■約束
作家さんて、初期の頃の本の方が好きだったりしませんか? もちろん文章や構成はどんどんこなれて上手くなっていくのだと思うのですが、「とにかくこれが書きたい」というパワーとハングリー精神に引き込まれるというか。 というわけで、最近本人の露出ばっか多くてイマイチ当たりのなかった石田さん作品なのですが(笑)・・・これは良かった!! といっても2004年の作品ですが(最近じゃないじゃん) うっかり外で読んでいて、涙ぐみました。 『もういちど、生きよう』 かけがえのないものをなくしても、人はいつか自分の人生に帰るときがくる、さまざまな喪失によって止まってしまった時間が、再び流れ出すときを描く短編集。 優しさや温かみの中にも、皮肉で冷静な目線が垣間見える・・・そんな熱いのにクールな描写が魅力だと思う石田さんですが、この作品は「優しさ」の部分がより多く注ぎ込まれている気がします。 喪失の悲しみ・痛みが淡々と描かれながらも、最後には救いが有り癒される気がしました。 とにかく、表題作『約束』が凄かった。 池田小学校の事件をきっかけに書かれた作品で、掛けられた想いが文面からにじみ出るようでした。 きらきらと輝くような描写があるからこそ、そこから落ちる影が余りに切ない。眼の奧がじんとして、ずっと胸が締め付けられるような思いで読み終わりました。 物語自体に起伏があるわけではない・・・けれど、作者の感受性がダイレクトに伝わってきて事件の痛ましさ、悲しさに自然と思いが馳せられます。 どうか、こんな事が二度と起きないように。 子供達の未来が奪われることがないように。 傷ついた心が、少しでも癒されて人生を過ごしていますように。 自己満足でもそう祈ってしまう一冊でした。 2005.11.10 記 | ||
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