2002年JTBショー紀行・その3
ビクセン・コーワ・ニコン
遅くなってしまいましたが、JTBショー2002の
第3弾です。
ペンタックスの隣には ビクセン、そして
その向かいにはコーワとニコンが軒を連ねています。
名門の3社は どんな双眼鏡を並べてきたのでしょうか?
チョット 覗いてみることにしましょう。
ビクセン
粗末な写真で申し訳ありません。
撮り直しをしようと思ったときにはデジカメの電池が・・・
去年までは大きなブースを構えていたビクセンも
今回はなぜか小さなスペースしかありません。
中身も
天体望遠鏡が幅を利かせていますから、双眼鏡の展示は目立ちませんでした。
手にとりやすく並んでいる新型は 25mmのAPEX・PROとアスコット・スーパーワイドの2機種です。
アスコット・スーパーワイドは見掛視界85度のスペックで売り出しましたから、注目していた方も多いでしょう。
まず、持って最初に気が付くのは
その密度?の低さでしょう。
プリズムハウスが大きいのに 全く重さを感じません。
まるでプラモデルか何かを持っているような不思議な感覚です。
この視界の広さを出すために
プリズムではなくミラーを使っているからこそ
この重量になったのでしょう。
覗いてみると
当然ですがアイレリーフの短さが気になります。
アイポイントにうるさい双眼鏡ではないのですが、本当にこの視界を楽しめるのは裸眼で双眼鏡を使う人に限られます。
ま、大らかな気持ちで観望を楽しむ道具なのでしょう。
設計からして
コントラストや「広々感」以外の見え味を求めようとはしていないでしょうから、そっち方面を突っ込むのは失礼でしょうが
チョット気になる所も・・・
少し覗き込んだだけで
ミラー周辺(鏡の切り口か?)からギラついた反射が出ています。
室内で これだけ目立つようだと
屋外使用ではどうなるのでしょう。
カバーを付けるとか
墨を塗るとか対策はあったでしょうに、価格の制約で思うに任せなかったのでしょうか?
この現象は以前取り上げた598円双眼鏡でも見られたんですけど、20000円の正札がつく双眼鏡としては悲しいものがあります。
正立系にミラーを入れること自体は「あり」だと思いますが・・・
この手の双眼鏡を選ぶのは
慣れない初心者が多いでしょうから、大胆にあちこちを見切ってしまったのでしょうか。
普通の双眼鏡で飽き足らなくなったスレッからしの古強者が手にする機会もあるでしょうが、旧共産圏の某オペラグラスのような名声?は勝ち取り得ないでしょう。
で、もうひとつ。
アペックス・プロの25mmが出ていたのですが、こちらは打って変わって正統派の仕上がり。
味付けも
42mmと共通で癖も無く、スッキリした印象です。
ニコンやキヤノンの入門小型ダハとあたり比べると、その良さがすぐに判るでしょう。
これまで国産の20mmダハは「不毛地帯」だったのですが、色々と選択肢が広がるのはいいことです。
間違いなく
コストパフォーマンスの高い双眼鏡といえそうです。
でも、20mmの双眼鏡が400g近くあるのって
少し太りすぎでは・・・
このクラスの双眼鏡って、目立たず持ち歩けるのが
最大の長所だと思うんですけどね。
後は
使い手の好みなんですが、このサイズだと30mmではなく25mmを選ぶメリットは何になるのでしょう?
私の好みは「非防水でも小型で軽量、2軸折りたたみ」なので 相当 辛口ですが、この手の物が好きなら10倍をオススメしておきます。
双眼鏡から 離れるのですが、一番目立つところに飾られていたのが コレ。
黄色いヒョウタン状の物体が参考出品の天体望遠鏡とのこと。
コチラの製品にもメーカーの焦りが感じられるのは私だけでしょうか。
デザイン勝負もいいんですけど、初心者向けなら
隣に並んだ小型フィールドスコープのほうが色々と便利なのでは・・・、こういうバカバカしさはスキですけどね。
コーワ
ツァイスのお向かいには コーワのブースがありました。
展示の中心はスコープなのですが、双眼鏡も去年発売の42mmダハと 発売予定の20mm級ダハが展示されていました。
写真は参考出品のポケットダハですが、デザインは今までに無い雰囲気です。
2色揃えてくるのも 42mmと同じです。
「今までに無い」という意味だけで
こんな形になったのでしょうか。
随分と思い切った(リスキーな)選択をしたものです。
詳しいスペックの資料がありませんが、位相差コーティングの施された高級機のようです。
軽く見た範囲では
ペンタックスのアーバネットに似た印象。
細かいところでは
超高級機との差を感じますが、これまで国産双眼鏡に無かったポジションです。
去年は
42mmダハが「位相差コート・気密防水」高級機の大増殖となりましたが、今年は同じ事がポケットダハで起こっているのです。
ただ大きく違うのは
42mmのデザインは大筋で変化のつけようがないのに対して、小型機では
設計上のメリットとデメリットを
色々と天秤に掛けなければいけない点です。
これまでの製品は「2軸折畳みで軽量小型」が基本になっていました。
後で述べるニコンが新作でも
この路線を踏襲したのに対して、ビクセン・コーワは逆のアプローチをしてきています。
コーワのデザインはピント機構を単純化できますし、耐久性にもメリットがあるでしょう。
眼幅調整も1軸方式が楽という意見が多いようです。
逆に携帯性では
従来形式に劣ることになります。(ツァイスは折畳み軸を非対称化して両立を図っていますが・・・)
後は使い手の好みに拠るのでしょうが、どちらの方式が今後
主流になるのか、非常に興味深いところです。
個人的には
20mmクラスのダハ双眼鏡は何をおいても持ち運びやすさが命だと思っているのですが・・・
20mmダハ双眼鏡が大きくなってしまうと
安価だが大きな20mmポロ双眼鏡に対するアドバンテージを失ってしまいます。
更には
もっと性能を出しやすい定番30mm機が上にいるんですから、やりすぎは禁物でしょうに。
穿った見方をすると 最近の30mm級双眼鏡(代表はN社の最高級機)は ダハプリズム機でも肥大化を続けていますから、多少大きくても商品価値を保てるのかもしれませんね。
ニコン
去年の展示内容は どう贔屓目に見ても良い所のなかったニコンですが、今年はブースの前に人だかりができています。
その目玉商品がコレ。
超高級路線を狙ったシリーズが
20mmと30mmで展示されていました。
このシリーズは数年前に42mmが売りだされていますから、「またか・・・」と思って覗いてみたんですが
コレまでのイメージを打ち破る快作になっています。
係員は「世界最高を目指した」と豪語しておりましたが、そう言わせるだけの内容はありそうです。
新世代のツァイスには楽勝でしょうし、ライカと比べても勝っている所が多いでしょう。
まず、今年 流行りの20mm。
上の写真は8X20なんですが、ツァイスやコーワを見た後だと別世界の覗き心地。(勿論お値段も別世界)
コレが去年「スポーツスターIII」を出したブランドの製品かと思うと驚きです。
42mmの「平坦だが切れの悪い」視界からは決別して、ちょっとスパイスの効いた味付けです。
コレが出てしまうと、わざわざ舶来物に高いプレミアムを支払う必要は薄れてしまうでしょう。
問題は、この外観がどっかの製品と似ている点でしょうか。
8X20はスワロフスキーに、10X25はライカに似ているように感じるのは筆者だけ?
ま、下手に独自性を追求されなくて
良かったというべきでしょうか。
覗いた印象では
8倍のほうが使い勝手がよく、視野も安定しています。
無論、10倍も視野の破綻は全くないのですが、重量バランスのズレが気になりました。
本当に些細な点なんですけど、ここまで出来の良い双眼鏡だと
高望みしてしまうんです。
次に 30mm。
コチラも覗いてみると 非常に素晴らしい。
この中身を持つ国産双眼鏡が出てきたのは
なんとも嬉しい限りです。
同シリーズの42mmが嘘のような鋭い視野で、性能だけ見れば世界の最高水準であることは疑う余地がありません。
私はスワロSLCの方が好みですが、一般的にはニコンの方が高い評価を受けるでしょう。
が・・・
何故か こちらは20mmほど感銘を受けないんですよ。
それは 第一に この双眼鏡が非常に重い点。
随分重いと感じるライカBNよりも
更に2割近くの重量増となっています。
覗いていてもズッシリ感じるなあと思ったら、実はツァイスVICTORY8X40よりも
カタログ重量が大きい!!
30mmダハには
携行性と性能の高いレベルでのバランスが求められるはずです。
この重量になると、40mmではなく
あえて30mmを選ぶメリットが薄れるのではないでしょうか。
プラスチック部品が多くなると「高級感云々」の問題は出てくるのでしょうけど・・・
見栄が実用性に優先することはないですから。
そして、30mmの双眼鏡では防振機が
別な世界を切り開きつつあります。
覗いて比べればニコンの圧勝ですが、キヤノン10X30ISの方が圧倒的に使いやすいんですよ。
ニコンが教科書的な双眼鏡の世界を極めた製品としては記念碑的な価値があるでしょうし、使ってみても文句無しに楽しい製品でしょう。
高い金を払って貿易黒字の解消に励む機会も大分少なくなるでしょう。
私が こんなところで書くまでもなく、そのうち
最高級機のベンチマークになっていく双眼鏡であることは疑いません。(特に8X20)
が、次の世代では
何か飛びぬけたモノを、天動説から地動説に移り変わるくらいのモノを
期待せずにはいられなくなるのはどうしてでしょう。
HGシリーズの出来の良さゆえか、ニコンのブランドゆえか?
ツァイスやライカを追い抜いたところで
今度は何を目指していくのでしょう?
好事家の注目は HGシリーズにばかり集まっていましたが、隅には もうひとつの新作が飾られておりました。
このモナーク双眼鏡
コレといって目を引く製品ではないのですが、覗いてみると
悪くありません。
HGを見た後だと かなりダルに感じますけど、中級双眼鏡には十分以上の中身でしょう。
普通の双眼鏡生活なら
十分に「出来の良い双眼鏡」を楽しめるはずです。
あとはお値段の問題ですが、この内容で実売2万円代ならお買い得なんでしょう。
安物小型双眼鏡から乗り換えるにても
頑張れば手が出せる値段。
今まで ありそうでなかった所を埋めています。
1万そこそこの入門ポロ機を買って
すぐに乗り換えるくらいなら、最初から
こちらを買うほうがトータルコストは安くつくでしょう
この製品が出ては
スポーターIの存在意義は随分薄れてしまいそうです。
本当のことを言うと
このお値段ならポロ式のほうが望ましいと思っているんですが、考えを改めなければいけないのでしょうかねえ。
ポロ式は安価に作れるでしょうが
売れないと結局コストが掛けられず
十分な性能が出せないことにもなります。
ペンタックスPCFVやビクセン・フォレスタと比べたら、外見を見ただけで
普通はこっちを選ぶでしょうからね。
それにしても この内容の双眼鏡が
この値段とは良い時代になったものです。
おまけに HG30mmより 軽いし・・・
で、こちらも新製品ながら目立たないところに飾られていた「スタビライズ14X40」
見てのとおり、F社の製品と瓜二つ。
防振系の制御プログラムを「乗物用」と「地上用」が選択可能で、確かに使いやすくなっています。
「地上用」の設定はキビキビしていて違和感が少なく、双眼鏡で船酔いするようなこともなくなるでしょう。
が、これを使って楽しい用途は そう広くないのでは。
野外を歩きで持ち運ぶ気にはならないし、車に積みっぱなしではもったいないし。
気軽に星空散歩を楽しむには良いのでしょうが、長い時間はきつそうだしなあ。(軟弱者)
本当は
その機構にマニアックな購買意欲を刺激されるんですけど、粗はあっても
キヤノンISの方が使いやすいのは間違いところでしょう。
貴方が
クルーザーや自家用飛行機を持っているんでなければですが。
といって、次回に続く。
次回は
今回のショーのまとめを考えてみましょう。
2002年の目玉は何だったのでしょう。
そして、21世紀の双眼鏡趣味は
どうなっていくのでしょうか?
請う ご期待!