊 波浮
 五 主要工、鉱業地
  イ 工業地及鉱業ヲ主トスル地域
   1 大工業地
    京浜地方 京阪神地方 北九州地方 名古屋地方 広島地方 下関地方
   2 工業ヲ主トスル鉱、鉱業地及特殊工業地
    宇部地方 徳山地方 三池地方 長崎地方 長岡地方 柏崎地方 新潟新津地方 室蘭地方 浦賀地方 興南地方 兼二浦地方 浜松地方 松本地方 富山地方
  ロ 鉱業地域及鉱業ヲ主トスル地域
   1 大鉱業地及鉱業ヲ主トスル大鉱、鉱業地
    秋田地方(油田) 新潟地方(油田) 釧路地方 空知夕張地方 倶知安地方 釜石地方 常磐地方 日立地方 新居浜地方 筑豊糠屋炭田地方 茂山地方 台湾北部鉱業及油田地方
   2 鉱業ヲ主トスル鉱、工業地
    足尾地方 小阪地方 神岡地方 生野明延地方 佐賀関地方 北松浦地方 豊後竹田地方 平壌地方
 六 重要ナル資源集積地
  京浜地方 阪神地方 北九州地方 名古屋地方
  広島地方 関門地方
  京城地方 釜山地方 清津羅津地方 平壌地方
第四十七条 主要警備地ノ区画ニ付テハ内地ニ在リテハ地方長官、外地ニ在リテハ総督又ハ当該超長官ニ於テ関係陸海軍司令官ト協議決定スルモノトシ内地ニ在リテハ地方警備協議会ニ付議ス
(一行?脱落)
 共ニ期間計画綱領ヲ以テ定ム
 一 主要官公衛及国務大臣官舎、重臣官私宿舎、議会及外国公館等
 二 上水道施設特ニ取入口、貯水池、沈殿池、濾過池、配水池、導水管線、上水道幹線及之ニ附属スル重要施設
 三 電力施設特ニ発電、送電、変電及配電ノ重要施設
 四 ガス供給施設特ニ重要ナルガス供給所及導管幹線
 五 左記ニ関スル重要工場
  普通銑 低燐銑 合金銑 銑鋳物 鋼塊 鉱材 鉱片 鋼鋳物 特殊鋼 鋼索 錨鎖 軸受 釘類 金属板製品 軽金属 銅 鉛 亜鉛 錫
  汽罐 蒸気タービン 内燃機関
  昇降機 起重機 水圧機 喞筒 送風機 気体圧縮機
  発電機 電動機 蓄電機 電線 電□
  無線通信機械器具 有線通信機械器具
  光学機械器具 医療器械
  時計 度量衡器 電気計器 其ノ他ノ計器
  工作機械 鉄道車輌 自動車ノ製造、組立、部分品
  造船 航空機 兵器
  石油及其ノ他ノ液体燃料 油脂 染料 塗料
  火薬 爆薬 硫酸 硝酸 曹達 硫安
  ゴム製品 皮革
  其ノ他ノ衣料繊維、織縫、食料品等ニ係ルモノニシテ特ニ重要ナルモノ
 六 重要ナル油田、鉄鉱山及其ノ他ノ鉱山並ニ石炭山
 七 重要ナル運輸通信施設
 八 主要ナル銀行、取引所、市場及倉庫
 九 主要ナル教育機関特ニ専門学校以上及特技者養成機関ニシテ重要ナルモノ
 十 主要科学研究機関特ニ左記ニ関スル重要研究機関
  イ 採鉱冶金工業特ニ採鉱、選鉱、製銑及製鋼並ニ非鉄金属精錬
  ロ 金属鉱業
  ハ 機械工業特ニ工作機械、精密機械、航空機、船舶
  ニ 電気工業特ニ通信及信号、電気計器、電気材料、電池
  ホ 化学工業特ニ工業薬品、医薬品、火薬及爆薬、染料、塗料及顔料、油脂、燃料、石炭、石油等ノ加工品及生成
  ヘ 衣糧工業
  ト 其ノ他ノ栄養、衛生及医療関係ノモノ並ニ物理化学関係ノモノ
 十一 主要ナル歴史的記念物其ノ他ニシテ国民的関心最大ナルモノ
 十二 刑務所
第四十九条 主要警備地ノ警備ニ付特ニ処置スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 治安ノ維持之ガ為特ニ処置スベキ事項概ネ左ノ如シ
 二 軍機及総動員機密ノ保護
 三 鉄道、軌道、通信並ニ電力施設ノ警護及之ガ遮断又ハ破壊ニ対スル応急処置
 四 工場及事業場並ニ集積資源ノ防護
 五 防火及消防特ニ特別防火区域及避難所ノ設定、危険物及重要資源分散、同時数ヶ所発火ニ対スル処置
 六 隧道断絶特ニ水源及幹線ノ障碍毒物又ハ細菌投入ニ対スル応急措置
 七 防疫、防毒及救護
第五十条 主要警備地ノ警備中前条第一号及第二号ニ関シテハ第二章ニ、第三号ニ関シテハ第四章ニ掲グル所ニ準拠シ第四号以下ニ対シテハ左記ニ依ル
 一 工場及事業場並ニ集積資源ノ防護ニ関シテハ当該官憲又ハ其ノ管理者若クハ其ノ所有者ニ於テ其ノ従業員ヲ以テ自衛ス
 二 重要ナル工場ノ密集シアル地域ニ於テ必要アリト認ムル場合ニ在リテハ当該官憲又ハ其ノ管理者若ハ其ノ所有者相協力シ警察官憲了解ノ下ニ自衛ノ範囲ニ於テ集団防護ノ処置ヲ講ズルコトヲ得シム
  警察官憲ニ於テ右ノ必要ヲ認ムルトキハ当該官憲又ハ其ノ管理者若ハ其ノ所有者ヲ適宜指導シ自衛ノ範囲ニ於テ集団防護ノ処置ヲ講ゼシム
 三 重要ナル工場事業場ノ密接シアル区域ニ在リテハ特ニ防火若ハ防火地帯ヲ設定ス
 四 多数住民ノ避難ニ付考慮ヲ要スル警備地ニ於テハ空襲ニ対シ地下室及地下通路等ヲ、火災ニ対シ公園及空地等ヲ適宜避難所トシテ設定シ交通整理ノ手段ヲ準備ス
 五 危険物及重要資源ハ之ガ分散配置ニ努メ且資源ノ種類ニ応ジ類焼ノ危険アルモノノ配置ヲ適切ナラシメ空襲及其ノ他ノ原因ニ依ル被害ヲ減少ス
 六 空襲等ノ原因ニ依ル数ヶ所同時発火ニ処スル為努メテ主要警備地毎ニ消防地区ヲ区画シ各区画毎ニ成ルベク固定セル消防機関ノ配置ニ努ム
 七 空襲等ノ原因ニ依ル水道断絶特ニ水源及幹線ノ障碍ニ対シテハ応急処置ノ為所要ノ技術的準備ヲ整フルト共ニ井水、河水等ノ適切ナル利用特ニ大都市ニ在リテハ其ノ配給ヲ準備ス
  空中若ハ地上ヨリ水道ノ水源及幹線ニ毒物又ハ細菌ヲ投入セラレタル場合ニ於テハ迅速ニ警報ヲ伝ヘ適時断水シ且消毒殺菌ノ処置ヲ講ジ成ルベク速ニ復旧セシム
  井水、河水、溝渠等ニ対シテ毒物又ハ細菌ヲ投入セラレタル場合ニ在リテモ適宜前記ニ準ゼシム
 八 防疫ニ関シテハ前号ニ依ルノ外海港等ノ警戒ヲ厳ニシ間諜及不逞ノ徒ノ策動ヲ警戒シ特ニ隠密ノ間ニ実施セラルル細菌戦ニ対シ之ガ未然防止ト被害ノ制限ニ努ム
  特ニ大都市、大重工業地帯等ニ在リテハ衛生及医療ノ処置ニ遺憾ナキヲ期ス
 九 防毒ハ主トシテ空襲時ニ之ヲ実施ス
  之ガ為防毒室及防毒覆面ノ準備、簡易ナル防毒法ノ普及、毒ガスニ対スル避難ノ要領等ヲ民衆ニ徹底セシム
 十 救護ハ前記防疫、防毒ノ外火災、交通事故ニ依ル傷害等ニ対シ之ヲ行フ
第五十一条 主要警備地中港湾ノ警備ニ関シテハ前諸条ニ依ルノ外左記事項ニ遺憾ナカラシム
 一 海陸連絡輸送施設ノ警備
  イ 桟橋、岸壁、荷揚場ノ警戒及取締
  ロ 倉庫、上屋並ニ其ノ他ノ保税地域ノ警戒及取締
  ハ 陸上運送通路保税通路(保税通路、積卸場、駐車場等ヲ含ム)ノ交通統制其ノ他ノ取締及臨港鉄道ノ警護
 二 出入船舶ノ取締
  イ 船舶ノ取締、船舶及船員ノ検索、船員ノ取締
  ロ 海港検疫
  ハ 電話(特定港湾ノ特定船舶)
  ニ 艀舟及小廻船ノ取締
 三 内外人出入りノ取締
  イ 出入外人ノ携帯旅券、身分並ニ一般出入者ノ身分、携帯品等ノ検査、調査及取締
  ロ 海員並ニ港湾関係労務者ノ検査、監督及取締
 四 密輸入ノ取締
  イ 出入船舶並ニ積載貨物、倉庫並ニ在庫品ノ検査及取締
  ロ 出入内外人ノ携帯品ノ検査
 五 水域特ニ港口又ハ狭水道閉塞ニ対スル警戒及港口並ニ出入航路ノ交通統制
 六 給水、給油及給炭設備ノ警護
 七 航路標識及船舶信号所等ノ警護
  以上ノ為陸上ニ在リテハ警備員ヲ配置シ、交通ヲ制限シ又ハ禁止シ若ハ其ノ他ノ必要ノ処置ヲ講ジ、水域ニ在リテハ見張所ヲ新設シ又ハ増設シ巡邏船、審検船、水路嚮導船ヲ備ヘ標識ヲ増置シ出入水路及出入港時刻ヲ規定シ掃海ヲ行フ又水陸ヲ通ジ事故ヲ防止シ応急復旧ノ処置ヲ講ジ危険物ヲ取締リ且機密保護ニ努ム又特ニ前記第五号ノ実施ニ際シテハ関係陸海軍トノ連絡ヲ緊密ナラシム
  第六章 外地警備要領
第五十二条 外地ノ警備ニ付テハ前記各章ニ掲グル所ニ依ルノ外各当該地ノ特性ヲ顧慮ス
第五十三条 外地ノ警備ニ付一般ニ顧慮スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 異民族統治オ適正ナラシメ民心ノ帰趨ヲ支配ス
 二 皇国依拠ノ観念ヲ民心ニ遍ネカラシムル如ク啓蒙強化ヲ行フ
 三 民心ノ不安ヲ除キ勝利ヲ確信セシメ進ンデ国防ニ協力セシムル如ク指導ス
 四 特ニ軍警ノ威重ヲ加フル如ク警備ヲ厳ニシ且陸海軍トノ連繋ヲ際緊密ニシ些ノ□隙ナカラシム
 五 辺境ノ保安ト用地及重要施設ノ確保トニ十全ヲ期シ特ニ空襲時ノ警備ニ遺憾ナカラシム
 六 内外ノ策謀ヲ封ジ査察警防ヲ厳ニシ不逞ノ徒ヲ弾圧シ撹乱ノ発生ヲ防止ス
  若シ治安動揺セバ其ノ拡大ニ先チ速カニ断固タル処置ヲ執ル
 七 危険ノ顧慮アル地方ニ在リテハ避難及救護ノ処置ニ関シ欠クル所ナカラシム
 八 警察力ノ警備強化ニ力ヲ致シ必要アラバ内地ヨリ所要ノ人員ヲ招致ス
第五十四条 朝鮮ノ警備ニ於テ特ニ留意スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 満洲国内、ソ連邦内並ニ上海方面ノ不逞鮮人ノ策謀、満洲国内反日ノ徒ノ蠢動、支那ノ撹乱鋼工作及ソ連ノ赤化工作ヲ警戒シ之ニ呼応スル半島内不逞ノ徒ヲ掃滅ス
  之ガ為
  イ 満洲国方面ニ対シテハ国境ヲ厳重ニ監視シ港湾ヲ警戒シ且間島方面ニ所要ノ処置ヲ講ジ又在満機構ト連繋ス
  ロ ソ連邦方面ニ対シテハ国境ヲ閉鎖シ北鮮諸港其ノ他港湾ヲ警戒シ特ニ陸海軍ト連繋ス
  ハ 上海方面及其ノ他ノ支那方面ニ対シテハ港湾ヲ警戒シ且関係方面ト連繋ス
  ニ 半島内ニ対シテハ諜報ヲ密ニシ査察ヲ厳ニシ策謀蠢動ニ余地ナカラシム
 二 半島内ニ於テ我ガ軍事行動ヲ厳ニ隠蔽ス
第五十五条 台湾ノ警備ニ於テ特ニ留意スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 対岸及上海、南京方面、南支方面並ニ韮島方面ヨリスル撹乱工作ヲ警戒シ之ニ呼応蠢動スル島内不逞ノ徒ヲ弾圧ス
  之ガ為
  イ 諸港湾特ニ西部海岸一帯ヲ警戒ス
  ロ 島内ノ諜報ヲ密ニシ査察ヲ厳ニス
 二 島内及付近ニ於ケル我ガ軍事行動ヲ厳ニ隠蔽ス
第五十六条 樺太ノ警備ニ於テ特ニ留意スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 接壌ソ領及沿海州方面ニ対シ国境及海岸ヲ警戒ス
 二 我ガ軍事行動ノ行ハルル場合ニハ厳ニ之ヲ隠蔽ス
第五十七条 南洋ノ警備ニ於テ留意スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 海上ニ対シ警戒ス
 二 我ガ軍事行動ヲ厳ニ隠蔽ス
  第七章 通信ノ取締
   第一節 通則
第五十八条 軍機及総動員機密ヲ保護シ且警備上有害ナル諸般ノ通信ヲ防遏スル為通信ノ取締ヲ至厳ナラシム
 之ガ為所要ノ処置ハ開戦前ヨリ之ヲ講ズ
 一 秘密通信ニ関スル資料ノ蒐集
 二 秘密通信検閲ノ為専門技術員ノ養成
 三 其ノ他通信ノ検閲及取締ニ関スル施設ノ準備
 通信ノ検閲取締ニ関シ通信大臣ノ権限外ノ事項処理ノ為ニハ戦時法令ヲ施行ス又外交官ノ発受スル通信、領事館ト其ノ本国政府トノ通信ノ検閲ハ特ニ隠密慎重ニ実施ス
第六十条 通信ノ検閲及取締ノ実施ニ関シ関係各庁間ノ連絡協調ヲ緊密ナラシムル為逓信省及各逓信局ニ情報局、外務、内務、陸軍、海軍及拓務各省ノ職員ヲ加ヘテ組織スル通信取締委員会ヲ設置ス
第六十一条 特ニ必要アリト認ムル枢要ナル郵便局、電話局、電信局ニハ陸軍又ハ海軍ヨリ係官ヲ派遣セラル
 此場合逓信官憲ハ右係官ト連絡協調ス
第六十二条 主要ナル郵便局、電話局、電信局及無線電話局特ニ附表ニ掲グルモノ及外地ノ之ニ準ズルモノニハ郵便、電信及電話ノ検閲執行ニ必要ナル人員設備及資料ヲ整備ス
第六十三条 郵便官署、電話官署、電信官署及無線電信官署ハ郵便、電信及電話ノ取扱ニ際シ情報又ハ警備ニ関シ価値アル資料ヲ得タルトキハ遅滞ナク之ヲ関係庁及陸海軍ニ通知ス
 警備関係庁ハ其ノ執務ニ関連シ通信ノ取締上必要ナル事項ヲ知得シタルトキハ遅滞ナク之ヲ関係アル郵便官署、電信官署又ハ電話官署等ニ通知ス
   第二節 郵便取締要領
第六十四条 敵地ヨリ発シ又ハ敵地ニ宛ツル郵便物及敵国人ヨリ発シ又ハ敵国人ニ宛ツル郵便物ハ左ニ掲グルモノヲ除ク外其ノ取扱ヲ停止ス
 一 帝国官公署ノ発受スルモノ
 二 在本邦俘虜ノ発受スルモノ
 三 帝国ニ派遣セラレアル外交官ノ発受スルモノ
 四 其ノ他帝国政府ノ特ニ認ムル者ノ発受スルモノ
第六十五条 外国宛ノ書状及郵便葉書ニハ左ニ掲グルモノヲ除クノ外暗号ノ使用ヲ禁止ス
 一 帝国官公署ノ発スルモノ
 二 帝国ニ派遣セラレタル外交官ノ発スルモノ
 三 其ノ他政府ニ於テ特ニ認ムル者(例ヘバ特定ノ領事等)ノ発スルモノ
第六十六条 帝国官公署ノ発受スルモノ及政府ニ於テ特ニ差支ナシト認ムル者ノ発受スルモノヲ除クノ外左ニ掲グル郵便物ハ凡テ之ヲ検閲ニ付シ検閲ノ結果機密ノ保護及其ノ他警備上必要アリト認ムルモノハ郵便法第四十六条ニ依リ没収スルカ若ハ其ノ送達ヲ停止ス
 但シ外交官ノ発受スル郵便物、領事ト其ノ本国政府トノ間ニ発受スル郵便物ノ検閲ニ付テハ第五十九条ニ準ズ
 一 外国ニ宛テ又ハ外国ヨリ発スルモノ
 二 外国人ノ発受スルモノ
 三 日本語(朝鮮ニ在リテハ諺文ヲ、台湾ニ於テハ漢文ヲ含ム)以外ノ語辞ヲ以テ記載シアリト認ムルモノ
 四 政府ニ於テ特ニ指示スル者ノ発受スルモノ
 五 其ノ他取扱郵便官署ニ於テ必要アリト認メタルモノ及警備関係庁ヨリ特ニ要求アルモノ
   第三節 電報取扱要領
第六十七条 外国伝新業務中敵地及政府ニ於テ特ニ定ムル地ヨリ発シ又ハ之ニ宛ツル電報ハ左ニ掲グルモノヲ除クノ外之ガ取扱ヲ停止ス
 一 帝国官報及普通語又ハ帝国政府ノ指定スル隠語ヲ以テ記載シタル帝国官報以外ノ官報
 二 左記私報
  イ 在本邦俘虜ノ発受スルモノ
  ロ 政府ニ於テ特ニ差支ナシト認ムル者ノ発受スルモノ
  ハ 航海又ハ航空中ノ人命ノ安全ニ関スルモノ及其ノ他政府ニ於テ特ニ支差ナシト認ムル種類ノモノ
第六十八条 私報ノ用語ヲ左ノ如ク制限ス
 一 和文 普通辞
 二 欧文 日本語、英吉利語、仏蘭西語ニ於ケル普通辞又ハ普通語、隠語ヲ以テ記載シタル電報ハ隠語書名ヲ附記セシメ且頼信ノ際日本語、英吉利語又ハ仏蘭西語ヲ以テ記載シタル訳文ヲ添付シ関係隠語書ヲ提示セシム
 三 諺文 普通辞
 四 漢文 普通辞
第六十九条 電報ハ受信人ノ危険負担ニ於テノミ之ヲ取扱フ其ノ不達、遅延、誤謬等ニ関シテハ政府ハ一切ノ責任ニ任ゼズ
第七十条 帝国官公署ノ発受スルモノ及政府ニ於テ特ニ差支ナシト認ムルモノヲ除クノ外左ニ掲グル電報ハ凡テ之ヲ検閲ニ付シ検閲ノ結果機密ノ保護及其ノ他警備上差支アリト認ムルモノハ其ノ全部又ハ一部ヲ停止ス
 一 外国ヨリ発シ又ハ外国ニ宛ツルモノ
 (二行?脱落)
 四 政府ニ於テ特ニ指示スル者ノ発受スルモノ
 五 其ノ他取扱電信官署ニ於テ必要アリト認メタルモノ及警備関係庁ヨリ特ニ要求アリタルモノ
   第四節 電話取締要領
第七十一条 国際電話連絡業務ハ必要ニ応ジ其ノ全部又ハ一部ヲ停止ス
第七十二条 国際通話ハ日本語(朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督ノ許可シタル者ニ限リ朝鮮語又ハ満洲国語)、英吉利語及仏蘭西語ニ制限シ且其ノ通話内容成ルベク常続的ニ監査シ必要アルトキハ之ヲ中断ス
   第五節 不法無線電信電話取締要領
第七十四条 無線電信及無線電話ノ不法使用ニ付テハ無線電信法ニ依リ取締ルノ外左ノ措置ヲ講ズ
 一 無線電信法第六条ノ運用ニ依リ私設ノ無線電信及無線電話ヲ為シ得ル限リ国家管理ニ移ス
 二 不法私設及不法使用ノ取締設備ヲ拡充シ各逓信局ヲシテ無線周波数帯ヲ分担監聴セシメ且陸上無線通信監視局ヲシテ其ノ日常業務以外ノ周波数帯ヲモ監聴セシム
 三 各逓信局ニ移動監視隊ヲ設置シ前記固定監視ト相俟テ厳重ナル監視ヲ行ハシム
 四 警備関係庁トノ連絡ヲ緊密ニシ監視ニ遺憾ナカラシム
 五 新聞雑誌等ノ刊行物、特定人間ノ書信ノ検閲等ニ依リ得タル資料ヲ利用シテ監視セシム
 六 不法施設容疑者ノ行動及知友関係等ヲ厳重監視セシム
 七 無線機ノ製作及販売ニ対スル統制ヲ行フ
   第六節 国外放送電波及鳩通信取締要領
第七十五条 国外放送電波ハ絶エズ之ヲ監聴シ必要ニ応ジ不穏ナル放送電波撹拌ノ技術的処置ヲ執ル
第七十六条 鳩通信ニ付テハ必要ニ応ジ之ガ取締ノ処置ヲ執ル

昭和11年後半

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