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チサト:ユカリちゃん、大丈夫・・・この子・・・

ユカリ:・・・・・・

チサト:悪い子じゃない・・・迷ってるだけ・・・

 ミカ:・・・ホントに出た・・・(小声で)チャンス・・・

    チサト、ゆっくりと女の子の方に近づく

チサト:・・・お名前タミコちゃんっていうの?

女の子:うん・・・お姉ちゃん達タミコと遊んでよ・・・

    白い発光体チサトと少女の周りをふわふわと舞う
    チサト、しゃがみこんで女の子と目線の位置を合わせる

チサト:・・・ここで一人で遊んでたの?

女の子:うん、ホタルはいたけど、ここに来れたのは最近なの

チサト:そっか・・・

    少し離れたところから二人を見ているユカリとミカ
    ユカリは少し心配そうな表情をしている

チサト:どうして1人だったの?お父さんとお母さんは?タミコちゃん

女の子:・・・・・・オクニノタメ・・・(下を向いて)

チサト:え・・・?

女の子:タミコの家・・・6人家族だったの・・・(チサトの目を見て)
    最初はみんないたよ!・・・
    でも1番上のお兄ちゃんが居なくなって・・・
    次にお父さん、今度はお姉ちゃんと2番目のお兄ちゃんも

    チサト、女の子の頬をそっとなでる、その方には煤のような汚れが付いている

チサト:さみしかったね・・・タミコちゃん・・・

女の子:うん・・・お母さんと2人で・・・『オクニのため』
    ・・・ってお母さん泣いてた・・・
    でも『いつか帰ってくるから大丈夫』って。
    だからタミコ待ってたよ、でもお母さんもいなくなっちゃった・・・

チサト:お母さんとも離れちゃったの?

女の子:空から飛行機たくさん来たの、
    タミコその時、ミヨちゃんの家で遊んでたの、
    そしたらクウシュウ・・・ミヨちゃんのオバちゃんが逃げなさいって

チサト:・・・そう・・・

    (燃え落ちる街のシーンが一瞬入る)

女の子:火か消えた後、みんなチイキの人は、学校に集まったの・・・
    でもお母さんいなかった・・・オバちゃんダメって言ったけど、
    タミコ1人で家を見に行ったの・・・・・・そしたら何も無いの・・・
    真っ黒なの・・・ワカラナイの・・・
    でもタミコホントに1人になっちゃった事はわかった・・・

チサト:・・・・・・

    チサト女の子の頬をなで続ける

女の子:その日はタミコそこで寝たの・・・
    もしかしたらお母さんが帰ってくるかもしれないと思ったから・・・
    ううんお母さんだけじゃない、お父さんもお兄ちゃん達もお姉ちゃんも、
    ホントにタミコひとりぼっちで泣いてると思ったら帰ってきてくれるかも
    しれないって思ったから・・・でも・・・みんな来なかった・・・

    女の子の瞳からひとつぶ涙がこぼれる。
    チサト、涙を拭おうとするがその涙はチサトの手をすり抜けてしまう
    チサトが涙を拭ってくれようとしてるのに気付き、女の子が急いで涙を自分で拭う

女の子:次の日、学校に1人で戻ろうとしたの・・・
    したら大人の人達がここも危ないって・・・
    またクウシュウ来るって、みんな死んじゃうって・・・
    トラックに色々積んでた・・・
    タミコ怖くなって・・・トラックの荷物の所に隠れたの・・・
    しばらくしたらトラック動き出したの

チサト:・・・うん・・・

女の子:いつまた飛行機が来るか怖くて、タミコずっと目をつぶってたよ・・・
    体がふるえるの・・・小さくなって隠れてた・・・
    時間がたくさんたったよ・・・
    タミコおナカが減ってのども渇いてボーっとしてきた・・・
    そしたら積荷の中に・・・おイモがあったの・・・食べちゃった・・・
    しばらくしてオジちゃんに見つかっちゃって・・・
    知らないオジちゃん怒って・・・タミコおイモ食べたから・・・
    大事なショクリョウだから・・・タミコ山の中で降ろされちゃったの

チサト:・・・・・・

女の子:真っ暗でひとりで、泣いてたら水の音、したの。
    のど渇いてたし、ふらふらしてたから・・・
    少しずつだけど音の方に行ったの、音は川だった・・・
    びっくりしたよ、川明るいの、ホタルたくさん飛んでるの・・・
    タミコの顔とかにも止まって足をカサカサってやるの、
    こそばゆい(女の子嬉しそうに笑う)
    みんなタミコのことジャマに思ってない・・・
    一緒にいてくれる・・・もう淋しくない・・・
    そしたら嬉しくて体が軽くてキツくなくなったよ・・・
    だからタミコずうっとホタルと一緒にいるの

チサト:タミコちゃん・・・

女の子:お姉ちゃんは?
    お姉ちゃんもここにいてくれる?タミコと遊んでくれる?

    チサト、ゆっくりと顔を横に振る

チサト:そうしたいけど・・・それはできないよ、タミコちゃん

女の子:どうして?お姉ちゃん、タミコの事キライなの・・・?

チサト:そんな事無い!・・・でも(ゆっくりと)タミコちゃん・・・
    お母さんにまた会いたくない?

女の子:え・・・

チサト:お父さんににも、お兄ちゃんも、お姉ちゃんも・・・、会いたくない?

女の子:・・・会いたい・・・でも会えないよ・・・

    チサト女の子をそっと抱きしめる

チサト:大丈夫・・・会えるよ・・・
    きっとこのホタル達タミコちゃんの事、好きでずっと待ってるんだよ・・・

女の子:待ってるの?

チサト:うん、タミコちゃんと一緒に、タミコちゃんが家族に会える日を、
    ずっとホタル達待ってるんだよ・・・

女の子:・・・・・・

チサト:(女の子の目を見て)タミコちゃん・・・
    ホタルと一緒に、お父さんやお母さんと会いに行こう

女の子:・・・またひとりぼっちにならない?

チサト:ならないよ・・・みんなと会えるよ・・・ホタルもいっしょに・・・

女の子:ずっと遊べる?

    チサト、うなずいて女の子の手を握る
    女の子、笑う

 ミカ:あ!

    周囲の発光体がどんどん明るくなっていく

女の子:ありがとう・・・お姉ちゃん・・・

    女の子の姿、しだいに薄くなる

女の子:いつかまた、お話してね・・・

チサト:・・・うん・・・またいつか・・・バイバイ・・・

    チサト、小さく手を振る
    女の子の姿、消える
    公園も元の暗さにしだいに戻っていく

チサト:・・・よかった・・・多分、これで・・・

    チサトの元にユカリとミカが歩いてくる

ユカリ:チサト・・・

 ミカ:ひゃーマジモノでしたね・・・今の・・・
    バッチリ!情報つかんじゃった!

ユカリ:・・・(あきれたように)あんたねーフキンシンだよ・・・
    それにあの子もういなくなっちゃったみたいじゃん

 ミカ:ふっふー!甘い!(両手に隠してたカメラを見せる)

ユカリ:写真撮ってたワケ・・・いつの間に・・・

 ミカ:思わぬ所に岸井ミカ(足くねくね)

チサト:あ・・・

    チサト、しゃがみこみ何かを拾う

ユカリ:どうしたの、チサト

チサト:ホタル・・・

 ミカ:あっ!(チサトの手を覗き込む)
    ホタルの死ガイ!(周囲の地面を見渡す)
    ・・・むむぅ・・・他には見当たらない・・・

チサト:きっと、ひとつだけだよ

 ミカ:えー!だってさっきはあんなに光が・・・

チサト:ユカリちゃん、これ埋めて、お花かざってあげよう・・・

ユカリ:・・・そうだね・・・

 ミカ:・・・ふーん(考え込むポーズ)・・・
    まぁそういう事ですか・・・わかりました・・・

    ミカ、花を摘みに画面からひとり出て行く

チサト:ユカリちゃん・・・今夜・・・よかった、私ここに来れて・・・

ユカリ:・・・たまにはミカの話も役に立ったね・・・

チサト:ふふふ・・・そうだね

    ユカリとチサト、少し笑う

ユカリ:ミカには今の事言わないでね、アイツすぐつけあがるから・・・

    ミカ、花を摘んで戻ってくる
    3人、穴を掘ってホタルを埋め、その上に花を飾る
    チサトが静かに手を合わせる、ユカリとミカもそれに続く
    夜空のズーム そのままフレームアウト



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