年金改革法案は5年間の時限立法なので、抜本改革をするなら5年以内に以下の問題を解決しなければならない。これは、老後の生活を「個人が自助努力で全てカバーする」のか「政府が保証するのか」という根本問題にも関わってくる恐れがあるため、党利党略にすべきではなく与野党の早急な合議が必要。
(それが三党合意だったんだが、選挙を控えた民主党によって一方的に反故にされ、選挙後に反故にしてないと言い出された)
抜本改革にはいくつかの方向性があるが、現在議案となっているのは主に以下の通り。
現在の年金制度のままでは、年金財源を支える「現役の年金保険支払者」と、年金保障を受け取る「引退した老人」の構成比が従来の想定から崩れる(すでに崩れている)、年金支払者より年金受取者の人数が増大している。
このため、従来の年金制度を維持するなら、以下の対策が必要となる。
小泉内閣の年金改革法(公明案)は抜本改革をしない前提で、(1)(3)(4)の方向を考慮している。(2)の社会保険庁改革もすでに着手中。
現役・若年人口が増えず、年金保険負担額がこれ以上増やせず、現在の年金徴収方法が徹底できないとしたら、消費税などのように「個人の経済行為(物品の購入)」に上乗せする形で自動的に徴収できる消費税に、年金財源の特定目的を持たせる必要がある。
ただし、現在の年金支払い補償額を維持するためには、3%程度の消費税ではとても足りない。
問題点は以下の通り。
現行の年金制度は職種業態の違いや必要補償額の違い(生活程度の差)から、それぞれ個別に発展した複数の複雑な制度の集合体になっている。これを一元化することでシンプルにすれば、年金管理もスムーズになり無駄が省ける、という考えがある。
しかし、年金一元化のためには全ての納税者が確実に納税していることを把握するための制度としての「納税者番号」が必要になる。これは、納税者に識別番号を振って個人情報を管理する国民総背番号制の一種で、基本的なシステムや運用方法は住基ネットと同様類似のものになる。
住基ネットについては、個人情報の漏洩問題、プライバシーの完全な保護が難しいなどの理由から未だに導入を拒否している自治体もあり、またマスコミ報道各社も「プライバシー」を楯に導入を問題視していた経緯がある。
年金一元化のための納税者番号制度は、住所情報などの住基ネット以上に収入などプライバシーに関わる情報を扱うことになる。
今のところ、年金一元化に伴う納税者番号制度について、住基ネットを叩いてきたマスコミはだんまりを決め込んでいる。
現行の年金制度の問題点は、「収入(年金負担者)が少ないのに、支出(年金受取者)が多い」という点にあるが、一元化が行われた場合にも年金負担額と年金支払い水準の問題は残る。
年金以外にも複数の社会保障が存在するが(例えば国民健康保険など)、年金に限って消費税を導入するという方法は認められるのか? 財源確保が難しく、徴収の手間も省けるということであれば、国民健康保険も消費税財源にしてしまえばいいではないか、という議論が起きないとも限らない。社保と国保を二元化せずに一元化するべきだ、という話も出てこないとも限らない。
年金だけを特別扱いすることで、連鎖的にこうした社会保障の見直し(=年金を前例とする)が進むと、重税社会ができてしまわないか?
これまでにすでに支払われてきた、または現在プールされている年金はどう扱われるべきか?
払い込みすぎの支払者には返還するのか?
また、一元化された場合、職種業態によって異なってきた負担額の差額を支払わなければ規定額は支払われなくなるのか?
民主党が仮に年金改革法廃案を通した場合、上記の全ての懸念を解決した画期的法案を年内に審議可決成立させ、来年からすぐに施行しなければ国民年金には年間5000億〜4兆の損失が出ていくことになるが、その会期日程では物理的に不可能。
やっぱり、これを短期間で解決するのは無理でしょ・・・