ウェブサイト構築のヒント集 > 「Quarkの作った世界観 DTPデザイズム」
Quark とは Quark社開発の "QuarkXPress" というソフトウェアであり、 現在の DTP業務の礎を築いた始祖ともいえる存在であります。 現代の書籍レイアウトには欠かせぬアプリケーション。 私もちょっと、興味本位でかじったコトがあります(Macintosh で)。
mm単位の精密な配置機能、複雑な段組を可能とする優れた視認性、製作者の直感に対応する操作性、 容易にカスタマイズできるパターン化能力など優れたポテンシャルを有した サラブレッドであると認めざるを得ません。 似たようなものを作ろうとすれば、それは模倣に次ぐ模倣を重ねただけのチャチな類似品となるでしょう。
まあ、そんなコトはこの際、どうだっていいのですがチョット思うところがあるワケです。 "HOMEPAGE BUILDER"(ホームページ・ビルダー)やら、 "Dreamweaver"(ドリーム・ウィーバー)なんていうウェブ作成ソフト(オーサリング・ツール)は 大いに "QuarkXPress" の影響を受けているようです。
いや、むしろ、"QuarkXPress" の機能をウェブ作成に移植したかのような気もします。 しかし、このプロジェクトに無理はなかったのでしょうか? いや、ありますよ。
"QuarkXPress" を立ち上げたときにまず行う作業はページ設定です。A4 だ B5 だとページの大きさを設定するところから始めます。 もちろん、このページ・サイズに関する設定は途中で変更するコトはありません。 サイズ変更を前提としていないのは、書籍を構成する紙が特定のサイズにカットされた物質だからですよ。 また、フォントに関しても詳細な設定を行ないます。 写真のキャプションなどでは 8pt や 6pt も頻出します。
一方、ウェブの方は特にこれといった大きさを持ちません。 '04年の情勢として、小さい解像度で「800*600px」、一般的なものとして「1024*768」、大きなものでは「1280*1024」、 非常識なものとしては「1856*1392」すらあります。 ちなみにこれらは最大幅であり、実際には若干小さなウィンドウ・サイズで閲覧しているでしょう。 どのくらいのウィンドウ・サイズで皆さんがインターネッツをやっているかは分からないワケです。 さらにはフォント・サイズも可変的なので、状況はさらに複雑です。
言葉どおりにあらゆる状況を想定するコトは事実上不可能ですが、ある程度は流動性を持たせるべきでしょう。
"QuarkXPress" のウェブ版など作れるワケがないと考える。 なぜなら、ウェブにおけるサイズの概念は極めて曖昧だからです。 しかし、"HOMEPAGE BUILDER" や "Dreamweaver" が使い物にならないかというと、そんなことはないでしょう。 あくまで "QuarkXPress" の基本概念の流用はできないと考えるだけです。
しかし、何で紙媒体とウェブにおける構図がこんなにも噛み合わないのか? いろいろ書いてみましたが、 パソコンのディスプレイが横長であるところが大きいのかもしれません。 一行が横に長すぎる文章は読みにくい。これは日本語も英語も問わず、でしょう。 どう考えても縦長のディスプレイの方が文章は読みやすいし、レイアウトもしやすいハズです。
パソコンのディスプレイが横長であるという現実は、テレビ画面の横長から発生していると思われます。 テレビ画面が横長なのは、映画の影響でしょうか? それは、分かりませんが横長の方が風景を収めるのに向いているからでしょう。 写真を撮るとき、風景(シーン)を収めるなら横長、ポートレート(人物画)なら縦長です。 人間の視野が横長なのは、眼球が左右に並んでいるからでしょうが、 横長の画面というものは生理的にもナチュラルな感じがしてシックリときます。
やがて、人間は文字を発明しました。 欧州の言語は横書きであり、東洋の言語は縦書きでした。 おそらく近代に至るまで縦書き文化の国では、書簡は横長の形態だったと思われます。 そう、巻物のように。
やがて活版印刷によって西洋風の本の形態が定着すると、 縦書き文化圏においても縦長の書簡が普及しました。 文字は広く一般市民に浸透するようになり、文字は縦長のページに収められるように落ち着きました。 日本語は脅威の適応力を発揮して、西洋風に横書きするコトも可能となりました。
文字を主体として発達した紙媒体(縦長)と、 絵画・写真・映画などの画像形態から派生したテレビ画面。 もともとパソコンのディスプレイが絵的な概念から由来した横長であるワケですから、 文字との相性がいいハズがありません。 文字を横長画面で表示させようにも無理がありまっせ。 だから、ウェブのレイアウトは難しい。