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ningyo’s BOOK COLUMN

2004.5.9

嘘・つ・き・映・画・館 シネマほらセット
橋本治
河出書房新社

 この本は、FICTION分類というより、特別ジャンルを設けたいようなものです。
 「こんな映画があったら…」「あの人がこんな役をやったら…」という映画好きの妄想はままありますが、それででっち上げた架空映画が、そのまま映画論・俳優論にもなっております。監督・キャストばっかりではございません。脚本・撮影・音楽・製作・配給と設定は詳細にわたり、もう腸がよじれそうになるほど楽しめます。

 全編嘘だらけ、と銘打ってはおりますものの、「へえ〜っ」というような本当のことが、嘘と織り交ぜられております。眉に唾つけつつも、辞書やら、関連書籍やら検索やらでそれを発見するのもまた一興かと。

 この本については、くだくだ私見を申し上げるより、本文からさわりをご紹介するのが一番なんでございます。

「ブロードウェイの弥次喜多娘」 1992/米 (元ネタ ひばり・チエミの弥次喜多道中)
 監督 ドン・シーゲル  脚本 レスリー・ディクソン 撮影 デイヴィッド・ウォルシュ
 出演 ベット・ミドラー ウーピー・ゴールドバーグ キアヌ・リーヴス

 主演の年増(すいません)2人組が振袖姿で「女がそばにくるとどうしても頬が染まっちゃう、それが年上の女ならなおさらという不思議な」若侍キアヌをめぐって恋の鞘当て!(この本のおかげで「恋愛適齢期」予告見ただけで死ぬほど笑ってしまった。)

「ジム・キャリーのエデンの東」 1998/米  (元ネタ エデンの東)
 監督 テリー・ギリアム  脚本 テリー・ギリアム  撮影 ミヒャエル・バルハウス 
 音楽 ポール・バックマスター 主題歌 レナード・ローゼンマン
 出演 ジム・キャリー モーガン・フリーマン スーザン・サランドン サミュエル・L・ジャクソン サンドラ・ブロック

 父親に愛されたい息子がギャグを連発するが、父親は決して喜んでくれない。母にも棄てられ、父や兄にひたすらギャグと百面相を連発するがまったく受けず、兄の婚約者からは痛ましいような目で見られる。この悲しい親子関係を「12モンキーズ」式のシュールな映像と音楽で描く衝撃作。

 その他にも、

 「ブラピの天下の一大事」(ブラピの一心太助 家光と一人二役 デニス・ホッパーの彦左衛門)
 「バトル・ロワイヤルPTA」(バトロワPTAバージョン)
 「ウディ・アレンの砂漠の踊り子」(元ネタ 伊豆の踊り子 踊り子=アンジョリーナ・ジョリー)
 「ガラスの仮面」(月影先生=キャサリン・ヘプバーン 速水真澄=キアヌ・リーヴス)

 ほら、読みたくて、読みたくてたまらなくなりましたでしょう?

 私は「忍法魔界転生」「くの一忍法帖」(あら、両方とも山田風太郎原作ですな)などのハリウッド・バージョンが最高に楽しかったのですが、なんといってもダントツに見たいのがこれ。

「丹下左膳」 (2000/米)
 監督 バリー・ソネンフェルド
 出演 アントニオ・バンデラス キャサリン・ゼタ・ジョーンズ ジョン・マルコヴィッチ

 うわ〜〜!ニヒルじゃないほうの丹下左膳ですね!あの映画も豪華キャストにくらくらするようでしたが、これはしかし、なんたってキャストが楽しい!
 八代将軍 クリストファー・ウォーケン 隠密元締め F・マーリー・エイブラハム
 柳生対馬守 ニプシー・ラッセル 柳生源三郎 ウィル・スミス(ラップで登場)
 司馬萩乃 ドリューバリモア  司馬道場師範代峰丹波 ジョン・マルコヴィッチ
 チョビ安・ハーレイ・ジョエル・オスメント 巾着切り与吉・スティーヴ・ブシューミ
 そして! 黒襟かけた白地の着物にラテン語のヨハネの黙示録の散らし書き、毛脛の上には赤の蹴出し…の隻眼隻手の怪浪人・丹下左膳=アントニオ・バンデラスが、愛刀濡れツバメを口にくわえて、おっとり刀で登場!
 そのカミさんの櫛巻きお藤にキャサリン・ゼタ・ジョーンズ! 
 きゃあ〜! よっ、ご両人、世界一! 最高!!!

 「この役をあの人が!」「ぴったり〜」「見たい!」と叫びつつ、心ゆくまでお楽しみください。

 

 

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