■ナ・バ・テア
スカイ・クロラシリーズ第二弾。 推理小説のシリーズの方がイマイチ肌に合わなかったと以前にも言った気がしますが(というより、『新本格』系?の推理小説はほとんど肌に合わない気がする・・・)『スカイ・クロラ』は面白いと思いました。 前作が『キルドレ』という存在自体の謎が物語の核になっているのに比べ、今作はその謎は明らかになっているというのが前提。 スカイ・クロラにも登場するある人物が主人公で、時間軸としては過去ですね。 「ああ、そうつながるのか!」 と思わず膝を叩いてしまいます。 読んでいる途中は、もう続き読まなくて良いかなぁと思ったのですが、読み終わったらやはり続きを買ってしまいそうだと思った(笑) 推理小説というよりは純文学系です。 藤原伊織で言うと『ダックスフントのワープ』のような。 淡々としていて、透明で真っ直ぐに痛いというか・・・突き放したような孤独さを感じる文章。 個人的に『共感』は全くしないのですが、「すごい!!」と思いました。この人にしか書けないだろう・・・書かずにはいられないんだろうなという文章でした。 中学生くらいの純粋で繊細な頃に読んだら、ぐさぐさと突き刺さって傷ついて、でも癒されそうな気がする。 希望を見せるというより、孤独に寄り添うようなイメージです。 アオリの文章に出ているように、主人公のクサナギにとって空は人間の手の入っていない綺麗な場所。自分が上手く呼吸をできる場所。そのまま死んでしまっても良いと思える場所。 けれど、自分が生きるのは空ではないとわかってもいるんですよね・・・クサナギの未来の姿を思うと、それが一層感慨深い。 ただ、クサナギが『海に墜ちて死ぬのは嫌だ』と思った時に「ああ、自分とは違うんだな」と明確に思いました。 私だったら、空で死ぬなんて怖くて絶対に無理です。どこにもいなくなってしまいそうじゃないですか?? 海に墜ちたら、なんとかなりそうな気がするんですよね。 ショックが和らいで、漂流してたら誰か助けてくれそうだというか(笑) というより、そういう夢良く見てました。 仮に死ぬとしても、海に沈んで魚のエサになった方がいいッス個人的に。 クサナギはそれが気持ち悪いんでしょうね。 確かに海は人間の手も入って、ありとあらゆる『汚れたもの』を注ぎ込まれているかもしれないけれど・・・それを受け止めて拡散して、浄化すらしてしまう懐の深さを感じる。 荻原規子さんの本で『水に流す』の語源が出てきたときには大きく頷いてしまいました。 この感じ方の違い、男女の差もあるかもしれませんね。 ひたすらに空を見上げ、焦がれ続ける永遠の少年達の物語という気がする。 実際読んでみると、もっと生々しくてリアルですが。 森さんのエッセイとか読んでみたいなぁとふと思った作品でした。 2006.02.18 記 | ||||
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