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漢を磨け!俺の単発修行日記 ーサイクロン号と危険のにおいー

report : Guy [NKD SCIENTIFIC RESEARCH]

「梨本塾」というイベントに参加して来ました。このイベントは、国際A級ライダーである梨本圭氏が講師となり、毎月最終日曜日に茨城県土浦のミニサーキットで開催されてる(されてないこともある)走行会です。内容的にはスクール形式ではなく、ほとんどフリー走行なんですが、梨本氏や数名いるスタッフが適宜アドバイスしてくれる、といった感じです。ですんで、あんまり堅苦しいことはなしで、とにかくグルグル廻るのを楽しもうといった雰囲気のものです。(詳しくは梨本氏のサイトで。左上の方に塾のリンクがある。音鳴るから注意

とても楽しく、走りの技術も向上して満足でした。しかし世の常として、楽しいことは、苦難の果てにこそあるのです。では、私の体験談をば、どんぞ。


2001年10月1X日。

 ジョニーより1通のメールが届いた。ジョニーと言うのは、学生の頃からの友人でミレニアムファルコン号(GSX-R1300 隼)という凄まじいバイクに乗っている漢だ。どのぐらい凄まじいかというと、ミレニアムファルコン号には、超技術「亜空間ドライブ装置*1)」が付いているというぐらいだ。
 こいつはしばしばおいしい話しを持ちかけてくるのだが、
話にのって実際においしかったことはあんまりない。メールの内容は「梨本塾というものに参加することにした。」とだけ書かれており、その下にURLが貼付けてあるのみだった。そのURLのサイトを見ると、どうやらサーキットを走る集いならしい。参加費用は2万円。・・・結構するな。
 しかし、ジョニーとは度重なる漢勝負を闘ってきた間柄だ。前回の西伊豆勝負では旋回性を活かして勝ったが、ここで
奴がコーナリング技術を向上させてしまったら、パワーで劣る我がサイクロン号ではもはや勝つ術はない。この勝負は受けなければならない。として

*1 この装置によって、市販無改造車でありながら確実に時速300kmという最高速を誇る


2001年10月22日。

 梨本塾への参加申し込みは1週間前までにとのこと。今日がその1週間前だが、俺はまだ申し込みをしていなかった。・・・何故か?・・・それは風邪で寝込んでいたからだ。貴重な有給休暇を風邪如きで消費してしまったことに歯軋りしつつ、しかし「まあ、いまのうちに風邪ひいとけば当日は元気間違いなしだろ」と考え参加費の振り込みに向かった・・・。しかも、結果的に申し込みがギリギリになったせいで、週間天気予報で当日の天気を知ることができた。晴れ時々曇りで、雨の心配はなさそうだ。・・・なにせ俺は、いわゆる雨男というやつだからな。天気には人一倍気をつかうようにしているのさ。


2001年10月28日。「梨本塾」参加当日。

 前日の夜、ネットで天気予報を見て俺は愕然とした。明日の予報は雨。MSN天気も、TBS天気予報も、177番さえも、自信満々で雨を予報してやがる。・・・なんてこった。
 そして、当日の朝、まだ雨は降っていない。しかし、いまにも降り出しそうな厚い雲が低く垂れ込めている。しかも、実は風邪が治ってねー。キャンセルしようか・・・しかし、
2万円は既に払ってしまったぞ・・・。だいぶ逡巡したが、取りあえず、行けるとこまで行ってみよう、という良くわからない決断をして出発。とりあえず最寄りのコンビニでカッパを買う。そして一路、土浦へ・・・と思いきや、高速道路に乗ろうとした瞬間に、もう雨が降ってきた。ガッデム・・・!ここで、風邪を悪化させる覚悟で進むべきか?行ったところで付いた頃には濡れ鼠じゃあ、まともに走れないのでは?・・・と様々な思いを胸にちょっと一服。とりあえず、イベントの事務所(と言っても、何故か携帯電話だ)に電話してみると「こっちはまだ降ってないよ」とのこと。
 俺は覚悟を決めた。古来より伝わる言葉にもあるではないか。・・・行きはよいよい帰りは恐い・・・・ってな。それがどういう慰めになるのかは不明だが、まあ、帰りが恐いようなことがあっても人は頑張って生きて来たんだ、という意味だということにしよう。
 そして俺は、中央道、首都高、常磐道を連結するブルジョワルートで土浦に着いた。ただ、ここからの道が、地図があるんだがなんともショボい地図であんまりよくわからん。集合時間までは、道を大幅に間違えなければ間に合うだろうというペースだ。・・・しかし、案の定、俺は道を間違えた。どうやら、国道6号を走行中、曲がるべきところを曲がらなかったらしい。そして、Uターンして、間違えた交差点まで戻る時にアクシデントは起きた。
 (・・・えーと、曲がるのはー、ここではなくてー・・・)などとブツブツ言いながら信号のない交差点に差し掛かった時だ。渋滞の車の隙間から、ぬーっと対向の右折車が!「ドカ。」っとやってしまいました。ジーザス・・・
時間ねーってのにこれからサーキットだってのに事故かよ!ちきしょー!とか思ったものの、ほんとに軽く接触しただけなので、まあ、平気だろうと思ってフロント廻りを見ると・・・泥よけの塗装が5mmほど剥げてる!・・・ってそれだけか?びっくりしたが、相手の車はベッコリ凹んでいるのに、我がサイクロン号は限り無く無傷。SVって頑丈なんだよなあ・・・。
 しかし、あーだこーだと言ってるうちに時間がロスし、結局、15分遅れて会場に到着。・・・ああ、もう皆さんスタンバってらっしゃる!恐縮しながら受け付けてもらったが、「途中で事故ってしまいました」などとバカなことは、ちょっと言えませんでした。
 一応、車検をしてもらう。「フォークまがってるよ」とか言われないかドキドキしたが、無事パスしました。


で、「疾走る」と書いて「はしる」ぜ!

 まず、メンバーを2グループに分けられる。常連さんなどの上級者がAグループ、その他ビギナーなどがBグループだ。俺はもちろんBグループさ!・・・・なにせ、サーキットなど走ったこともないからな。で、AグループとBグループが交互に30分ずつフリー走行だ。空いてる時間は、駐車場にパイロンで作った小さい0字コースで練習するか、休憩かをする。

 Aグループの走行を見ていると、なかなか皆さんイカした疾走りっぷりだ。0字なんて書いてる場合じゃないなこりゃあ。早くオイラも混ぜておくれ〜・・・、と微妙にテンションが上がってきたところで、いよいよAグループのフリー走行が終わり、我々Bグループがコースに入る。・・・ちなみに、この頃には、朝に事故ったことなど足の指に生えてる毛以下にどうでもいいことになっていた。

 周囲を見渡すと、まあ、時代の趨勢というかで、ビッグバイクが多い。一番大きいのは、ジョニーの隼だが、FZS1000とか、YZF-R1とか、俺の好きなヤマハのかっこいいマシンもいるではないか。大型の王道ってことで1100刀や900忍者もいる。400γというレアなマシンで参加してらっしゃる方もいた。他に普通二輪は2台。俺のSV400Sとジョニーの弟くんのNSR250だ。

 バラバラとコースに入って走る。何週かは梨本氏を先頭に一列になって走った。徐々にペースを上げて行き、やがてフリー走行に。しかし、しばらくは頑張り過ぎないようにセーブして行こう。なにせ、こんな環境は未体験ゾーンだからな。

 徐々にペースを上げて行く。なるほど、サーキット走行の経験が豊富な友人からも聞いていたが、確かに峠を走るのとはひと味違う。なにせ、崖に激突、谷に転落、対向車とクラッシュといった不安はないし、路面はすこぶるいいし、見通しもいい。猛烈に走り易い。だがむしろ、それだけに、自分のマシンがコーナリング中にひどく不安定なのがわかる。マシンの限界ではない。俺の乗り方のせいだということはわかるのだが、どうすればいいのかはイマイチわからん。そんな感じでフリー走行が終わると、梨本氏がアドバイスをくれた。曰く、「きみのコーナリングスピードは充分だ。それ以上コーナリング速度をあげるより、進入と脱出を上手くできるようにした方がいい。コーナリング時に不安定なのは、体重移動が足りないからだ。そのスピードでは、もっと体を内側に入れて、膝擦った方がいい。リーンウィズでは、もはや遠心力に負けている」。・・・・膝擦った方がいいんですか!?わざと擦るモノではないと思ってましたが?と思ったら、要は、擦るような気持ちと体勢で走ることが、結局は重心を内側へとずらすことになる、というようなことであった。なるほど。

 で、2回目のフリー走行。アドバイスを私は忠実に守ろうとしました。内側の膝はタンクから離してしまい、大胆に腰を落としてみると・・・・おお!!なるほど!確かに、コーナリング中のフワフワ感が消え、なんか、遠心力と内側にかけた重心とがつり合うような感覚が・・・!これじゃああ!と思って走っていたら、・・・ゾリ・・・ゾリゾリ・・・と膝が地面にあたる。なるほど、これが噂の膝スリスリって奴か・・・。しかし、面白がっていたのも束の間。やがて、俺はある問題に直面した。なんか、膝がヒリヒリしてきたのだ。

 実は、俺は特に膝カップなど付いていない、普通の革パンで走っていたのだ。ストレートに出た際にふと膝に目をやると、・・・おお!?生膝出てる!?しかも血ぃ出てるよ!?・・・まさか、こんな簡単に革が擦り切れてしまうとは思わなんだ・・・。膝が地面に付くと痛い・・・しかし、擦らないようにと意識すれば、変な走りになって安定しない。妙なジレンマを抱えて俺はコースをいったん退場したのだった・・・。

 その後、プラ製のニー&エルボーパッドをレンタルして、3回目のフリー走行。膝が地面についても大丈夫という安心感が加わり、さらに思いきり走れるようになった俺は、ますますペースを上げた。すると、あるコーナーに差し掛かって旋回中、おもむろにリアタイアのグリップを失い、そのまま転倒。いつものことながら、俺は無傷、SVもウィンカーとマフラー以外には大した傷はない。ほんとに丈夫なバイクだ。ATフィールドでもついてんじゃないのか・・・?(懐かしいと思った貴方は少しだけマニアック)。ただ、シフトペダルが折れてしまったのだが、これはスタッフの方がネジとドリルで応急処置をしてくれた。

 転倒の原因は、俺のコーナリング中のアクセルワークの荒さにあるらしい。旋回中に気が急いてどんどんアクセルを開けてしまうのだが、そうすると途中で回り切れなくなってくるため、アクセルを戻す。ゆとりが出るとまた開ける、というコーナリング中にアクセルのオンオフが激しい乗り方のせいで、安定性が損なわれているとのこと。出口まで見て、いざ脱出となるまでは、アクセルは開けたくてもググッと堪えるべしとアドバイスを受けた。

 その後のフリー走行では、あまり熱くなり過ぎないように注意し、スムーズな走りを心掛けるようにした。なるほど、かなり飛ばしているにも関わらず、恐怖感が減ってきたことからも、走りが安定してきたことがわかる。・・・なんか掴めてきちゃったぜ・・・という感じだ。とは言え、まだまだ危なっかしい走りには変わりなく、自分の描く理想?というか目標には及ばない。GPライダーと同じように走るってのは無理とわかるが、せめてこの塾のAグループの参加者のレベルには追いつきたいものだ。

 初めての参加ということもあり、非常にいい修行になった。スタッフの方々にも、朝の(見ていて)おっかない走りに比べると、断然良くなったと言ってもらえたので、確かに腕はあがったと思う。場所が遠いこともあり、諸々含めると結構な出費になるのでそうそういつもは行けないが、ぜひまた参加してみたいものだ。

 そうそう、あと、もうひとつの成果として、どこぞのページでバイクは排気量さえあれば速いわけじゃねえ!腕:マシンは7:3だ!・・・とか息巻いていた私ですが、それは確かだということがわかりました。・・・まあ、速かったのは俺じゃないんだけど。講師である梨本氏は、たまにCB400SFで混ざって走ってたんだが・・・なんじゃそりゃあ!?って速さでした。並みいる大型スーパースポーツをものともしない感じ。マシンの性能を限界以上に引っぱりだしてるような走りは「カッチョええ・・・」って感じだったね。あと、今回の参加者のなかで最速だったR6の人も凄えかっこえかったなあ・・・。俺、R6はすごい好きだし。

・・・・俺も精進しなくては。

追記

 それでジョニーとの漢勝負なんだが・・・・今回は明らかに俺の勝利だ!なにせ、最長のストレートでも120mしかないミニマムサイズのサーキットだ。ここでは「300km/h出せる」などというスペックは無駄以外の何ものでもない・・・。帰り際にジョニーは、自らのマシンに目をやって呟いた。「これでわかったわ・・・。コイツ、まさしく直線番長だ・・・」


後日談

しかし、ジョニーとて我が宿敵。そのまま屁垂れているわけではなかった。奴はその後、3度に渡り連続して梨本塾に参加。確実にその腕に磨きをかけていたのだ。その成果は、Bクラスとは言え1位、2位という輝かしい戦績となっている。梨本氏のサイトでも奴が妙にかっこよく描写されていてムカつく。そして奴は俺に電話でこう言ってのけたのだ・・・「悪いが今やお前は敵じゃない」。キィィィ!!・・・見てやがれ・・・・。次回は俺も参加しよう。ジョニーよ。そのときは、俺だって前回と同じ走りをする気はないってことを、覚えておくんだな・・・・。

続編:「復活の赤い彗星


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★ 梨本塾 2001年10月28日 参加報告
手に入れたもの
  • 技:ハングオン
失ったもの
  • マシン小破
  • 革パンの膝
  • ブーツの小指付近
結論 気合い入れて走るならそれなりの装備を整えましょう。