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理系学会の歩き方
研究者はなぜ学会を目指すのか
場外乱闘編

 前回は 不良研究員が発表を 何とか終えるまでを述べてきました。
 意地悪な質問も逃げ切り、後はどのように時間を使うも本人次第です。

 不良学会員の性格からしてどのような行動を取るかは もうお分かりですね。

 引き続いて 会場の外に出た後の生態を追ってみましょう。

この文章は理系学会の歩き方発表本番編の続編です。
初めての方は まず其方からお読みください。

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    会場を出る

 自分の発表をこなした学会員ですが、セッションが終わるとホールを立ち去ります。
 疲れが出たとか 面白い発表がないとか、まあ 様々な理由を自分の中で思いつくわけです。(言い訳!言い訳!)

 かといって、すぐに会場を後にする訳ではありません。
 学会受付やフリードリンクのコーナーでは休憩を取っている連中がたむろしています。
 早速、知り合いがいないかどうかをチェックします。
 学会に参加する意義の一つが 同業他者との再会ですから、コレはコレで大切な「作業」なのです。

 あちこちを見回していると 学部時代の同級生を見つけました。
 彼は地元に就職してしまって、普段は電話で無駄話をするだけです。

 向こうもこちらに気がついた様子。
 すかさず駆け寄って 最近の動向(何のだ?)を聞き出します。
 相手の研究の具合や 共通の知り合いの人事で 話の花が咲きます。
 狭い学会だと 「知り合いの知り合いの知り合い」くらいで 大体の人間が繋がってしまいうのです。

 話は 「誰かが上司と折り合いが悪い」とか「誰かが離婚した」という しょうもない話題で盛り上がります。
 が、こんな会場で下世話な話をしていると 皆に筒抜け。
 更に核心に迫ったお話は また後で。
 夜に食事の約束にして、もっともアブナイ話は後からにするのが賢明です。


    昼は清く正しく・・・

 親しい友人と飲む約束を取り付けた不良学会員は 「もう用なし」とばかりに会場を逃げ出しました。
 あとは時間をどう使おうが自由です。

 周囲の観光ガイドを前もって用意していた彼は(オイオイ) 近くの名所を目指して一目散。
 何処から取り出したのか 双眼鏡まで手にしています。
  もう学会場に戻らないのは 彼の性格からして当たり前のことといえるでしょう。

 いつも彼が向かうのは大きな公園・博物館・史跡などが多いのですが、あまり有名な所に行ってしまうと同業者に鉢合わせる可能性が高くなります。
 昼間に名勝で鉢合わせするのは そんなに恥ずかしくないのですが、研究室ぐるみでゴルフ場に向かったら 前の組も同業者なんて笑えない例も存在します。(もっと恥ずかしい例は後ほど紹介)

 結局、色々迷った不良学会員は清く正しく(?)海辺の野鳥公園でお弁当をした後 図鑑を片手に(何で持っている?)シギの鑑別を特訓しています。
 こんなところで 同業者に鉢合わせしなかったのは言うまでもありません。
 時間が余った彼は 更に大型カメラ店と天文専門店をハシゴして歩くようです。

 コレだけの時間を学会場で過ぜば どれだけ有意義なことか、彼が全く理解していないのは行動が物語っています。
 3日ある会期中全く休まず会場にいる人間は少数派だと、彼は信じて疑わないのです。(コレは彼の周りの人間の行動パターンから得られた結論らしい。)


    夜は山あり・・・

 鳥見から帰って ホテルにチェックインすると、今度はお楽しみの第2幕です。

 約束の駅まで行くと会場で別れた友人が待っています。
 真面目な人柄通り 最後まで会場にいたのでしょう。
 不良学会員はジーンズにTシャツなのに、まだスーツにネクタイです。
 落ち合ったら、前もって予約を打った焼き屋に向かいます。

 え、初日から友人と飲むのかって?
 そう、本当なら 研究室の懇親会も予定されているのですが、迷わずシカトします。
 いくら安いお金で一流店のお食事にありつけるとしても、せっかくの旅先でまで上司と一緒では悲しすぎます。
 同様の理由で学会主催の懇話会も 完全無視。
 なんで金を払ってまでジイさんの相手をしなきゃいけないんじゃぁ!

 友人との道すがら 学会場ではヤバくて口に出来ない話題が爆発。
 「A教授の不倫」とか「B助手のアブな趣味」で盛り上がります。
 店に入っても、「Cさんの研究盗作疑惑」とか「Dさんの癒着事件」など大技が炸裂。
 とても地元では出来ない話題のオンパレードがしばらく続きます。

 が・・・・
 離れた土地だと油断するのは禁物です。
 遠くの席に学会関係者が座っていないとは限りません。
 ちょっと聞き耳を立ててみると、遠くの方から「E教授の再就職先」の話題が聞こえて来るかもしれません。

概ね、こういう危険性は 飲食店の知名度に比例し、学会場からの距離に反比例します。

 不良学会員が好むような場末の店では どうせ鉢合わせしても、向こうも下っ端の可能性が高いので気が楽です。
 向こうだって こっちに聞かれてはマズイ話しで盛り上がっているに決まっています。(不良学会員の勝手な思い込み)

 ジョッキも進み、話もオちる所まで落ちてしまいました。
 この店は割り勘にして 次の場所に席を移しましょう。

 夜も更けたこれからの方が、実は危険で気をつけなければいけないのです。


    夜は谷あり・・・

 人間奈良漬のようになった酒臭い二人は、まだまだアルコールの香りに引かれて繁華街を彷徨います。
 が、繁華街に近づけば近づくほど 関係者と接触するリスクはどんどん高くなってしまいます。

 ガイドブックで見た お洒落なバーを目指す不良学会員。
 大通りに差し掛かった所で いきなり友人が腕を引っ張りました。
 脇の路地に知り合いがいるというのです。

 おお、なんということでしょう。 其処にいるのは 共通の知り合い F氏ではありませんか。
 幸いにも 向こうはこちらに気がついた様子はありません。

 遠くでよく見えませんが、お隣には連れがいらっしゃいます。
 が、どう見ても 奥さんではありません。
 子供ほども歳の離れた女性ではありませんか。
 前から噂のあった娘さんの家庭教師でしょうか。

 後をつけるのも一法ですが、ここは上品な友人も一緒です。
 気が付かれる前に 迂回してこの場を離れることにしましょう。(クソ、何でこんなときに双眼鏡もデジカメも持っていないんだ。)
 どうせ私たちに見つかる位なら、どうせ別なところからも情報が入ってくるはずです。

 学会に不倫相手を連れてくるのは珍しいことではないのでしょうが、こんな目立つ場所に二人で来るのは油断のし過ぎという物です。
 繁華街はマズいですし、有名観光地も危険が一杯。
 せめて10km単位で離れた場所にしたほうが良いのはもちろん、もっと安全を望むなら隣県の観光地にするべきでしょう。


 ハプニングはありましたが ようやく二人は繁華街の真っ只中に踏み込みました。
 どんどん客引きがしつこくなって、怪しい看板が目立ち始めます。

 人口密度が高くなればなるほど、更なる危険に警戒しなければいけません。
 なぜなら、スッポかした研究室の懇親会が開かれているのも この辺りなのです。

 もう一次会はお開きになっているでしょうが、白粉の臭いに曳かれた残党がうろついていないとは限りません。
 さっきと違って こんな場所で鉢合わせした日には、潔白(?)の我々まで同類に思われてしまいます。
 ポン引きをあしらいながら、気分は もう「ブラックレイン」(「ブレードランナー」でも可)。

 目を皿のように歩いていると、やっぱりいました。
 同僚のYとZがヤバげな店から出てきます。
 友人も面が割れていますから このまま鉢合わせしては男の沽券(●間じゃない!)にかかわります。

 すばやく近くのゲームセンターに飛び込んだ不良学会員。

 クレーンゲーム越しに覗いてみると、向こうもコチラを目指して進んできます。
 Yがゲームマニアだと忘れていたのが敗因です。

 「あれええええ、お二人さんもお こんな所にキテいるのかい。」
 Zは 高尚なインテリの姿からは想像も出来ない卑下た笑いを浮かべながら肩を組んできました。
 「どおお、調子はあ。」

 よっぽとオイシイ目にあったのでしょう。
 普段はこんな事をシデかす奴じゃないのに、目がイッてしまっています。

 「いやああ、イイねええ。この辺は東京とサービスが違うよおお。」(何で東京のサービスも知っているの?)
 良識派と目されるYまで、言葉がチンピラになっています。
 「うううん、さすが●阪。本当に濃いんだなあああ。それでねええ、90分でたったのXXXX円

 Yの手に風俗情報誌が握られていたのは言うまでもありません。
 彼の留守を守る身重の妻が見たら、実家に帰ってしまいそうです。
 二人とも東京なら こんな所に出入りするような奴じゃない(?)のに、何が彼らを駆り立てるのでしょうか。

 「割引チケット、余ってない?」
 手を出した不良学会員ですが 純潔を守る友人に引っ叩かれてしまいました。
 これ以上 楽しい話題が続かないのが筆者としても残念でなりません。

 より安全に 誰にも知られることなく羽を伸ばすつもりなら、滋賀や京都まで足を伸ばすべきなのです。
  現に 本当にお金のある連中はタクシーでソッチまで行っているんだから。


    そして夢は覚める

 本当に色々あった学会ですが、3日間なんて あっという間に終わってしまいました。

 えっ、後の二日は何をしていたかって?

 皆さんには思い浮かぶでしょう。
 勉強に励む不良学会員の姿が。

 二日酔いで寝ている姿と プラネタリウムで居眠りしている姿しか見えない?

 そういう人がいるかもしれませんねえ。
 発表の時しか 会場で見かけない人も。

 でもね、またそれも勉強ではないんですか?(大嘘!!)

 


 

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注意

この物語は完全なフィクションである。
実在の人物・団体とは全く関連はない。ないはずである。ないといいなあ。
多くの人は真面目に学会に参加し、研鑚を積んでいることは言うまでもない。