冷たい鉄の部屋、 閉ざされた鉄の扉に私は爪を立てる。 「開けて…出してぇえっ!! ねぇ! 見てるんでしょお父さぁんッ!! 私人殺しの道具になんかなりたくない!! 私…私………人殺しなんか……!」 指先から血が滲む。訴えても声は返らない。 「……人殺しなんか……もうしたくないよぉ…… 返してよ…出してよおお…………。 ……ゆうちゃんに………逢わせてよお……」 |
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「――――……。 ………今更なんで…」 夢。改造されたばかりの頃。 監禁され、人を殺すことを強要され、 心を壊しかけていた時の夢。 「……でッ。なんでいるんだお前はッ」 「? 今日は休診日だったか?」 「そうじゃなくてどっから入った!」 「正面。無用心にも程があるな」 |
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「仮面ライダー。名の通り、仮面の戦士。 中にはその身体自体を変身させる者もいる。 しかし、例えば始めから… ライダーの姿でいる者、ヒトの姿が機械の 体を隠す変身だとしたら、それは 仮面ライダーなのだろうか。 それとも、機械だ、と言うべきなのか。 戦闘用人型ロボット、試作機。 BR−0M…」 |
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「ドクター…遅くにごめんなさい… ごめんなさい 私…… どうしても押さえ切れないんです ドクターに頂いた薬でも どうしても押さえ切れなくて…… 頭の中で誰かが人を殺せ、殺せって… このままじゃ彼を… 好きな人を殺しちゃう… だから……もう…………私…… 殺すことにしたんです……私を… 一番ふさわしい方法で……」 |
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「うわあああっ! 怪人だぁっ!!」 「ハァ……ハァ……フーッ…… コナイ……マダ……ッ コナイ…… …………!!」 「……そこまでだ」 「キタ……ナ……ライダァッ…… ワタシト……タタカエ……タタカエ!!」 |
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「遅かったな」 「……なんでだ?」 「なんで?」 「その娘はまだ人間だった。 怪人の細胞さえ抑えれば、それで済む」 「ああ、知っている。 だがそれが解決策になるか?」 「……! でも、だけど……! あんた人間を守るんじゃなかったのか!?」 「ああ、だが救うことは出来ん」 |
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「待てよ、話はまだッ……!」 「人を守る事が俺の仕事だ。 そして――人を救うのが、お前の仕事だ」 「……え?」 「う……ぁ…」 「!? い、生きてる……のか? なんで」 「急いでくれ。まだ間に合うはずだ」 |
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「BR−0M。 その右腕は、ナノマシンで構成されている。 これは自己修復用の為ではなく、 怪人細胞抗体生成用としてある。 細胞変異型の怪人の血液を戦闘中に 右腕より体内に採取。 数分で抗体を作り出し、再び右腕から 相手に打ち込むことで『人間を守る』。 しかしそれは、 警戒されることなどから 相手を傷つけず行為を起こすことは困難で、 幾度となく、守れるはずの右手で 命を奪ってきてしまった――」 |
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「よう、ライダー」 「……どうだった」 「……。成功。 んで、お前の右手のおかげで 怪人細胞も抑えられたみたいだな。 もうあの娘は普通の人間ってわけだ」 「……そうか」 「……」 「……」 |
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「あのさ……。 んー…助かった。 医者として…あいや、 あたし自身として、礼を言うよ」 「礼を言うのは俺の方だ。 お前がいなければ、 また救えなかったかもしれん」 「……はは。 あんたが笑ったところ、はじめて見た」 「……その言葉、そのまま返すぞ」 「……バロン。仮面ライダーバロン、か。 ……ありがとね」 |