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■ブラック・ベルベット 神が見棄てた土地と黒き聖女


4086005433ブラック・ベルベット―神が見棄てた土地と黒き聖女
須賀 しのぶ

ブラック・ベルベット―病める真珠が愛した司祭 ブラック・ベルベット―緑を継ぐ者と海へ還る少女 虚剣 流血女神伝 喪の女王 (1) 暗き神の鎖〈後編〉―流血女神伝

by G-Tools
story 須賀しのぶ /illust 梶原にき /集英社コバルト文庫 

<キル・ゾーン>や<流血女神伝>シリーズの作者・須賀さんの新シリーズ。
女神伝が佳境に入ったところで新シリーズ!?と不安になりましたが、読んで安心しました。
さすが、面白い。このシリーズはこのシリーズでとても楽しみになりました。
女神伝も「終わらない」なんてことはないだろうという安心感があります。
時間がかかっても、ラストは良いものが読みたいですしねv
さて、あらすじです。

◇あらすじ
戦争で荒れ果てた無法地帯・・・『バレン』。
たとえ友人でも、恋人でも、最後の警戒は怠ってはいけない。それがバレンのルール。
そこで働くロキシーの前に、ある夜、全身黒ずくめの美少女が現れる。
彼女の名はキリ。バレンをひとり旅するキリは、ハルという神父を探していた。
なぜ?という問いに彼女は答えない。
ただ、類稀な戦闘能力をもって次々と近辺のキメラを狩り賞金を稼いでいく。
キメラとは先の大戦で無理やり肉体改変を受け自我を失った人間のなれの果て。
しかしまた、キメラを狩るハンターも自らの肉体を強化し、常に自分が狩られる側になる危険を抱えている。
やがて、キリの尋常ではない力に、彼女が虐殺を繰り返す「三大賞金首」のひとつではないかという噂が流れはじめ・・・。
という話。

宗教も絡んできます。神父というと清らか〜なイメージですが、この世界の宗教・力が教義なので神父=鍛えられた強い人。
つまり、神父と戦うということはものすっごい強い人と戦うということです(笑)


◇以下ネタバレ多少込み感想








とにかく、三人娘の掛け合いが楽しい!
クールビューティーと思いきや意外と世間知らずで微妙にズレているキリ。
ズバズバ言いたいことを言う、明るい性格のロキシー。
超少女趣味・天然おっとりのファナ。
このノリ・・・好きな人は大好きだと思います。
とても須賀さんらしい、思わず笑ってしまうテンポの良い会話が魅力。

しかし、三人の境遇が決して幸せなものではなく、考えることも綺麗なことだけではないところに、 思わず共感したり、じんときたりもしてしまいます。
反転(超ネタバレ) ロキシー=ドラッカー・ノワールだということには全然気がつかなかったので、その辺りで泣きそうになりました。 ブラック・ベルベットを出すシーンや『それでも・・・ああ、思い切り泣くことはなんて気持ちが良いのだろう』も良かった。
さらに、場面が目に浮かぶような軽快なアクション。
随所に織り込まれた、嫌味にならないメッセージ性。
楽しんでさくさく読み進められる、とってもオススメの作品です。

では、恒例(?)いいとこ抜き出し本文。

「きれいよ」
「きれい?」
「全ての色がすごくはっきりしてる。空の青さも、モーテルの緑の壁も、黄色い土も。きれいだわ。」
キリは言う。こんな絵を見たことがあると。彼の描く青は誰にも描けない独特の色だと。
「地上には存在しない天上の青(ヘヴンリー・ブルー)だって。彼はきっと、ここの空を見たのね」

天上の青(ヘヴンリー・ブルー)。
ごく自然に、その言葉がキリの笑顔に重なった。
全身全霊で彼女の背中に美しい黒真珠と天上の青を彫ってみせよう。
ロキシーはそう心に誓った。

「軽蔑した?わたしのこと」
「いいえ。でも、わからない。力で人を自由にしようとするやつなんかに、従う必要なんてないのに。」
「キリ。ファナの気持ちもわかってやりなよ。誰もがあんたみたいに強いわけじゃない」
それでも、ロキシーは夢を見た。天上の青に彩られた、束の間の自由な夢を。

・・・未来への希望があるということが、どれほど人を輝かせるのか。
ほんの一歩踏み出してみようと決意することが、どれほど人を変えるのか。
それを、まのあたりにした気分だった。

読み終えたとき、彼女たちを見下ろす天上の青が目に浮かぶような、すっきりとしたカタルシスのある読後感。
まだまだ残された謎も盛りだくさんで、続きが気になるシリーズです。

2005.xx.xx 記

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