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■福音の少年

著者  あさの あつこ/ 出版社  角川書店


福音の少年
あさの/あつこ〔著〕

あさのあつこ、凄すぎる・・・・
完全敗北を宣言したいです。 バッテリーで一気に名を広めたあさのあつこ。
その面白さは今更わたしが語るまでもなく、読んだその日から虜になりました。
続いて読んだNo.6 #1も危険な程の面白さ。

しかし、初のモダン・ミステリー透明な旅路とは意外とさらりと読めてしまったので、今回はどうなのかな〜?と期待半分・不安半分でした。

そして読み終わった後・・・・
あさのあつこ、凄すぎる・・・・
に戻るのでした(笑)

話の内容としては、『全焼したアパートで死んだ少女の同級生が、その死の謎に迫っていく。』というものなんですが・・・・はっきり言って、それはあらすじではあるけれど主軸ではない。

少女自身とその幼なじみの少年、そして少女の恋人である少年の『心の闇』を描くこと。そちらがテーマなんだろうと思いました。

『心の闇』と言っても、それは犯罪の匂いのする退廃的なものではなく、もっと根本的なところ。それこそが二人の少年を、独特の魅力で彩るもの。

匂い立つような色香の漂う、それでいてはっとするような鋭い文章に思わず引き込まれます。

ミステリ・サスペンス作品としてはどうか。という意見も聞きますが、ラストを読んでこの物語の主軸はそこではなかった。まさに二人の少年(+少女)の話なんだな・・・そしてそれは確信犯なんだろうなーと納得するに至って、ぶわーっと感動が広がりました。完璧な構成だ。

以下、ネタバレこみ感想なので(アーンドちょっぴり女性向け発言ですので)読んでない方はご注意!






とにもかくにも、二人の少年の魅力が凄まじいわけであります。

明帆と陽。
自分の中の埋められない闇の存在を知っている。そして、お互いがそれを抱えていることを知っているからこそ、知りたいと思い・反発し・惹かれ合う二人。
ってもう、それだけでどっきどきですよ!!
陽の声の描写がまた、「どんな美声なの?」と妄想が膨らむ膨らむ。

んで、どっちが『福音の少年』なわけ?
とはやはり思うわけです。

おそらく、藍子にとっての明帆・陽、明帆とっての陽、陽にとっての明帆すべて含まれていつんだろうな・・・と思うのですが、やはり一番イメージを担っているのは陽かな、と。

図書館で聖書を読んでいる姿も、明帆が聖書の言葉を借りて陽を糾弾する場面でもイメージを背負っているのは陽。

しかし、極めつけはラストですよ!!

「明帆!」 ああ美しい声だ。 あの声で呼ばれると、詩的という意味が理解できる。 いい名前だったんだ。とても。 闇に巻きこまれないために、知らなければならないことが、まだ、たくさんあるのだ。


「詩的でいい名前」だと言われてもなんの感慨も浮かばなかった自分の名。そして空虚な自分自身。
それを、今初めて認めることができる。
自分を闇から引き戻す、救いの音。
福音に満ちた、彼の声。

って、なんなんですかあんたたちーー!!!!(大興奮)
いやもう、ぞくぞくしましたよ・・・・。

というわけで、闇に呑まれなかった明帆。
これはこれとして完璧に収束したひとつの物語だと思います。個人的に。

しかしながら、同じ世界観の続きを読みたいなーと思うのも事実。
秋庭も殺し屋さんも気になるし!!
明帆と陽がもっと心を許しあっていちゃいちゃしてるところも見たいし。

いやもう、普通に読んでも面白いんですが正直、腐ったお姉さん方にもとってもオススメする一冊です(笑)


2005.xx.xx 記

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