2002.07.29 エンデュアランス号漂流 暑いです。納涼には南極探検隊 1914年、南極大陸横断を目指したイギリスのシャクルトン探検隊は、南極海の氷に船を失い、極寒の地に孤立する。その後の17ヶ月に及ぶ極限状況を乗り越え、全員が生還するまでを、聞き取り、参加者の日記、記録を駆使して実に緻密に描いている。 1998年にこの本が出て以来、文庫化もされ、シャクルトン探検隊についての別の本もでています。どれでもいいからできるだけたくさんの人に読んで、知ってもらえるといいな、と思っています。 シャクルトン探検隊について最初に知ったのは、天野祐吉さんの面白広告の本「嘘八百」で出会った隊員募集広告。 「求む男子。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。」 シャクルトンはそれまでに2度南極を経験している。アムンゼンとの南極点到達争いに破れ帰路に全滅したスコットとも同行したこともある歴戦の、ひたむきな古典的タイプの冒険家だった。そして何より彼は優れた 解決策のないと思われる状況で頼る事の出来る真のリーダーだった。 密航者1名を含む28名の隊員たちは南極海の氷に船エンデュアランス号を締め上げられ、ついに失う。船を捨て、5ヶ月に及ぶ氷上漂流の後キャンプ地を見つけ、シャクルトン以下6名は助けを求めに小さなボート・ケアード号で南極海へ出る。他のメンバーは何とかキャンプ地で生き延びて助けを待つ。どちらも生存の保証などまるでない。 氷の中をさまよう彼らは生き抜くための闘いの中で驚くべき陽気さと強靭な意志を見せてくれる。 シャクルトンのメンバーの構成の確かさもさることながら、それぞれが状況の中で自身の力を極限まで発揮し、生きるという目的の中で役割を果たしていく。そしてついに全員が無事生還する! この本を読んで、人間の意志と行動する力の起こした奇跡に勇気づけられない人はまずいないのではないか。切り詰めた食事、アザラシや鳥が獲れないときの不安、十分でない衣服など、日常の記述が極地で生き延びることの過酷さを存分に語ってくれる。みんな健康で屈強というわけでなく、シャクルトン自身坐骨神経痛もあり、凍傷で指を失うもの、病気になるものもある。ケアード号で海に出たシャクルトンたちは、苦闘の末何とか陸を見つけたもののテントも寝袋もなしの陸上行を余儀なくされる。困難でない事の何一つない中で、決して前向きであることをやめない彼らに感動せずにはいられない。 著者と訳者はじめ、この本を世に出してくださった皆様に感謝です。
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