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■コッペリア

コッペリア コッペリア
加納 朋子 (2006/07/12)
講談社

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恋をした相手は人形だった。
作者は如月まゆら。だが、人形はエキセントリックな天才作家自らの手で破壊されてしまう。
修復を進める僕の目の前に、人形に生き写しの女優・聖が現れた。
まゆらドールと女優が競演を果たすとき、僕らは・・・?



久々に大きな本屋に行ったら見かけたので即購入。
い、いつの間に出ていたんだ・・・!?
ハードカバー未読です。
こういうことがあるから、たまには本屋をぶらぶらしなきゃいかんなぁと思いますよ。

・・・とても面白かった!当たりだ!!

上記の解説や『恋をした相手は、人形だった』というオビから、耽美だったり倒錯的なイメージが湧きますが、読み終わるとそうでもない。
決して『人形愛』ではなくあくまでも『人間』の物語であり、加納さんらしい優しさが根底に流れていて最後まで安心して読めました。

・・・というより、加納さん作品はほとんど読んでいるのですが所謂「外れ」だと思ったことがない。感性が合うのでしょうか。

私が感想を書いているのは
『螺旋階段のアリス』
『虹の家のアリス』
のみなのですが、

代表作(だと思う)『ななつのこ』『ガラスの麒麟』は文句なくオススメです。

個人的には『ななつのこ』続編である『魔法飛行』や、少し恋愛要素が強めな『掌の中の小鳥』も大好きでした。

なんだか加納朋子紹介になってきてしまいましたが、以下内容についてもう少し詳しい感想です。

***

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人形のような美貌と人を惹き付ける強烈なオーラを持ちながら、過去の生い立ちに縛られて『吹けば飛ぶような』小さな劇団で女優をする聖。

同じく不幸な生い立ちから、人に愛情を抱けず人形に惹き付けられる了。

この二人の視点が入れ替わり、時系列も前後するので「一体これは『誰』のこと?」「これはどういう意味なんだろう?」と軽く混乱しながらも話に引き込まれていきます。

ミステリを読む人なら誰しもそうだと思うのですが、やはりミスリードや伏線が『ある』のはわかるので気になるのですよね。
男だと思っていたら女なんじゃないか。老人だと思っていたら子どもなんじゃないか。人形だと思っていたら人なんじゃないか。
「謎を解くぞ!」とか「騙されないぞ!」という気はないのに「これってこうじゃない?」と考えながら読んでしまう(笑)
そんな無意識の『探り』を見事にかわされて予想を裏切られた時がまた爽快なわけで。

結論から言うと、中盤でわかる一番重要な部分で見事に騙されました私は。
「そういうことか!」と一気にわかってスッキリするというよりはむしろ「え?え?じゃあ、あの描写はどっちのことだったの??」と思わず読み返してしまった。

その後読み進めるにつれて自分の記憶が組み直され、感じていた違和感が解消され、謎も主人公達の心も『解放』に向かって収束していく様はとても加納さんらしくて感動。

内容を詳しく書くと読む楽しみがなくなってしまう、なかなか難しい作品なのですが・・・

窓辺に座る人形・コッペリア。
それを作った人形師。
人形に恋をする青年。
青年の婚約者。

それぞれの役割を担うのは誰なのか?

本当に人形だったのは誰?
人形に恋してしまったのは誰?


それがするりするりと入れ替わるのに翻弄されながらも、最後は優しさに満ちていて爽快な読後感で読み終わりました。

自動人形(オートマタ)は愛を知る。

届かない愛情の切なさを描きながら、やはり『人は変わることができる』希望を残すところが加納さんらしくて私は好きな一作でした。
(この誰々らしいって読んだことない人には何の役にも立たない表現ですねそういえば)

・・・余談ですが、元々本屋に行ったのが『プライド』を買いに行く為だったせいか登場人物が一条ゆかり絵で脳内変換されてました(笑)
漫画化されても違和感がない雰囲気があったのですよね・・・って、そうするとミスリード無理なんですが。
「ガラスの仮面」も出てきましたしね!
舞台で動かない人形の役ときたら、そりゃあ北島マヤしか思い浮かばなかった(^^ゞ
アニメ少女だったという加納さんの意外な過去に深く納得。


2006.08.24 記

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