■虹の家のアリス加納 朋子著 脱サラ探偵仁木順平と、鋭い洞察力を持つ美少女安梨沙のコンビが活躍するアリスシリーズ第二弾。 前作『螺旋階段のアリス』の感想はこちらからどうぞ♪ 前回のテーマが『夫婦』なら今回は『家族』(タイトルの全てに『家』がついています)ということで、素敵な仁木一家の人々もでてきます。娘さんも息子さんも非常に魅力的。 お父さんお父さんしている順平さんにときめきますv 余談ですが、順平さんのイメージは俳優だと役所広司さん。声だと一条和也さん〜♪ 「家は家族を写す、この上なく正確な鏡」 というのにはドキリとさせられました。自分の家はどうだったかしら・・・?ついつい思いを馳せてしまいます。 アリスこと安梨沙の方も、『頭が良くて可愛らしい』イメージから、強かさを身につけた大人の女性へと、ひとつ殻を破り変化していきます。 「変わったのじゃない。偽るのをやめただけ」 清々しい彼女の言葉に、私の中でもぱちりと何かが弾けた気分になりました。 これで終わりというのは勿体ない気もしますが、安梨沙自身については過去を乗り越え、『まさにこれから』という未来を感じさせる終わり方で良かったなぁと思います。 *** さて、中身の方に少し触れますと・・・ 読んでいて面白かったのは『猫の家のアリス』。 アガサ・クリスティーの「ABC殺人事件」を連想させる連続殺猫事件が起こるのですが、見所は一人の女性を巡る恋のさや当て(笑) ほのぼのと苦い思いのどちらも一緒にやってくるラストでした。 思い切り騙されてぐさりときたのが『鏡の家のアリス』。 題材が日常で起こる事件で謎解きが主眼ではないのですが、これは完璧に最後でひっくり返されてしまいました。 それが、決してミステリらしい『トリック・ミスリード』のせいではない。私自身の『想い・先入観』をつかれたせいなのが痛かったですね。 女性にしか書けないよなぁ・・・と思うお話でした。 順平さんが一緒に落ち込んでくれるので救われます。 その他のお話も、新たに加わった安梨沙の伯母の『主婦道』教室のメンバーが各所に出てきたり、安梨沙の内面の様子が少しずつ露わになったりと、根底でつながっていて一冊の本としてまとまっています。 『高価な宝石がなくなるより、一匹の犬がいなくなる方が大事件になることだってある』 それぞれ違う価値観を持つからこそ、その人にとっての『事件』も違う。ミステリという形をとって加納さんが掬い取るのは、その人の『想いの織りなす複雑な彩』なのだろうなぁと思いました。 *その他解説等についての余談 この『本格ミステリーマスターズ』シリーズ・・・恩田陸『夏の名残の薔薇』もそうだったのですが、巻末に付く解説に著者インタビュー・著書リスト(もちろん出版元のみならず全著作)がかなりのボリュームで面白い。 加納朋子論「つながることへの信頼」はかなり本格的で、思わず唸ってしまいました。特に『手紙』の記述は目から鱗。 北村薫氏の影響を公言されているそうですが、これらから今読んでいる坂木 司が思い浮かびます。 坂木さんも北村氏について言及していますし、『手紙とメール』の温度や距離感の違いも本編にて出てきますし。 『似ている』というわけでもないのですよね。 ただ、影響を受けてそれぞれ個性的な作品が生まれるというのは素晴らしいなと思う。 北村薫が好きなら加納朋子も、加納朋子が好きなら坂木司もオススメですよ〜!! また、インタビューはアニメ少女だったという意外な著者の姿に思わず共感でした(笑) 2005.xx.xx 記 |
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