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双眼鏡の性能(4)
 アイ・レリーフとは何か

 ここまで3回にわたって、倍率・口径・視界と双眼鏡の性能を表す数字を見てきました。
 もう双眼鏡のカタログに出てくる数値のほとんどが理解できると思います。

 でも、もう一つカタログには見慣れない数字が出ていませんか。
 そう、双眼鏡のカタログには「アイ・レリーフ」と言う数字が必ず記載されていると思います。

 これまでの数字「倍率・口径・視界」は実生活の中でも出くわす概念ですから理解しやすいと思いますが、「アイ・レリーフ」は普通の生活の中にはない概念です。

 倍率や口径と違って地味な数字だけに軽視されることも多いのですが、意外と双眼鏡の使いやすさに影響する数字です。
 特に、眼鏡を使っている人は気をつけてくださいね。 そうでないと・・・。

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    アイ・レリーフとは何か

 アイ・レリーフを説明する前に、望遠鏡を簡単に模式化してみましょう。

 望遠鏡から覗いた対象は、その倍率に応じて拡大されて見えてきます。

 前の項で述べたそれぞれの視界は上のように表現されます。

 「実視界」はどれだけの広さが見えるのか、「見掛視界」は目にはどれだけの広さと感じられるのかを表します。

 望遠鏡本来の見掛視界を見渡せる目の位置を「アイポイント」、接眼レンズから目までの距離を「アイレリーフ」と呼んでいます。
 「アイポイント」がレンズから離れるほど、つまり「アイレリーフ」が長くなるほど、「ハイアイポイントの双眼鏡」として高性能とみなされます。

 それでは、「アイレリーフ」の距離より離れたい地で望遠鏡を覗くと どのように見えるのでしょうか。

 目の位置が接眼レンズから離れてしまうと、赤線のような模式図になってしまいます。
 見掛け視野が狭くなり、したがって実視野も狭くなってしまいます。

 逆に、目の位置が近くなるとどうなるのでしょうか。

 青い線が見掛視界になって広い範囲が覗けそうに見えるかもしれませんが、そんなにうまくはいきません。
 実視野の大きさは対物レンズやプリズムによって制限されていますから、アイレリーフの距離より近づいても鏡筒の内壁がより多く見えるだけ、実視野が広がることはありません。

 アイレリーフの長さは、接眼レンズの設計によって決まってきます。
 概ね、視野の広さとアイレリーフの長さは相反する関係にあり、広視界の双眼鏡ではハイアイの双眼鏡は少なくなります。
 また、同一形式の接眼鏡・同じ焦点距離の対物レンズを使っていれば、高倍率の双眼鏡ほどアイリーフは短くなります。


     アイレリーフを実感してみましょう

 「アイレリーフ」がなぜ重要なのか、アイレリーフが長いビクセン・アルティマ10X44EDを使って実験をして見ましょう。
 この双眼鏡はアイレリーフ16mmと十分な長さがあり、眼鏡をかけての使用でも不自由を感じません。

 三脚に固定し、見口のゴムの位置からどのように見えるのか 写真を撮影してみます。

 逆光で写真と写りが良くないのですが、肉眼でもこの範囲が見えています。

 次に、カメラを見口のゴムから約5mm離して撮影してみましょう。

 三脚固定で双眼鏡の条件は同一なのに、カメラを接眼レンズから少し離しただけで 視野はここまで狭くなってしまいます。

 さらに、1cm離れるとどうなるのでしょうか。

 ここまでくると、肉眼でも何が見えるのか分かりません。

 逆に、見口を折りたたんで接眼レンズに近づけて撮影して見ましょう。

 上で述べたように、アイレリーフより近づいても見える範囲が広がっていないことが分かります。

 写真は、すべて同一縮尺で掲載されています。当然ですが。

 ということは、ハイアイでない双眼鏡を眼鏡をつけたまま見ると、2枚目の写真のように狭い範囲しか覗けないことになってしまうのです。


    実際の双眼鏡を見てみましょう

 ここまでで、アイレリーフの意味はわかっていただけたと思います。

 眼鏡を掛けていない人にとっては、そこそこの長さがあれば十分に使いやすいものです。
 一般的には、10mm程度でも疲れにくいと言われています。
 でたらめな高倍率双眼鏡でなければ、普通はこのくらいの長さは確保されています。

 問題なのは、眼鏡を掛けている人の場合です。
 眼鏡と眼との間には10数ミリあるので、眼鏡を掛けたまま全視野を見回せるためには15mm程度のアイレリーフが必要です。
 各社のカタログを見ても、15mm以上のアイレリーフを持つ製品は「ハイアイポイント」双眼鏡として区別されています。

 私はアイレリーフ14mmでもあまり問題を感じないのですが、12mmでは非常に使いにくいと思っています。
 いちいち眼鏡を外して覗くのは面倒なので、双眼鏡を選ぶときは必ず15mm程度のアイレリーフを持つ製品を選びます。
 裸眼の方なら何も問題が無いのですが、アイポイントが離れていれば接眼レンズが汚れにくいのも助かるのでは。

 アイレリーフは知られていない数字ですが、使いやすさを左右する性能のひとつです。
 多くのカタログには具体的な数字が記載されていますので、参考にしてみてください。

 

 実際の双眼鏡では倍率・口径・視野などの情報が書かれていますが、アイレリーフについて具体的な数字はかかれていません。
 では、双眼鏡本体からアイレリーフの数字がわからないかというとそんなことはなくて、接眼レンズの部分についたゴムの目当からおおよその想像がつきます。

 

 これは我が家でもっともアイレリーフの長い双眼鏡です。
 アイレリーフが20mmで、ゴムの目当は約15mmついています。

 私はメガネを着けたまま使いますので、このように目当を折り返して使います。
 眼鏡をつけたままでも余裕で全視野が見回せるのは非常に快適です。

 一方こちらはアイレリーフが短い双眼鏡です。
 アイレリーフは8mmです。

 約4mmの目当ゴムがついています。
 この双眼鏡も私はメガネを着けたまま使っていますので、使うときはゴムを折り返しています。
 ところが、8mmのアイレリーフでは裸眼に比べて視野が2/3程度に制限されるため、好んで使う双眼鏡ではありません。

 今はスライド式の目当を使っている双眼鏡もありますが、この距離でおおよそのアイレリーフを知ることができます。
 特にカタログの無い中古の双眼鏡や、安売り品を品定めするときには役に立つでしょう。


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