白衣の戦傷病者の募金禁止に関する質問主意書
質問第八号
白衣の戦傷病者の募金禁止に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。
昭和三十一年三月八日
片 岡 文 重
参議院議長 河 井 彌 八 殿
白衣の戦傷病者の募金禁止に関する質問主意書
仄聞するところによると、政府は、来る三月十五日より四月十五日までの一ケ月間を傷痍軍人自力更生運動月間として、「恵む十円はゞむ更生」と云う標語ポスターを全国的に貼り、ラジオ、新聞等を通じて募金の禁止と白衣の戦傷病者には協力せぬようにと、徹底的に白衣募金の締出し運動を展開するとのことであるが、かかる措置は、昭和二十六年六月二日参議院において採択された元戦傷病者に対する募金制限反対に関する請願の趣旨にもとづき速かに撤回すべきであると思うが、左記の諸点について、責任の所在を明らかにして具体的に回答せられたい。
1 白衣募金者の多くは、極めて生活環境に恵まれないものであつて、妻帯者の多くは借家住いで、扶養家族も多く、また独身者は親類、縁者のない者が多く、募金を止めることによつて、明日からの生活費を失い、生活保護法によるとするも、現在の生活扶助料では、例えば四畳半の一ケ月の借料を一、〇〇〇円としても、これを捻出することは到底望めないことであるが、収容施設の準備ありや如何。具体的に回答せられたい。
2 「恵む十円はゞむ更生」と云うポスターを全国的に貼り、ラジオ、新聞等を利用して白衣募金への協力をはゞむことは、募金によつて生活を支えている3、4に該当する戦傷病者の首をしめるにも等しいことであるが、明日からの生活を如何に保障するか。生活保護法によるとすれば、生活扶助料と現在の物価とを対照して明確に回答せられたい。
3 白衣募金をしている戦傷病者の中には、元朝鮮人出身の傷痍軍人や軍属が多数いるが、これらの人々には、現在傷病恩給は勿論、障害年金も支給されていないが、これが救済を如何に考えるか。
4 昭和十九年三月十五日以前に受傷(両眼失明)した軍属にも障害年金を支給すべきであると思うが如何。
5 五体健全なる失業者が巷に群をなしている現況において、生活環境に恵れない戦傷病者が明日の生活の保障される職場を得ることは極めて困難なことであるが、政府の責任において就職せしめるや如何。
政府の責任において就職せしめるとするならば、職場と保障金額を明確に示して具体的に回答せられたい。