remove
powerd by nog twitter


『モーニング帝国編 【序章】』


王国に現れたのはガキ、エリチン、レイニャ、サユ・・・と誰もが予想もしていなかった訪問客であった 
食卓の騎士達も他の一般兵達みなが帝国が攻めてきたのだと思い緊張が走った 
だがしかしおかしな事がいくつかあったのだ 
それはなんとガキ達はたった4人で王国にやってきた事 
そしてもう一つは敵地だと言うのに決して剣を抜かず、戦おうとする意思が全く見えない事だ 
しかしいくらガキ達に戦う意思が見えないとは言え一般兵にとってこの4人と対峙するのはとても荷が重い 
門番的な役割を果たす兵士達も不甲斐なくもこの4人が城へと入っていくのをただ黙って見逃すしか出来なかったのだ 
「食卓の騎士の方々申し訳ありません・・・我々には・・・あの4人へと斬りかかる度胸がありません・・」 
病室へと一報を伝えに来た兵士は涙をボロボロ流しながら食卓の騎士達に謝る 
確かにガキ、エリチン、レイニャ、サユの4人と同じ空間に居るというだけでも十分息がつまってしまう 
もし4人に切りかかったらそれが最期、1秒も満たない短い時間で殺されてしまうだろう 
それを十二分の理解していたシミハムはその一般兵を元気付ける 
「君の行動は正解だよ、ここは大人しく彼らを通して僕達を呼ぶべきなんだ 
 たぶんあの4人相手なら王国の一般兵全員がかかっても倒されてしまうかもしれない 
 例え城内に通したとしても決して恥じゃないよ、もう泣かないで」 
マイミもすくっと立ち上がり病室内の全員に向けて言葉を発する(もう頭痛も治りかけ) 
「何故その4人が来たのか全くわからないが・・・剣を抜かない所を見ると何か考えがあるようだな 
 そもそもたった4人で王国に勝てるとは向こうも本気で思ってないだろう、話し合いでもするつもりか?」 
その結果シミハム、マイミ、モモコ、ウメサンの4人でガキ達が待つ応接間へと向かう事にした 
この4人なら戦闘力で帝国の4人に劣る事はない、そして話し合いの場合も団長副団長である4人がいけばスムーズに話が進む 
他の食卓の騎士達は万が一のために武器を用意し戦闘の準備を始めていた 


マーサー王国の応接間 
その室内に近隣諸国の中でも最も優秀であろう8人の戦士が空間を共にする事となった 
ベリーズ戦士団のシミハム団長、モモコ副団長、キュート戦士団のマイミ団長、ウメサン副団長 
そしてモーニング帝国剣士団のガキ団長、ロッキー三銃士のエリチン、レイニャ、サユと言った豪華な顔ぶれだ 
部屋に入りしばらくの間は両者にらみ合いが続いた 
中でもレイニャの眼光はとても鋭く今にも目の前の敵を殺しそうなほどの警戒心を放っている 
エリチンもさっきから明らかにモモコの方ばかりをチラチラと見ている、よっぽど気にしているのだろう 
しかしこの睨みあいの続く空気の中でサユだけは自分の愛剣であるレイピア「アルデンテ」に写る自分の顔とにらめっこをしていた 
睨みと沈黙ばかりが続く中、ガキがようやく話を切り出し始める 
「エリチンの馬鹿が言いふらしたらしいからもう既に知っているのだろう?帝国が攻め入る事を」 
王国側にピリリとした緊張が走る、エリチンが言うだけなら信憑性は低かったがこう実際ガキが言うと真実をつきつけられた気分になる 
この先に待ち構えている決して避けられぬ戦いを想像すると緊張もしてしまう 
「知ってる・・・けどまさかこんなに早く攻めて来るとは思わなかったよ」 
そのシミハムの言葉を聞いたガキはふるふると首を振った、エリチンとサユはなんだかクスクスと笑っている 
「今日は攻めに来た訳ではない、宣戦布告しに来たのだ 
 そちらもゴタゴタしているようだから1ヵ月後でどうだろうか?1ヵ月後にあの時と同じ平野で戦おうではないか 
 まさかわざわざ宣戦布告しに来た者にNOと言えるわけはあるまい?・・・」 
シミハムはガキの言葉にドキリとした 
そしてやられたと心の底から痛感したのだ 
この状況、戦争を断る事も出来ないし4人をこの場で倒す事も出来ない 
正々堂々と宣戦布告にしに来た者に対してそのような無礼な行動を取れば近隣諸国から孤立してしまうのは必至だ 
この戦争、受け入れる以外道は無くなってしまった 

「伝えるべき事は全て伝え終えた、1ヵ月後を楽しみにしてるぞ」 
そう言い残しガキ達4人は部屋を後にし出口へと歩いていった 
いくら攻めに来たのでは無いとは言え停戦状態にある国の将が城内で大手を振り歩く姿は異例だ 
城内の全ての兵が出来る事ならこの4人を捕らえたいと思ったが絶望的な実力の差がそれを許さない 
そんな中エリチンがさきほどから抱いていた素朴な疑問をガキに投げかけた 
「ところでガキさ・・・ガキ団長、なんで一ヶ月も猶予を与えちゃうんですか?さっきチラっと見たけど結構怪我人多いみたいでしたよ」 
だがガキはしばらく黙ったままでエリチンの疑問には答えなかった 
エリチンはまたガキ団長が自分の失態に怒っているのだと思いおっかなびっくりだったが城を一歩出ると同時にガキが口を開いた 
「そんな重要な事を敵の本拠地で聞くんじゃない!」 
ポカリとエリチンの頭を殴りつけるガキ、これがなかなか結構痛い 
「いたぁぁぁぁい・・・」 
エリチンは頭を抱えその場にうずくまる 
「でもガキさ・・・ガキ団長、私もそれは疑問に思ってました、攻めるなら今ではないのですか?」 
「宿命の敵を目の前にして黙ってるのは正直つらいっちゃね、こんなのなら来なければよかったと 
 出来れば今からでもさっきの部屋に戻ってズッタズタのギッタギタにしてやりたいけん」 
エリチンと同様の疑問を抱いていたサユとレイニャもガキにどんどん質問と不満を投げかける 
ロッキー三銃士は基本好戦的なため団長副団長クラスと対峙する事で更に戦闘意欲が燃え上がってしまったのだ 
だがガキは3人が戦闘に飢えているのもお見通しと言った感じでこう答える 
「1ヶ月だ、1ヶ月経てばコハルとアイカが帝国剣士としての修行を完全に終える 
 あの2人が全ての課程を修めればお前たちどころか私さえも上回る実力を手に入れるだろう 
 今のままでは勝率は5割なんだ、もっともっと勝率をあげる必要がある」 


「1ヶ月・・・」 
再度病室に集結した食卓の騎士達に緊張が走る 
いつ敵の襲撃が来ても良いように覚悟と準備はしっかりとしていたので戦いの期が伸びた事は内心嬉しかった 
しかし伸びたとは言えたった1ヵ月後、それまでにすべき課題は多すぎる 
リカチャンやメロニアとの戦いで負った傷はその日までに完治させるのがまず必須条件だ 
ウメサンやマイマイ、ナカサキ達はそれまでには治るだろうがミヤビの大怪我はどう見積もっても完治は難しい 
元々怪我により切断された顎と胸を補強するためにあてられた金属を折られてしまったので傷が深いのだ 
もし気合で無理矢理戦場に向かったとしても戦力になれるかどうかは微妙な所だ 
なのでミヤビは誰よりも深く肩を落としていた 
他の戦士達も今現在の己の実力に不安を感じている者が多数なので残り少ないタイムリミットに焦りを感じている 
特にモモコ一人にコテンパンにやられてしまったオカールとアイリ 
メロニア戦で手も足も出ず全く役に立てなかったマイマイ 
そしてここリカチャン襲来の時もメロニア戦の時も「誰一人倒す事の出来なかった」ナカサキが特に実力不足を感じていた 
今の自分の実力に大満足と言えばサトタを手に入れたクマイチャンくらいだろう 
「私は絶対負けないよ!この1ヶ月でサトタをもっと上手く使いこなせるようにいっぱい練習するんだ!」 
確かに扱いの難しいサトタを手懐け扱いこなす事が出来れば敵を一網打尽できるに違いない 
力強い意気込みを聞いたチナミが何かを思い出したようにクマイチャンに告げる 
「ところでクマイチャン、サトタで思い出したんだけどこの前調べた時にどっかの国で失踪した騎士もサトタに乗ってたらしいよ 
 とっても強くてその国のヒーローだったらしいけどものすっごく性格がひねくれてる人だったんだって 
 もしかしたらそいつって今はミキティの手下になってるかもね・・・その時はクマイチャンお願いね!」 

「そうだ皆、準備や特訓も必要だけどそれ以上に知るべき事はちゃんと知っておかなくちゃいけないよ」 
時間が無いと焦り病室を出て各々の準備をしようとする食卓の騎士達を見てウメサンが呼び止める 
ウメサンが言うには知りうる限りの敵の情報を交換しあう事でより有利に戦闘をしようと言う事だ 
確かにほとんどの食卓の騎士達は当時未熟だったため早くに戦線離脱してしまい敵の扱う武器や戦闘スタイルを把握していなかった 
このまま立ち向かっても100%の力を出す事は出来ない、知るという事は何よりも強力な武器だ 
「私とマイミとシミハムとモモコなら大戦の結末を知ってるからね、覚えてる事は出来るだけ多く伝えるからちゃんと聞いてね」 
そう言うと4人はその場にいる全員に向けて大戦の顛末を語り始めた 



モーニング帝国編 【第零章〜大戦〜】
TOP