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双眼鏡の性能比較(4) 前編
ズーム双眼鏡は本当に使えないのか。

 筆者は基本的に低倍率・大口径の双眼鏡を好みますが、高倍率の双眼鏡も用途を限れば有効な道具です。
 JTBショーでペンタックスの20X60を試しましたが、フィールドスコープの代わりと思えば両眼視ができ、その気になれば手持ちでも使えるのは大きな利点でしょう(もちろんカメラ接続が出来ない・アイピース交換が出来ないなど欠点もありますが)。

 そう考えていくと、低倍率から高倍率までカバーできるズーム双眼鏡が魅力的に見えてします。
 私は本格的なズーム双眼鏡の使用経験がないのですが、視野の狭さからあまり使う気がしませんでした。
 双眼鏡愛好家の中でもズーム双眼鏡を支持する人はほとんどお目にかかれません。

 でも、本当にズーム双眼鏡は使えないのでしょうか。
 実力を検証せずに「ズーム双眼鏡はお勧めではない」と書いたのでは、このページの趣旨に反します。
 
 100倍ズームなどは論外にしても、どのような物で、どのような用途でならズーム双眼鏡の実力が生きるのでしょうか。

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    選手紹介

 今回使用したズーム双眼鏡は一般的な製品ではないことを最初に申し上げておかなければなりません。

 この品は某社からダンボール一箱いくらで購入したジャンク双眼鏡のうちの一つです。
 ジャンクですから当然まともに使える双眼鏡ではないわけですが、この双眼鏡は接眼レンズにハガレがあり、確かに商品価値はなさそうです。
 覗いて見た感じではそれなりに見ることは出来そうです。

 ジャンクですから口径や視野のデータは全く分かりません。
 大きさから考えると口径は50mmかと思われます。
 倍率はズーム操作部に10倍から30倍までの数字が記載されており、10〜30X50の双眼鏡と思われます。
 レンズは対物・接眼ともマゼンダコートで、瞳のケラレが出ることから考えるとBK7プリズムを使用しているものと思われます。

 倍率口径から考えると、数字だけで投げ捨てたくなる双眼鏡ではなさそうです(所詮ジャンクですが)。


     外観チェック

 一般的なボシュロム型の双眼鏡ですが右の接眼部にズームレバーがあり、引き降ろすことで高倍率に変倍できます。
 右で操作された倍率は中央軸に埋め込まれた歯車を介して左の鏡筒にも機械的にも伝えられます。

 この部分だけで歯車5個ですから重さも価格も重量級になるはずです。

 瞳を見てみると

            

 左が10倍時の射出瞳、計算上は5mm程度かと思われます。
 右は30倍時の射出瞳、こちらは2mmを切っているはずです。

 明るいところで人間の瞳孔は2mm程度と言われていますから、暗く感じる可能性がありそうです。
 個人的には瞳径2mmが快適に使える目安だと思っていますが、これは良心的なほうでしょう。
 巷では、120X50なんて商品が有りますし、一流メーカーでも瞳径1mmを切るものが散見されます。

 

 一方、対照用の固定倍率双眼鏡は同じ口径でビクセンブランドの「7X50Z」にしました。
 この双眼鏡の詳細は後日詳しく書きますが、某メーカーからアウトレット品として入手した品です。
 Bak4プリズムを使用している分 材料的には高級ですが、価格は5800円。
 コーティングは全面マゼンダコートですが、性能からすると激安です。

 価格的にはその辺で普通に売られているズーム双眼鏡の半分以下のお値段でしょう。
 初めての双眼鏡の購入を軽い気持ちで考えているのであれば、文句なしのお勧めの双眼鏡です。

  


   第一ラウンド コントラストチェック

 最初に高倍率双眼鏡に有利な遠隔物の識別で比較してみましょう。
 私がチェックに使っているのは家の窓から見える橋の銘板です。
 暗い色の金属に文字が浮き彫りにされており、視野の明るさとの解像度が要求されます。

   

 未加工写真はこちら(重いです)

 左は10倍にて撮影。右は30倍にて撮影しました。
 撮影条件はマニュアル固定で、ピントは双眼鏡側で合わせています。 

 10倍では銘板に文字が記されているのは分かりますが、何がかかれているのかはわかりません。
 板全体が暗く見えてしまいます。 
 性能が良い双眼鏡では7倍でも全ての文字を識別可能なのです。
 原因はジャンクのせいかBk7プリズムのせいか分かりませんが、解像力は高くなさそうです。

 30倍にズームするとくっきりと文字を識別できますが、この晴天でも細い穴を覗き込むような気分にさせられます。
 20倍を過ぎると急激に視野が狭くなり、暗くなっていく印象が有りました。
 また、手ぶれはかなり視野を揺さぶり、長時間の観察は体力を消耗します。
 2枚の写真とも三脚を使わず撮影していますが、30倍は9枚撮影してブレていなかったのは3枚です。

 写真でも30倍の視野の狭さと暗さが実感していただけるでしょう。

 肉眼での観察上は15倍から20倍まで倍率を落とすと文字も識別でき、多少なりとも観察が楽になります。
 それでも、やはり手ブレは不快で景色を楽しむ向きには10倍がよさそうです。

 対して、7倍の固定倍率双眼鏡で覗いてみましょう。

 縮小してしまうと写真上では違いが分かりませんね。
 重いのですが元の写真を別ページに貼っておきます。(今度も結構重いです。要注意)

 7倍だと視野が広い上に明るく、見ていて非常にラクです。
 この双眼鏡では7倍でも、観察では全ての文字が識別可能です。
 この双眼鏡を見てしまうと、ズーム高倍率の魅力は吹き飛んでしまいますね。

 双眼鏡にとって大事なのは「倍率よりも解像力」だと思い知らされます。

 これだけで私はズーム機を使うのが嫌になってしまうのですが。

双眼鏡の性能比較(4) 後編につづく


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