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博徒の宿題・夏休み編
博打のための財務考

 フラフラと出歩いていると、こんな物が アチラコチラで目に付くようになりました。

 この青い植木鉢を見ると 遠い昔 始業式の前日に 観察日記を一度にデッチ上げた苦い思い出が蘇ってきます。
 別に 花に恨みがあるわけではないんですけどね。
 小学校・中学校・高校と悩まされつづけた夏の宿題も、大学に入ってオサラバしたのですが いまだに泥縄癖は治ってはいません


 宿題ドリルに変わって 筆者の書斎に積みあがっているのが、この手の書類。

 持ち株の発行会社から送られてくる事業報告書というモンです。
 3月決算の会社だと 7月の初旬に これらレポートが配当と一緒に郵送されて参ります。
 配当は 郵便局に持ち込んで 速攻で換金すればイイんですが、こちらは そう簡単に処理できません。

 中身の大半は シャチョーの挨拶だの 事業の展望だの 読んでも役に立たない内容ですが、最後の方に 貸借対照表や損益計算書が控えています。

 競馬やるなら競馬新聞、パチンコやるなら必勝ガイド、株投機なら決算書

 今は 粉飾決算が世間を騒がせていますけど、コレばっかりは 常習投機家に なくてはならない情報です。

 とはいうものの、読んでスグに役に立つモノではないんですよ。
 決算の中身は 発表前からアナリスト予想で株価に織り込まれいます。
 予想と異なる内容だって、決算発表があった時点で もうオシマイ。
 年次報告書が届いた時点で出来ることなど 何にもありはしないんです。

 そんな訳で 一ヶ月以上 報告書を放置していたわけですが、企業がタダでくれるネタを捨てては 娯楽投機家の名が廃る。
 ちょっと時間が空いた隙に いろいろ目を通しているのでありました。


 読んでみると、概ね 小さな会社ほど面白く会社が大きくなると 段々とツマラないモノになっていきます。

 で、毎年読んでいて 最も面白くないのが この日本最大の自動車会社、ト∋タ

 会社の大きさが大きさだけに、つまらなさも最高級

 新製品の紹介はチリ紙以下で、事業報告にも見るべきものはありません。
 おまけに 財務諸表は単独決算中心で、連結決算は骨格だけ。
 キャッシュフロー表は 単独・連結とも完全に無視

 ネット上では詳細な情報が公開されておりますが、ここまで一般株主を馬鹿にする根性天晴れというしかありません。
 この会社のことなら 発表直後に一般紙にまで掲載されていますから、発行する側も 身が入っていないのでしょうか。

 この会社のグループ企業でも デソンーとかアイシソ精機なんかは 数段マシな年次報告書を出しているんですけどねえ。


 トヨタとの対比で 面白いのが コチラの会社。

 巨大な会社の割には 事業ごとに細かいところまで色々と書かれています。
 証券事業や住宅事業には一切触れない どっかの自動車会社とは大違い

 財務諸表も 個人レベルが対処できる内容は揃っています。
 おまけに 分かり易いように解説まで付けられているのも 親切でしょう。
 個人の投資家にも「読んで欲しい」という気持ちだけは よく伝わってくる作品です。

 が、読んでみても 投機愛好者には結構難しいんですよ、これ。

 何せ 売上が連結7兆5千億、電器から映画・銀行までやってる会社を たった34ページで どう表そうというのでしょ。
 (ちなみに ト∋タ自動車は 更に少なく 半分以下の14ページ!!

 更に、ここに書かれた内容が 投機活動に どれだけ反映できるかというと、もう 未知の領域です。
 書かれている内容だけなら、ココの株が5000円もするとは とても考えられません。


 今度は 博打の醍醐味、私好みの小さい会社を見てみましょう。

 この不況の折、不人気業種の小規模会社は 市場から完全に無視されておりますから、時々 とんでもないモノにぶつかります。

 コレは 2部上場で時価総額 約60億の小規模会社。
 業種も 時代の本流から外れた製造業で、市場の隅で店晒しになっております。

 で、これが そのバランスシート。
 大企業とは 桁が3つも 違っております。

 で、この会社。
 目をつけてからというもの 毎年 ひたすら手持ちの現金・有価証券を蓄えてきております。
 その額、貯めも貯めたり 138億円

 そこから 貸借対照表上の負債を全部差し引いたって80億は残る計算です。
 おまけに、調べる限り 経常赤字は過去10年間1度も出しておりません。
 勿論、配当も 毎年しっかり支払われておるではありませんか。

 会社の時価総額は60億しかないんですから、実に 投機に適した企業といえるでしょう。
 もちろん、この手のボロ株に特有の 気になるリスクは山積みなんですけどね。


 一方、この手の投機的ボロ株でも いつまでも その地位に甘んじているわけではありません。

 下に挙げたのは 別の小規模会社のバランスシート。
 時代の流行から取り残された業態で、2部市場で細々と商われている銘柄です。

 ココも時価総額の割に資産が大きく、借金も それほど多くはありませんでした。
 そして何より 収益は成長こそしないものの赤字はなく 配当も安定しておりましたので、好みの投機銘柄だと思っていたのでありました。

 ところが・・・

今年の決算書では この通り。
いきなり 短期の借入金が 4割増!!

 コレだけだと分かりにくいので、キャッシュフローシートを見ると・・・

 短期の借入金で、23億円も調達しているではありませんか。

 23億って、この会社の資産の1割に当たる金額です。

 金利はいくらか知りませんが、今期の純利益が 約5億
 借入金の使い道を誤ると 利益を大きく削がれることは確実です。

 で、この会社 この金で何をやるかと思ったら、決算発表直後に 同業他社の買収を発表したのでありました。

 このように 「割安ボロ株投機」が いつの間にやら「ボロ成長株投機」に 化けていることがありますから、シロートといえども決算書を馬鹿に出来ません

それにしても 生粋の割安株投資家が聞いたら 泣き出しそうな悲劇です。


 そんな訳で、企業報告書なんぞを掻き回しておりますと 次から次へと娯楽のネタが出てきます。

 上のような決算書は ポリシーこそ違え まあ見事なものだと思うのですが、中には オトボケ系の諸表も存在します。

 そっち方面の最高峰が コレ。

 ある非公開会社の ある事業部門のバランスシートでございます。

 もう、私はこれを見ただけで 笑いが止まりそうにありません。

 流動資産を2億95百万円 計上しておりますが、その90%が「(3)未収金」なのでございます。(全然 「流動」してないって)

コレを作った担当者の苦労がしのばれます。


注意

投資・投機・賭博は大人のための娯楽です。
全て自己責任で楽しみましょう。

 

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