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■薄紅天女

4198506884薄紅天女
荻原 規子 佐竹 美保
徳間書店 2005-11-18

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「東」の国板東で、双子のように育った阿高(あたか)と、同じ年の叔父藤太(とうた)。片時も離れることのない二人だったが、藤太が恋うる相手を見つけたことでその関係に変化が現れる。
折しもその時、訪れた蝦夷たちが阿高を自分達の国へと誘った。阿高の母は、強い力を持った彼らの巫女だったのだ。
自分の居場所を求め、北へと向かう阿高。
藤太とその仲間は、阿高を求める都人・坂上田村麻呂と共に阿高を追う。

一方、遷都したばかりの都には物の怪が現れ、皇の一族を死の影が覆っていた。
「東から勾玉を持った天女が来て、滅びゆく都を救ってくれる」病んだ兄皇子の語りに胸を痛める皇女・苑上(そのえ)は、女だからと都から遠ざけられたくはない。何かをしたいと思い詰める。
東から来るのは『救いではなく災厄』だと知った苑上は、少年の姿をとって男装の麗人・藤原仲成に協力することになるが・・・?

勾玉がもたらすのは、救いなのか災いなのか。
自分の居場所を、生きる意味を求める阿高と苑上が出会ったとき、彼らはそこに何を見出すのか。
勾玉三部作、完結です。


今作も夢中で読み進みました。
神々の時代から、桓武帝の時代へ。
なじみのある人物や歴史事件も出てきて「お!」とほくそ笑んでしまいそう。

前2作は、主人公二人の「相手を恋しく思う気持ち」が物語を動かす原動力になっていったのに対し、今作は「自分の居場所・生き方」を求めてあがく二人の最後の救いが「恋」になっているイメージ。

なので、驚くほど後半になるまで阿高と苑上は出会いません。

第一部は正に、阿高と藤太の物語。
この藤太がね!明るくて気の良い魅力的な青年なのですよ!!
仲間二人も含め、『白鳥異伝』の菅流達を思い出す。
阿高と藤太の絆、互いを思いやる思いが伝わってきて一部だけでも大きな盛り上がりを見せていました。

がらりと雰囲気が変わって第二部の主人公は皇女苑上。
よく考えると『お姫様』なヒロインは初めてなのですが、全く違和感を感じないほどこの子も「強い」女の子です。
ともすれば鼻につきそうな気の強さや世間知らずな面が、外に出て気丈さ・素直さという美徳に転じていく様は読んでいて爽快でした。
いいですねぇ「とりかえばや物語」(笑)
女の子に扮した弟くんもこれまた可愛らしいのです。

二人の出会いは、あらすじを読むと『運命的な恋』なのかと思いましたが、どちらかというと「なんだろうこの人」という手探りな状態から始まります。
というよりは、二人とも自分のことで精一杯なのですね。

むしろ阿高の両親の出会いが、全てを狂わせた『運命的な恋』でした。
『恋う』は『乞う』
時の天皇は、天女を乞わずに人を遣わせただ待っていた。力ずくで奪おうとした。だから天女は来なかった。

しかし苑上は阿高に乞うた。
都へ来て欲しい。私たちを助けて欲しいと頼んだ。
それがきっと、あの結末につながったのだと思います。
『恋うる思い』が全てをつなぎとめ、未来を紡いだ。

ハッピーエンドで良かったですねぇv
「風神秘沙」読みたい!とりあえず図書館ですかねこれは。

2005.11.30 記

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