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2001年JTBショー紀行総集編
21世紀も双眼鏡は進化しつづけられるのか?

 これまでにJTBショーの会場をほぼ見回してきました。
 今回は 会場の様子から 双眼鏡の今後を考えてみましょう。

 現在の双眼鏡は どのような立場に置かれているのでしょうか。
 そして、これからの双眼鏡はどのように変化していくのでしょうか。

 キーワードは「横並び」と「差別化」です。
 

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    高級機は何処へ行く

 会場をすべて見回して まず気が付くことは、少なくともスペック上は各商品が非常に似てきてしまっているということです。
 量販の見込める小型双眼鏡はもちろんのこと、中型以上の製品も カタログを見ただけでは区別がつかないでしょう。

 まず、高級機から見てみると各社ともダハ双眼鏡の高性能化を推し進めています。

 以前は舶来高級機の独壇場だった40mmのダハプリズム双眼鏡を、国産各社が相次いで投入してきました。
 ニコンとペンタックスはかなり早い時期から手がけていたのですが、去年はミノルタ・ビクセン・タスコが新型機を発売。
 今年はコーワも新製品を展示していたほか、フジノンもマイナーチェンジしてきました。

 各社とも 全面マルチコート・位相差コーティング・スライド式アイカップ・窒素ガス封入防水と同じような構成になっています。
 製造の難しいこのような商品がこれだけ出てくるというのは製造メーカーの技術が向上している証明でしょう。
 実際に覗いてみても ハズレは少なく どれも確かに高級品らしい中身になっています。

 5万円を越す双眼鏡の需要がどれだけあるのかわかりませんが、選択肢が増えることはユーザーにとってはありがたいことです。
 ブランド間の競争は性能の進化を促すでしょうし、価格もメーカーの言い値だけでは通らなくなるでしょう。

 あとはユーザーが競争の結果を評価できるようになれば良いのですが、残念ながら都市部でも環境は整っていません。
 JTBショーは その役割を果たせる数少ない場なのですが、ブースによっては窓すら覗くことが出来ませんし 参加するブランドが限られるのが残念です。
 可能であれば、窓際に各社の製品を比べられるコーナーがあると理想的です。


 十分に見比べたわけではありませんが、主だった製品の感想を並べておきましょう。

  ペンタックス 8X42DCF・WP

 舶来機やニコンに及ばないものの、このクラスではベストの出来。
 軽い双眼鏡ではないものの 手になじむ外装も好印象。
 視野は普通に使う分には ほぼ平坦で、迷光処理も気が使われている。
 文句なしに一押しできる双眼鏡なのに、価格設定は疑問。
 今でも価格なりの満足度はあると思うが、せめて実売7万円台になるといいのに。
 10X50も価格を気にしないなら 素晴らしく、個人的にも欲しい製品だけど・・・(涙)


  ビクセン アペックス・プロ 8X42

 ビクセンと聞いて食わず嫌いをしていると損をする双眼鏡。
 確実に持てる外装は双眼鏡の重さを感じさせない。
 コントラストも高く、極端な条件でなければ 不満を感じないはず。
 特売期には5万円を切る価格も驚異的。
 ブランドにこだわらずコストパフォーマンス重視の実質派なら 満足度はきわめて高い。
 同シリーズの10X50も 大きさのデメリットを理解できれば 考える価値がある。
 この品質で8X30も欲しいところ。


  コーワ 8X42 BD

 最後発だけに迷いが見える内容。
 斬新な外装は確かにインパクトはあるが、デザインに使い勝手が食われた印象。
 カラフルな見た目が 7万からの出費を強いられるユーザーに受け入れられるかは疑問。
 覗いてみると ニコンでもペンタックスでもない 異色の味付け。
 あえて挙げれば 中心部重視の舶来機風だが、まだ道半ばの印象は拭えない。
 ペンタックスもフジノンもビクセンも、もちろん舶来物も嫌いなコーワ信者なら プロミナーとコーディネートする?


  フジノン 7X42 CD

 以前の型は 基本的には悪くない双眼鏡だったが、位相差コーティングが無く価格的にも疑問だった。
 今年のJTBショーで位相差コーティングの入った改良型を出品してきた。
 確かに以前よりすっきり感が増しているし、入射光のフレアも目立たなくなった。
 他者と比べると視野が若干広く 最外周までフラットなのがメリット。
 デメリットは 200g以上重いカタログ重量。手にしてみるとその差は大きい。
 業務用主眼のブランドだけに、耐久性重視になったのか?
 重さを厭わなければ 悪い選択肢ではないが。


  タスコ レアバード 8X42

 マニアからは全く注目されない商品だが、侮ってはいけない。
 外装はオーバーデザイン気味だが 考え方次第か。
 覗いてみると ビクセン アペックス・プロに よく似ている。
 コントラスト感もよく出ているし、ぱっと見ていると他の製品と遜色ない。
 ペンタックス級には達していないが、ブランドだけで倦厭するのも惜しい印象。
 あとは価格次第だけど、アペックス・プロが気を吐いているだけに辛いかも。


  ニコン 8X42 DCF

 ニコンの威信をかけた双眼鏡だけあって 確かに格上の内容。
 外装はよく考えられているし、ライバルより2割以上重い重量を感じさせないバランスも良い。
 覗いてみると ほぼ完璧にフラットな視野で、わざと蛍光灯を見たりしても ノイズが出ないのは流石。
 良くも悪くもニコンの理想が表現されて、ツァイスと見比べると その考え方の違いがよく分かる。
 収差を完璧に補正しようという考え方は 正論だし、アプローチは正しいはず。
 が、パッと見が派手な舶来機に釣られてしまうのは哀しい性。(と 言う私もツァイス・ユーザー)
 15万の出費を納得させる毒は まだ持っていない。そこがイカにも真面目なニコンらしいんだけどさ。


  ツァイス 8X56 VICTORY

 ニコンと対照的に「毒の塊」。
 外装はコーワ並だが、室内を覗いただけでツァイスとわかる臭い構成。
 視野の端っこはかなり歪んでボケる所は、国産メーカーなら絶対に「不可」を喰らうはず。
 それでも 使っていると非常に魅力的な双眼鏡に見えるのは不思議。
 値段も安くなって、重さも手ごろになったのはうれしい限り。
 正規品も まずまず合理的な価格で手に入れられるようになった。
 細かいコストダウンには目を瞑るしかないのだろうけど、「OWL EYE」の方が高級に見えるかも?


 ある価格以上の製品は 雪崩れを打ってダハプリズムに移行しているのですが、ポロプリズムにも捨てがたい長所があります。
 ダハより低めの価格で 同等の性能感を打ち出せれば、大きさは不利でも需要はあるはずです。
 それでも新型機が出てこないのは「横並び」主義の影響でしょうか。

 中で、積極的に流れに抗する製品もゼロではありません。

 センターフォーカスのCF機はビクセン・フォレスタがいい所を突いてきました。
 味付けはアルティマの延長線上にあり、必要十分な高性能を感じさせる内容もビクセンらしいところです。
 マニア目で見ると極端な広視界は必要ないのでし、もう少し安くないと 初心者を振り向かせるのは難しいでしょうが、性能を考えると妥協できないところもあります。
 この製品がどこまで浸透できるかは 今後のポロ双眼鏡の行く末を占うことになるでしょう。

 ニコンも 品揃えが多いだけにポロ双眼鏡も数をそろえています。
 高級機と言えるのは、SEシリーズと 一昨年モデルチェンジされたEIIシリーズでしょう。

 SEシリーズはJTBショーで覗いてみても 明るい優れた双眼鏡だと思うのですが、ダハ双眼鏡に苦戦しているのか 今一歩波に乗れないようです。
 ダハ双眼鏡との比較はともかく、8X32・10X42・12X50の品揃えでは 肝心の選択肢がありません。
 口径30mmはダハ双眼鏡がコンパクトに出来る反面、ポロ双眼鏡ではプリズムハウスの制約から40mmと大差無いサイズになってしまいます。
 10X42になると 倍率の高さから好き嫌いが分かれるはずですから、やはり7倍か8倍が必要でしょう。
 12倍は三脚固定が必須な割に 中途半端な印象が拭えません。
 いっそのこと、16倍まで行けば別な需要がありそうにおもうのですが。
 担当者も問題を知っているはずですし 8X42なんて簡単に作れそうなのに、自社のダハ双眼鏡との共食いを心配しているのでしょうか。
 性能で三味線を弾いていると、他社のダハ双眼鏡に客を取られるだけでしょうに。

 高級機の「差別化」は フジノンの動きが 目を引いていました。

 業務用IF双眼鏡の改良自体 国産では初めてでしょう。
 軽量化など使いやすさの改善が前面に出されており、痒いところに手が届いた内容です。
 50mmクラスは国産ダハ双眼鏡の進歩が激しく、一般用途ではIF機の魅力が薄れてきていただけに 他社がどう出るか楽しみなところです。
 IF機に限らず、発売後 時間が経っていても ちょっとした手直しで印象が変わると思われる双眼鏡も多いのですから。


    入門機は何処へ行く

 安価な双眼鏡では、競争が激しいだけに 各社とも色々 模索が試されているようです。
 去年あたりまでは 各社ともハイアイ化と使い勝手の向上が進んでいたのですが、今年は「低価格化」と「広視界化」が流れのようです。

 まず低価格化ですが、今の情勢から行っても避けられない流れでしょう。
 特別なマニアでなければ 年に何台も買うわけではありませんから、双眼鏡を手にしたことのない層を開拓するのは重要なことです。
 私たちは3万でも普通の双眼鏡と思っていますが、普通は1万円でも高いと感じているはずです。
 性能と価格をどうバランスさせるかが ブランドの腕の見せ何処となるはずです。

 今回最も動きが激しかったのは 低価格競争から もっとも縁遠いと思われていたニコンです。
 アクションシリーズの新型は思い切った価格設定がされ、以前26000円だった8X40が 新型では20000円丁度まで値下げされています。
 また、8X36SPORTER I も定価が25000円ですから、実売は2万円を切るはずです。
 双眼鏡に興味があっても手がだせなかった層には、ニコンのブランド力もあり魅力的に見えることでしょう。

 反面、コストダウンの影響も著明になってきたようです。
 新型アクションは「光学系は同一」とアナウンスされていましたが、以前よりコントラストが悪化しているように感じられます。
 並べて比べた訳ではないですし 見本のコンディションの影響もあるのでしょうが、どこか足を引っ張っている要素がありそうです。(おそらく、接眼レンズのコーティングではないかと思うのですけど・・・)

 SROTER I もニコンのブランドと見ると疑問を感じざるを得ません。
 外観の仕上げは高級機並みですが、覗いてみると「ニコン」に期待される性能はありません。
 ビクセンやオリンパスのように、安物の雰囲気が露に出てしまっています。
 高級感を求められる値段ではないですし 実用に不足はないのですが、この価格ならポロプリズムを使ったほうが性能を出せたはずです。
 ダハプリズムにこだわるなら、もう少し手間とコストをかければ本当の意味で使える双眼鏡になったでしょう(例:キヤノン8X32WP)。

 どちらの双眼鏡にも需要があるのは分かりますし、裾野を広げる力はあるでしょう。
 が、それにブランドのイメージを賭ける価値があるのか、疑問が残ります。


 「広視界化」は近年著明になってきた潮流です。
 これまで先導してきたのはオリンパスでしたし、一部ではミノルタも追従してきました。
 カタログスペック上 大きな売りになりますし、経験の少ない層を引っ掛けるには 格好の餌になります。
 もちろん、見掛け視界を追い求めるには副作用が伴います。
 安価な製品で広視界を求めた結果は 別項で述べたとおりで、手放しで喜べるものではありません。

 今回のショーでは、ビクセン・フォレスタと ニコン・スポーツスターIIIが 広視界双眼鏡として登場してきました。
 中でも、ニコンの新型は ポケットダハ双眼鏡としては異例の設計です。
 これまでのニコンでは広視界双眼鏡は どれも視野の隅まできっちりしていましたし、今回もどれだけニコン的な味付けをされているのか 期待されていたのですが、非常に残念な結果に終わってしまいました。

 「広視界化」は売り文句に出来ますが、「視野の品質」は双眼鏡を使った人間でなければ分からない性能です。
 数字に出来ない品質を保証するのが真のブランドの価値だと考えるのですが、「ニコン」はその役割を放棄していくのでしょうか。
 このままでは、「オリンパス」と同じく ブランドは客を幻惑させる道具に過ぎなくなってしまうでしょう。
 性能を保証しない「ブランド」では、「V」や「K」と同じなのです。


 もうひとつ、おまけで流行を挙げるなら「防水化」となるでしょうか。
 使う側には有難いことに 高級機だけでなく、安価な双眼鏡にも裾野を広げつつあるようです。
 防水と言っても 防滴レベルの製品がほとんどですが、重さも抑えられるのですから 必要十分でしょう。

 願わくは、防滴性能の限界を よく周知して欲しいものです。
 浸水はもちろん 防カビ性能は限られていますし、接眼レンズで合焦を行うタイプだと パッキンの寿命も限界があるはずです。
 説明書に防水の限界を示すとともに、気密性の寿命の目安を示しておくべきでしょう。
 これは安価な製品に限らず 高級機でも実行して欲しいものです。
 腕時計のように「パッキンは毎年交換しましょう」と書くのはやり過ぎですが、「5年に1度は定期点検を」くらいは記載しても罰はあたらないでしょう。
 ひょっとしてアフター・サービスはメーカーのお荷物?


    まとめ −望みは何処にあったのか−

 ショーの内容を離れて好き勝手を書いてきましたが、隠れたキーワードは「ブランド」だったようにも思います。

 技術が進むにつれて、高級ブランドだけが高性能ではなくなってきたようです。
逆に、高級ブランドだからといって 高性能でもなくなってしまいました。

 ツァイスですら時流と無縁ではいられないのですから、国内各社も厳しいことでしょう。
 が、着実に進歩を続けるブランドもあり 哀しい結論だけでないのが救いでしょうか。


 

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