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■風神秘抄

4198620164風神秘抄
荻原 規子
徳間書店 2005-05-21

坂東武者の家に生まれた十六歳の草十郎は、腕は立つものの人とまじわることが苦手で、一人野山で笛を吹く。
草十郎の笛は人前では鳴らない、鳴らせない。共鳴する笛の音を知るのは、ただ集まる鳥達のみだった。

時は平安末期、草十郎は平治の乱に源氏方として加わり、源氏の御曹司、義平を将として慕う。この人にならばついていける・・・と。
しかし、敗走し京から落ち延びる途中で、草十郎は義平の弟頼朝を助けて、一行から脱落する。そして草十郎が再び京に足を踏み入れた時には、義平は、獄門に首をさらされていた。

絶望したそのとき、草十郎は、六条河原で死者の魂鎮めの舞を舞う少女、糸世に目を奪われる。彼女の舞には、不思議な力があった。
引き寄せられるように、自分も笛を吹き始める草十郎。
舞と笛は初めて出会い、光り輝く花吹雪がそそぎ、二人は互いに惹かれあう。

だが、その場に、死者の魂を送り生者の運命をも変えうる強大な力が生じたことを、真に理解したのは糸世だけだった。

ともに生きられる道をさぐる草十郎と糸世。二人の特異な力に気づき、自分の寿命を延ばすために利用しようとする時の上皇後白河。一方草十郎は、自分には笛の力だけでなく、「鳥の王」と言葉を交わすことができる異能が備わっていることに気づくが・・・

勾玉シリーズの続編・・・と言っても本作だけで楽しめます。
シリーズ未読、手を出そうか迷っているわ〜という方にもお勧めの一冊。

少年と少女の出会いと育まれる絆、そして愛。
少年の笛の音と少女の舞が一体となって花吹雪が舞うシーンは、この世のものとは思えぬ美しさで心奪われました。
和製ファンタジーの香りの中で、ボーイミーツガールの醍醐味を存分に味わえます。

草十郎が、武芸の鍛錬をするシーンを読んだ時「これって踊りに通じるものがあるなぁ・・・」と思ったのですが、あとがきによると宮本武蔵の『五輪の書』で能と剣術の足の運びが似ているとの言及があるそうで、『武術』と『芸能』が巧みに絡み合っている描写が興味深かったです。
自分の身体の中にまっすぐあるものを感じる。芯を意識する。
立ち方ひとつとっても、なんとも清涼感を感じます。

『武』と『芸』の力の対比は、後白河上皇の存在も絡めて全編を通して語られている気がします。
草十郎自身の心も剣から笛へと惹かれていき、何のために戦っているのかという迷いから脱して糸世と共に在る為にどうすればよいのかを求めていきます。
草十郎が最後に選んだ力とはなんだったのか?は読んでからのお楽しみということで。

勾玉3部作を読んでいるとにやりとするシーンもちらほら。
特に鳥彦王の登場はたまらなかったです!!
草十郎と鳥彦王の関わりも微笑ましく、とっても愛おしくて見応えありでした。

蛇足ですが、PS2ゲーム遙かなる時空の中で3がお好きな方はちょっとにやにやしながら本作を読めると思います。
もしくは、本作が好きな方には騙されたと思ってこのゲームをプレイしてみて欲しい(笑)


2006.06.08 記

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