■6ステイン著者 福井晴敏 / 出版社 講談社福井 晴敏著 全てに防衛庁情報局の絡む、6編の短編小説集。 「国家とは?組織とは?そして今自分がここにいることの意味とは?」 相変わらずの熱い福井節が効きつつ、短編なので話が締まっていて読みやすい。 一編一編も余韻があって面白いですが、短編同士につながりがあったり「亡国のイージス」を読んでいる方は歓喜する人物が登場したりと、一冊でとても満足できる作品でした。 以下、内容を簡単に説明。 * * * 「いまできる最善のこと」 在野での成功を手にした、元防衛庁情報局職員。 過去のしがらみから命を狙われる彼の中に生まれた「いまできる最善のこと」とは? 「畳算」 その手紙の中の女性に抱いた憧憬の念が、今の自分を変える気がした。 元ソビエトのエス=スパイだった男の遺した負の遺産を探す現役防衛庁情報局職員の話。 「サクラ」 代役でウォッチ(監視役)に入った情報局職員と、女子高生と見紛う若さのAP(警補官)。 二人が一瞬ではあるが親子の情にも似た思いを交わす中、様々な陣営の思惑を乗せて事態は動き出す。 「媽媽」 一番好きな話です。買い物をして休んでいる時に読んだのですが、うっかり喫茶店でうるうるしてしまいました。 夫は自分を「お母さん」と呼ぶ。周囲の人は「根岸さんの奥さん」と呼ぶ。『自分』という存在が日々薄まっていく・・・ノイローゼという泥沼に浸かり込んだ由美子は、職場に復帰した。すなわち、防衛庁情報局という特殊な環境に。 海賊シンジゲート摘発の鍵・ユイを追う由美子達は、意外なほどあっさりと彼の身を確保する。 彼は清廉な目で由美子に言った。 「母親は家へ帰れ」 彼の言葉の意味を知るとき、由美子は母であることの重さと尊さを受け止める。 『媽媽』とは、中国語で「お母さん」の意。 ユイと由美子の対話が泣けました・・・。 ユイは由美子に母親を見、由美子はユイに子を見るわけですが、そこに一筋・男女としての情愛もかいま見えるのがたまらず良い!! それでいて、夫の言葉もじーんとくるのですよね。 福井作品にしては珍しい、女性主人公の話。 手出しするのをためらっている女性の方にぜひぜひ読んでいただきたい一編でしたv 「断ち切る」 前作、「媽媽」と微妙につながっています。67歳元スリのお話。 これまたちょっぴり出てくる恋心が温かい。 「920を待ちながら」 防衛庁情報局で伝説のごとく語られる『920』と呼ばれるスナイパー(狙撃手)がいた。 突然招集された任務中に起こる異変。果たして920は敵か味方か!? 過去を抱えた男が主人公。何が真実なのか、二転三転する展開にドキドキハラハラ。 『組織・システムの欺瞞と人としての誇り』について考えさせられます。 そして「亡国のイージス」のあの人も登場!?ページ数も一番多く読み応えがありました。 C-blossomという少女漫画に話がつながっています。 全てに共通するのが、自分の命を危険に曝すほど追いつめられた状態で何を選ぶか?何を守ろうとするか?というところ。 必然的にアクションシーン有り。流血も少々有りですのでご注意をば。 大満足、面白い一冊でした!! |
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