2002年JTBショー紀行・その2
ツァイス・ペンタックス
入口の2社を見終わると、今度は
窓に向かって各社のブースが並んでいます。
去年までは
全社が窓と平行に並んでいましたから、窓の外を見られるようにという配慮でしょうか。
ま、窓の外にはビルの壁しかないんですが、室内だけで
覗いているより遥かに面白くなりました。
特に、ビル外壁の模様が
歪曲や収差を目立たせてしまうんで、意地悪な見方をしてしまいそうです。
入ってすぐにお出迎えしてくれるのは、ツァイス そして ペンタックスです。
また、何時ものように のんびりとお邪魔してみることにしましょうか。
ツァイス
ブースの前は新発売のスポッティングスコープが並んでいます。
双眼鏡の方が注目を集めているようでしたが、かなり力の入った品物になっております。
アイピースや本体の作りの良さは勿論なんですが、使いやすさにまで気を使っている様子。
特に、フォーカスノブが粗動と微動に分かれているのには
驚かされました。
天体望遠鏡や顕微鏡なら
安い機種でも常識になっているのに、他社製品では見たことがない!!
顕微鏡と違って
動く相手に使うのですから、チョットは慣れも必要でしょう。
大事なときに微動を目一杯 使い切ったりしたら
チャンスが台無しですが、一度使い慣れると
元には戻れなくなりそうです。
手が小さい方には ノブが遠すぎるかもしれませんが、この会社の中型双眼鏡も全部そうだし・・・
一方、双眼鏡は「VICTORY」を中心に 現行機種が勢ぞろい。
いろいろ比べて見ても
悪い双眼鏡ではないように思います。
少なくとも、一部でボロクソに言われているほど
酷い物でもないのでは・・・
とりわけ 56mmは
DSから比べて格段に軽くなっていますから、夜空を見上げる向きには
使いやすそうです。
防水性能もそう。
7X42が、あの値段で非防水なのは 確かに
カタログ訴求力で劣るのかもしれません。
が、以前のような強力なオーラが発せられていないのは どうしたものでしょう。
月刊天文で指摘されていたレンズセルの塗装も相変わらず
改良された形跡がありません。
普通の使用で影響があるとは思えないんですが、チョット幻滅を感じる瞬間です。
この辺りの処理は
スワロとライカが念入りで、ニコンは手抜派となるでしょう。
ツァイスではDSまではガッチリやっていたようですが、DIAFUN以降は相当に見切った造りになっています。
特に、こうやって7X42BGATPと比べてしまうと どっちが新型なのか分からなくなるでしょう。
一目覗いただけで
頭に突き刺さるような輝き感が、何処でどうしたのか
分かる程度に薄められています。
それが環境対応のためなのか、コストダウンのためなのか。
余りに毒気が抜けてしまうと、別に
ツァイスでなくても良くなってしまいそうです。
「別に・・・」と言ってしまえば、DIAFUNなんかはバーゲン叩売り贋ブランド品の風情です。
10X30BGATPが復活していますから、あえてこちらに手を出す必要は全く無いでしょう。
実際、お隣のペンタックスに行って、お向かいのニコンに行って、覗き比べてみると
DIAFUNがなぜ評価されないのか直ぐに分かるはず。
どう贔屓目に見ても、ブランド名以外は
ニコンHGの30mmに大差をつけられています。
勝っているのは お値段の大きさだけでしょう。
私はDIAFUNの上に写っている
OLIVEは大好きなんですけど。(そういえば大昔、ニコンでこれにソックリな物があったなあ)
今となっては
覗いてハッとする双眼鏡ではないんですが、手になじんで使いやすいと思っています。
アメリカでの販売価格との差が大きいので、国内では手が出せませんし
この値段なら他にも選択があるんですが。
CLASSICシリーズから世代交代を進めるツァイスですが、今年は
小型双眼鏡の新作が展示されていました。
DSの後継らしく 1軸折りたたみ形式をとっています。
どちらを好むかは使い手によるのでしょうが、携帯性より使い勝手を重視するチョイスでしょう。
見えは・・・
本体を隠して見せられれば、CLASSICと何処が変わったのか
ほとんど気が付かないでしょう。
私も 全く違いが分かりませんでした。(自爆)
ここ数年のツァイスを見ると「退化しなかっただけマシ」なんですが、他社の製品は
もっと先に行っていることに気がつかないのでしょうか。
もっとお安く 性能の良い品が
すぐ近くに並んでいたんですけどね。
はあ。
ため息しか出ません。
ペンタックス
ツァイスのお隣は ペンタックスがシュタイナーのお隣は、フジノンがブースを構えておりました。
保守的なお隣さんと違って、こちらはイケイケのムードを漂わせております。
財務状態も改善してきているようで、うれしい限りです。
で、イッている新製品が これ。
デジカメと双眼鏡が一体化しております。
カメラと双眼鏡をくっつける発想は 大昔から色々なチャレンジが繰り返されてきたのですが、成功例はほぼ皆無。
参考文献:ビクセン光学へ直リンク |
この種の「カメラ付き双眼鏡」をトコトン考えていくと、「なぜ双眼鏡が楽しいか」という根源的な問いにぶつかるんですよ。
「観察すること」と「記録すること」
普段 双眼鏡を持ち歩いていると、同じように覗いていても 異なる使い方をしている事に気が付きます。
まず、景色の中で双眼鏡を走らせる時。
対象物を探していることもあれば、ただ
景観を楽しんでいるだけのこともあります。
視野の中で視線を遊ばせながら 双眼鏡を使っています。
そして、もうひとつが 鳥などの対象物を
じっくりと観察する時。
視野の中央部に対象物を固定して、より細かい点を判別しようとします。
意識する視線は狭い範囲で 「眺めていた時」より
詳細なものまで見えてきます。
個々人の使い方で比重の違いはあるでしょうが、意識せず「眺める時」と「見つめる時」が意識せずに使い分けられているはずです。
対して、カメラでは「眺める」機能は重視されません。
ファインダーの機能は
正しい記録を残すための導入装置であり、「見つめる」機能が本道です。
望遠鏡もそう。
倍率が高いこともありますし
固定装置を要するためでもあるのですが、「見つめる」方が重視されているようです。
勿論、「眺める」機能が双眼鏡に特異なものではありませんし、両眼視のメリットも忘れてはなりません。
が、私は「見つめる」と「眺める」のバランスこそが双眼鏡の面白さであり、その汎用性につながっていると思うのです。
この双眼鏡を見ていると、難しい問いを突きつけられるのです。
「眺める」双眼鏡と、「見つめる」カメラの両立は可能なのでしょうか?
「見つめる」双眼鏡となら、カメラ付きのメリットはあるのでしょうか?
そして、双眼鏡に適した「眺める」記録手段はあるのでしょうか?
こんなサイトを作っている以上、いずれ答えを出さなければいけないのでしょうが・・・
この製品を見ていると、そこまで考えられた形跡はありません。
確かに、フィルムの収納に気を使わなくて良い分
小型化できるのはデジカメのメリットでしょう。
旧世代の製品は
その大きさで最初から大きなハンデを背負っていましたからねえ。
では デジタル化の裏返しで
デジカメの電池消費をどう考えたのでしょう。
双眼鏡を使う間
ずっとデジカメをONにしておくことはできないでしょうし、チャンスの瞬間に電源を入れるわけにもいけません。
機械的にシャッターを切れる銀塩カメラでは考えられない問題です。
そして この双眼鏡で一番気になるのは、視野率が85%しかない点です。
前の議論で言えば
カメラ自体を「眺める」側に振った設定といえるんでしょうが、「見つめる」側には大きく不利でしょう。
画素数が小さいですから、よく見えたと思って写した対象がパソコンで見ると分かりにくくなるのでは・・・
普通に記録を残したい対象は「見つめている」物体のはずです。
それなのに、なんで
こんな「写るんです」みたいな設定になってしまったんでしょうか。
悪口を言っていけば 何でも書けるのですが、新しい商品に対して 後ろ向きの批判を書くのは 卑怯だしなあ。
他にも、国内未発売のスコープや
発売予定の小型双眼鏡が在ったらしいのですが、見逃してしまいました。
デジカメ付双眼鏡に気をとられ過ぎて・・・
といって、次回に続く。
次回はビクセン・ニコンを取り上げます。
請う ご期待!