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★リトルバスターズ!SS部屋★

リトルバスターズ!のSSを掲載していきます。

  28   『鈴との日々』(鈴 後日談)
更新日時:
2007/09/25 
 
「なぁ、理樹」
「どうしたの、鈴。改まって」
 
「あたしたちって…繋がってたよな」
「…繋がってた?」
「そうだ」
 
 それは、記憶とも違う、何か感覚として残っているもの。憶えているもの。
 …鈴と過ごした日々。他のみんながいない、ふたりで過ごした日々を。
 
 
『鈴との日々』
 
 
「なぁ、理樹」
「どうしたの? 鈴」
 
「あたしたちは、何か大切なことを忘れてないか?」
「大切なこと?」
「そうだ。なんか…とても大切なことだ」
「大切なこと…ねえ」
 
 ふと、鈴と目を合わせて考える。思い出そうとする。
 
 …鈴は可愛い。
 
 ちょっとツリ目なところとか、活動的な鈴に合わせて動くポニーテール、鈴(すず)。
 そんな外見だけでも、挙げればキリが無いくらいだというのに。
 こうやってふたりきりでいるときには、今までとは全然違う表情もしてくれるし。
 意識してなかった頃には見えなかったものが、今になってすごく魅力的に映るようになってた。
 
「しかも、理樹とあたし。ふたりだけのことだ」
「僕と、鈴の、ふたりだけのこと?」
「そうだ。さすがは理樹だな。あたしの思ってること、ぜんぶお見通しだ」
 
 それじゃ全部、自分で言ったことを自分で納得しているだけだよ、鈴。
 
 うーん、と考えてみる。
 何だろう?
 リトルバスターズのメンバーはみんな揃っている。
 と言うか、鈴の言葉からすると、別にみんなは関係ないみたいだ。
 
「なにっ。実はあたしの言ってること、全然わかっていないのか?!」
「…もちろんわかってるよ」
 
 そう。わかってる。
 痛いほどわかってる…。
 
「僕と…鈴が恋人同士だってことだろ?」
「ぅ…。そうだ」
 
 自分で言っておきながら、歯切れの悪すぎる返事。
 …まだ、鈴にはわからないのかもしれない。
 
 でも、僕はもうわかってしまっているんだ。
 恋ってものがどんなかを。
 目の前にいる女の子に対しての感情を。
 
 
 
 
---------
 
 
 
「僕と…鈴が恋人同士だってことだろ?」
「ぅ…。そうだ」
 
 消えそうな声でそうこたえた。
 でも、そんなのでバカ彼氏は満足してくれなくて、
 
「え? 鈴、聴こえなかったよ。もう一回言ってみて」
 
 ハイキックをお見舞いしてもいいのか?
 …良いわけ無い。
 あたしの彼氏は…蹴られ慣れてなんかいないし、蹴ったことも無いし。
今まで蹴るようなことを言ったことも無かったし。
それに、蹴られていいのは…、
 
「おまえじゃ、ぼけーっ!」
「ふごぁっっ」
 
 真人が吹っ飛んでいた。
 
「わけわかんねーよっ。ってか、俺そこにいたのかよっ!!」
「鈴っ」
 
 その言葉で我に還る。
 
「あっ…。つい、悪い」
 
「悪い、で済むのかよっ! な。理樹」
「ほら、鈴。ごめんは?」
「…ごめん」
「うん、そうだね。真人、鈴もそう言ってることだし」
「おっ。素直じゃねえか」
 
 バカの機嫌はすぐに直った。
 なら話は早いと思う。
 
「さっさと消えろっ」
 
 どかっ。
 
「ここ、俺の教室のはずなんですけどねっ!!」
「まあまあ、真人」
 
 時々この2人は、あたしにはわからないような行動をする。
 ここでフォローする彼氏の行動がよくわからない。
 あやしい関係なんじゃないかとキモくなることだってある。
 
「運動場で筋肉カーニバルがあるらしいよ」
「ま、マジかよ?!」
「うん。湧き上がる筋肉の隆起に『ヒャッホーウッ』って歓喜してるらしいよ」
「おっしゃーぁっ!! 燃えてきたぜーっ!!
 ありがとよ!! 理樹ッ!!
 筋肉カーニバル、ヒャッホーウッ!!」
 
 そういうと、筋肉バカはあっという間に姿を消した。
 
 
 
「お。お前ら。まだここにいたのか」
「あ、バカ2号。っていうか、スーパーバカ」
 
 また出た。バカ2号が。
 
「はっはっは。スーパーバカとは心外だな」
「あ、謙吾。真人が『筋肉カーニバル、ヒャッホーウッ』って出て行ったよ」
「…なにっ?! 何時だ。何分前だ?!」
「つい1分前くらいだと思うけど?」
「それならまだ間に合うな…。すまんな、理樹。
 
 筋肉カーニバル、ヒャッホーウッ!!」
 
 出て行った…。
 本当にバカだ。
 スーパーバカってのも間違ってない。
 前からあんなんだったか?
 もう…よく思い出せない。
 
 
 
 
「ふぅ。これで、また2人っきりだね」
「あ…」
 
 そうか。
 理樹はあたしと2人っきりになりたくて、バカどもを追い出したんだ。
 あやしい関係とか、キモくなるとか、考えたあたしが恥ずかしかった。
 
「ごめん、理樹」
「何が?」
 
 どこまでもあたしを受け入れてくれる。
 あたしの全部をわかってくれてる。
 
「なんでもない」
「?」
 
 ちょっと鈍感だけど。
 
 
 
 
「…どうしたらいい?」
「どうしたら…って?」
「あのな…。もう少し、恋人らしくするためには、だ」
 
 うーん、と理樹はうなった。
 そんでひらめいたようだ。
 
「じゃあさ。お互いの気持ちを伝えてみよう」
「おたがい? のきもち?」
「うん。僕が鈴のことをどう想ってるか。鈴が僕のことをどう想ってるか。
 それを口に出して伝えるんだ」
 
 …?
 それが恋人らしいのか?
 よくわからないけど、理樹がそういうならそうなんだろう。
 
「うん、わかった」
 
 あたしは受けることにした。
 
「僕は鈴のこと、好きだよ」
「うん。あたしも」
「…何?」
 
 彼氏には伝わらなかったらしい。
 
「うう…」
「僕のこと、嫌い?」
「そんなことないっ。そんなこと…」
「じゃあ、何?」
「う…」
 
 いえない。なんで?
 
「す…」
「す?」
「すいか割りっ」
 
 ずるぅっ。
 思いっきりずっこけていた。
 
 前なら言えたことば。
 『好きだ』
 ってことば。
 
 今は…すんなりと口から出てこない…。
 何で?
 
「な、何ですいか割り?」
「な、なんとなく、だ」
 
 もやもやする。
 前はすごくかんたんに言えたんだ。
 でも、なんでだろう?
 いまは、気安くいえない。
 
 そうやって迷っていると、彼氏はすっとあたしのほうに近づいてきて、
 
 ぎゅっ。
 
 抱きしめられた。
 
 ぼーっとする。
 あたまの中が真っ白になる。
 それは…ぜんぜん嫌な感じがしない。
 むしろ、すごく好きな感じだ。
 
 あ…そうか。
 好きなんだ。
 
 前から、理樹のことは好きだった。
 でもそれは、ともだち…というか、仲間としての「好き」だった。
 いまはもう全然とことんちがう。
 
 こんな間近で理樹に触れたことなんてなかった。
 ぬくもりを肌で感じることなんてなかった。
 においを感じることなんてなかった。
 
 そんなことで好きな感じになるってことは…。
 
「理樹、好きだ」
 
 言えた。
 かんたんなことだった。
 はずかしかったが、彼氏の目を見て言えた。
 言葉と気持ちが同じになったみたいだ。
 
「うん。僕も鈴のこと好きだよ」
 
 そう、まっすぐ目を見て言われた。
 うん。
 ふたりの気持ちはいっしょなんだ。
 
 もっかい、キスしてみた。
 こんどは真っ白にならなかったけど、でもなんだかふわふわした感じだった。
 気持ちよかった。
 理樹のことしか考えられなくなってた。
 
 思ってたよりもたくましくなってた腕とか、
 優しい目とか、
 においとか…。
 
 そっか。
 理樹もたぶんおなじ気持ちだったんだな。
 
 それからも、何回もくりかえししてみた。
 やっぱり気持ちよくて、しあわせな感じがした。
 
-------------
 
「みんな、聞いてくれっ」
 
 胸を張って、女性陣の前に登場する鈴。
 何だか誇らしげだ。
 
「ふえ? どうしたの? りんちゃん」
「なになに〜っ」
「どうかしましたか?」
「?」
「ふむ…」
 
 
「男のつばの味を試してきた」
 
 
「…」
 
 ああ…。何を言い出すのかと思えば…。
 破滅の時が近いことを知ってしまった。
 
「あたしらとおなじ味だ。うん。特に何の味もしなかった」
 
 少しだけほっとした。
 その部分だけなら全然大丈夫だからだ」
 
「んで…直接試してみた」
 
 
 ピキーン。
 
 
 場の空気が凍りついた…気がした。
 
「空を飛んだ感じだった。頭の中が真っ白になって、何も考えられなかった」
 
 そんな空気をたぶん感じてないんだろう。
 ダメを押す感じで彼女は続けた。
 
「で、なんどか試してみた」
「理樹のことが好きだって、何となくわかったんだ。
 理樹に抱きしめられたり、理樹に好きって言われるのとかも、ぜんぶ」
 
 ああ…、もう止まらないらしい。
 まあ、それは僕の気持ちと一緒だったから、今さら否定をする気にもなれなかったけど。
 
 そんなことを堂々と口走っている鈴のことが、もう愛しくてたまらないし。
 
「鈴っ」
 
 ぎゅっ。
 
 我慢できずに抱きしめていた。
 周りの目も忘れて。
 
「あー、ずるいですよー?! 鈴ちゃん」
「本当ですっ。リキの1人占めは許しませんっ」
 
 予想通り(?)の反応。
 
 ああ。日常が戻ってきたんだな、と思った。
 腕の中に鈴がいて、周りにみんながいる。
 当たり前のようで、幸せな光景。
 色んなことがあったけど、今は幸せだって胸を張って言える。
 
 前髪をかき分けて、おでこにそっとキスをした。
 
 ちりん。
 
 たぶん、またここから始まるんだ。
 新たな日常が。
 
 
<終わり>
 
--------------
 
 リトバスSSから入った方、初めまして。
 CLANNADのSSからご存知の方、お久しぶりです(?)。りきおです。
 
 個人的には、純愛系やラブラブ系よりも、シリアスなSSを得意としている…つもりなんですが、どうもラブ系のほうが書きやすかったり。まあ、クリアして間もないので、鈴に対する熱い思いがほどばしったとでも考えてください(ちょっとキモい)。
 
 鈴は凄く好きです。元々、麻枝さんのこういうキャラが好き(真琴とか風子とかね)なのはあるんですが、割と序盤から可愛いオーラが出てしまっているんですよね(妄想)。無防備そうでガードが堅そうなところとか、主人公以外には懐いていないところとかも含めて。
 
 さて、リトルバスターズ!ですが、既にいくつかのSS案を考えていて、おう3分の1くらい書きあがったものも出来てきています。CLANNADほど湧き出てくるものは無いのですが、キャラが立っているのでSS書きとしては書きやすいかもしれません。今のところは鈴と佳奈多くらいしかキャラが動いてくれませんが、美魚とか佐々美とかも自分としては書きやすそうな感じがしてます。小毬さんは難しそうな…。
 あと、野郎ばっかのSSは多分書かないと思います(汗。いや、たぶんですよ? 3人ともキャラが立ちすぎていますし、書きやすそうな感じはしてますので、案があれば書くかもしれませんけど…。
 
 さて、感想とか、あとはリトバスのこのキャラ、こんなSSを書いてほしいなどの要望などがありましたら、
 
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