万葉集から・5
山上憶良
知識人・理屈好き・ロマンチスト・激情家
2004.2.29
憶良について、中学・高校では日本史と古典の時間の両方で習いますが、「貧窮問答歌」と「子等を思ふ歌」ばかりで、当初薀蓄好き爺さんみたいな印象がありました。 それが巻五の雑歌を読んでかなり印象変わりました。 薀蓄好き、引用大好きには変わりないけど、大正時代くらいの小説にでてくるような、世を憂うる、演劇かなんかに凝っちゃって、それで世界革命を夢見てるようなインテリ青年にイメージが重なるところがありました。 |
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とはいえ、詩人の魂を持ってることには変わりないです。 |
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大伴旅人の妻の死に際しての悼亡文と悼亡詩として記された詩文 蓋(けだ)し聞く、四生(ししょう)の起き滅ぶることは、夢の皆空しきが方(ごと)く、 愛河の波浪は己先(すで)に滅(き)え、苦海の煩悩も亦結ぼほることなし。 |
元は漢文。歌ではないので教科書などではお目にかからなかったのだが、全訳注本ではちゃんと出ています。入力するのはやっぱり大変で、部首変換で必死に漢字探し。PCによっては出てこない字もあるんじゃないかな、と思います。 註釈より訳 愛欲の河に波はすでに消え、苦しみの海に煩悩を結ぶ由もない。かねてこの穢土を厭うて来た。今心からの願いを持って浄土にこの生を託そう。 ― 旅人はこれを見てどう思ったんでしょうか。 |
老いて子を失った時の歌、病に苦しむ歌、老人のイメージの歌が多いのですが、私の想像する憶良は、生真面目な、ちょっと融通の利かない青年の心をいつまでも抱えて生きた人です。
あなたのクラスにも、いませんでしたか?理屈っぽくて、ちょっとくどい、でも熱い心の物知りさんが。 |
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表記については 講談社文庫 万葉集 全訳注原文付 から