■青空の卵・子羊の巣新人作家のデビュー作とは思えない程の出来です。 加納朋子が好きな方におすすめ。優しい視点の、日常の謎を追う連作推理短編集。 装丁もソフトカバーで優しい風合い、マグリットを思わせるとても綺麗なものでした。 ・ ・ ・ 一番注目される設定は、探偵役・鳥井真一が「ひきこもり」ということでしょうか。 とは言え、無理をすれば外に出ることは可能。ただ、外界との接触をできる限り避けたい。そして、唯一外界とつながる窓が主人公の「僕」坂木司なのですね。 「僕」の話を聞き、「僕」に引っ張られ嫌々外出し、そこで出会った謎を解決しながら次第に接触していく人間が増えていく。 次第に世界が広がっていく鳥井と、自分だけに心を開く鳥井に離れて欲しくないと逆に寄りかかる坂木。 この二人の絆が半端でなく強い。んで、一緒に泣いちゃったりする(笑)ので、先に読んだ友人は「ちょっと引いた」と言っておりました。 私はそうでもなかったですね。あ、BL好きだからじゃないっすよ!! 二人が自分達の異常性も理解していて、それでもお互いを一番に思いやっているから、これはこれで良いよな。と切ない温かさを感じたのです。 そして、いずれ卵から羽化してそれぞれ並び飛んでいくんだろうなーという展望があるので安心感もあります。 加えて、一編ごとに魅力的な登場人物が増えていき、その後も継続して話に絡んでくるのが面白い。 他の『謎』に絡んでくるというより、主人公達の世界の『輪』の中に入ってそこに生きているという感じがリアルにする。 だからこそ、謎が解ける度に鳥井の世界が広がる感じがするのですねきっと。 『謎』を解くというより、人の心の綾を解く。 優しい視点で解かれるどこか切ない物語は、私たちの心もそっとほぐしてくれる気がします。 表紙も美しく、とても良い一冊でした。 特に、女性心理の描写は秀逸!!『切れない糸』のOLさんを見ても思ったのですが・・・・これって男性に書けるのかしら?? 鳥井と坂木の綺麗で優しいイメージといい、本文を読むと女性作家としか思えないのですが、対談を読むと男性とも思えたり。ううむ。 (坂木司さんは初期の北村氏と同じく覆面作家です) でも、ミステリアスな部分があると思わず興味を持ってしまいますよね♪ 余談ですが、鳥井が料理の達人・全国の銘菓を食べるのが趣味ということで、本文中にはおいしそ〜うな『食』の描写が目白押し!! うわー・・・私もお友達になってご相伴に預かりたい・・・。・゚゚・(>_<)・゚゚・。 読み終わった後に、絶対何か食べたくなっていると思います(笑) 私はもう、冷えた白ワインか日本酒でつるっと生牡蠣を頂きたくて仕方なくなりました。うう・・・季節がもうちょっと!! レシピ集が欲しいくらいだ・・・ 2005.xx.xx 記 |
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