■胡蝶の鏡著者 篠田 真由美 / 出版社 講談社 <あらすじ> 建築探偵・桜井京介シリーズの第三部開始作。 今回の舞台はヴェトナム。一人異国に嫁いだ日本人女性が、突然子供を残し失踪。 女性の夫とその弟にはどうやら複雑な関係が・・・さらにその祖父は子供の頃、日本人青年の自殺を目撃していて!? 奇妙な縁からこの事件に巻き込まれ、ヴェトナムに飛ぶ京介と深春。 数十年前の日本人青年の死は本当に自殺なのか? なぜ愛する子供を残し、女性は消えたのか? 絡み合う人間模様の中に潜む、愛憎の綾。 謎に迫る・・・というより、そっと織りなされた綾を解いていくイメージでした。 <感想>反転にてネタバレ有り 個人的には2部に入って以降で一番面白かった。 やっぱり、適度に現実離れしていて耽美な方が安心して読めますね。別世界と思って読めるので。 篠田さん作品はこういう雰囲気が合っている気がして好きです。素直に面白いと思いました。 トリックというほどのトリックはなくミステリ要素より人間模様の方が強いのですが、すっきりまとまっていて切なさの中に希望が残る余韻が良かった。 以下、ネタばれは反転しています。 弟が義姉に横恋慕しているのかと思いきや、<兄に愛憎入り混じった執着を抱いていて、夫婦を破綻させ兄を取り戻そうとしていた>というのは、篠田さんらしくて思わず納得。 『遠いようで本当は近い』ヴェトナムの悲劇によって翻弄されるひとつの家族の姿が切ない。 しかし、その中にも<祖父は過去を浄化し、兄夫婦は新しい生活へと踏み出す>という清々しさのあるラスト。そして、<弟が絶望のどん底にいるところ、敵対していた日本人女性が押しかけ女房する>というオチも、驚くものの納得のいく流れで、明るい終わり方でした。 また、このシリーズは10年近く年月が経っていて、キャラが成長していくのが特徴です。 蒼はまたひとつ大きな転機を迎えました。 京介は、シリーズのラストめがけて何か起こしそうな不穏な雰囲気。 ・・・なにをする気なんだ京介〜!!!(泣) やはり、続きが出たら気になって買ってしまうシリーズです。 2005.xx.xx 記 |
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