Reports 今こそ手裏剣の時代
純和製万能ウェポンが現代の技術と融合
手裏剣
The Stainless- Steel
Shuriken
手裏剣。
古来より我が国に伝わる飛び道具の一つである。
手裏剣を投げる際には、力任せに速く投げてはいけない。手首を使い、適切に進行方向への回転を加えることが肝要だ。
手裏剣の威力は、投げられた速さそのものよりも回転力によって決まると言ってよい。
目標に最初の刃がコンタクトした瞬間から、その点を支点に二番目の刃が目標を抉るのだ。
写真は。AD- 2 No. 6017と言われるモデルである。肉厚のステンレス鋼材にマシンカットで刃を付け、表面はヘアライン仕上げとした逸品だ。鋼材の詳細は明かされていないが、NSRの分析結果ではクロームとバナジウム、ニッケル、そして炭素を多めにブレンドし、耐蝕性の確保、そして硬度と粘りの両立を狙ったものではないかと見ている。
中央の穴は、縄など通すことで様々な用途に利用可能。例えば、菜種油を染込ませた木綿紐を巻き付け、着火して投げることによって、「火遁」への応用も可能である。
時代の変化とともに手裏剣も、素材、力学的見地からの細部の形状の見直し等を経て進化してきた。
しかし、手裏剣を使いこなす為にもっとも必要なものが熟練したスキルと遣いどころを誤らない冷静な判断力であることは、現代の手裏剣使いにとってもまったく変わらない。
情報化、過密化、そして市街化による「闇」の消失・・・。現代の隠密たちはその歴史のなかでももっとも任務の遂行が困難な状況に置かれている。そんな彼等だからこそ、道具には、小手先ではない素材からの見直しと熟成という名の進化を求めるのだ。