十二国記
小野不由美著
2002.11.4
十二国記の世界は、 「月の影 影の海」の主人公 高校生中嶋陽子の前にある日突然景麒という金色の髪の男が現われ、陽子を知らない世界に連れ去る。そこで景麒ともはぐれ、陽子は人に追われ、妖獣からも襲われ剣を持って闘いつつ生き延びるしかなくなる。実は陽子は「胎果」という、生まれる前に日本へ流れてしまったこの世界の住人だったのだ・・・ たまたま異世界で生を享けてしまった中嶋陽子が生きる場所を獲得するための苦闘と人間的成長、自分の前にある困難に負けて信頼や優しさをなくすことを許さない心の強さを教える半獣の楽俊など、教養小説としても読みどころはたっぷりあります。 |
12国記既刊 発行順
「魔性の子」を「風の海〜」の後に回して、
発行順で通して読むのがお薦めです
魔性の子 |
月の影 影の海 |
風の海 迷宮の岸 |
東の海神(わだつみ) 西の滄海 |
風の万里 黎明の空 |
図南の翼 |
黄昏の岸 暁の天 |
華胥の幽夢 短編集 (冬栄/乗月/書簡/華胥/帰山) |
講談社文庫/講談社X文庫ホワイトハート 「魔性の子」のみ新潮文庫
私は山田章博氏イラスト付のホワイトハート文庫を買いました
イラストの延王尚隆がもうすこし偉丈夫っぽいと、もっとすてきというのが私の個人的見解です
時系列順のご紹介
東の海神(わだつみ) 西の滄海 |
陽子が景王となるまでに500年間雁国を治める延王(日本での名は小松尚隆)と延麒(えんき)・六太(ろくた)−共に胎果。王となるまでと、その20年ほど後の波乱で妖獣に育てられた更夜と六太の出会いの物語。 |
図南の翼 |
奏は500年、雁は400年一つの王朝が続き安定している。空位のまま荒れてゆく恭国の少女 珠晶はたった一人で、麒麟に天意を諮るための旅に出る。 |
風の海 迷宮の岸 |
麒麟は金の果実として蓬山(ほうざん)の木に実り、そこで育ち、王を選び、仕える。しかし、金の実は蝕(しょく)で流されてしまった。そして10年後、蓬莱(ほうらい)で“人”として育っていた泰麒を、泰麒のために生まれた女妖が連れ戻した。 胎果として日本に生まれ育ち、麒麟としての自分を知らない泰麒。そして泰麒を守る女妖。麒麟を育てる世界。これで十二国記の世界、麒麟と王の関係、また「私たちの世界」のかかわりがくっきりしてきます。 |
冬栄 |
泰麒が王に選んだ驍宗(ぎょうそう)の短い治世の間の出来事。泰麒は漣国に行き、その国のおだやかな王と麒麟と過ごす。「黄昏の岸 暁の天」でその後の戴がわかっていると、登場人物の言動に注目させられます。 |
華胥 |
英明にして清廉な王を得て才の国は希望にわいた。しかしそれから20年、荒廃の止まらぬ国、病んでいく采麟。理想の国の姿を夢に見せてくれるという宝、華胥華朶が王に、麒麟にもたらしたものは何か。 |
月の影 影の海 |
女子高生 中嶋陽子の学校に突然金色の髪の男が現われ、そして見たこともない妖魔に襲われる。わけもわからぬままに、気がつけば見知らぬ世界にただ一人。陽子は、「異世界からやってきた災いを呼ぶ不吉なもの」として追われながら、元の世界に戻る道を探す。逃げ惑い、裏切られ、苦しみつつ旅をする彼女が「何故自分がこの世界に来なければならなかったのか」を知った時、陽子は重大な決断を迫られる。 「始めは、陽子が追われたり、裏切られたりこれでもかこれでもかって苦しいことばかり続いたけど、楽俊と出会ってから読むのが楽になった。読んでいて陽子を応援したくなる。」 ある女子高生の感想。 我らが陽子の登場です。この世界へ来て、赤い髪、翠の瞳という自分の姿に驚き戸惑い、たった一人でどうしたら良いかもわからず逃げ回る前半。楽俊との出会いから自分を見つめ直していく中盤。王である重さに耐えられる自分であるかどうか迷いっぱなしの陽子も迷いながら成長していきます。
陽子を描いてみたかったのですが、陽子のユニセックスでちょっと硬質な魅力はとても力不足で描けません〜(なのになぜ描きたいか・・・趣味の王道 下手の横好きということで見逃してください) |
書簡 |
慶国の王につこうとする陽子と雁の大学に入った楽俊。それぞれ困難を抱えながらも先に進もうとする二人のお互いへ近況を知らせるたよりは・・・ |
風の万里 黎明の空 |
慶国で玉座に就きながらも、ままならぬ国政と自分自身への信頼を持ちきれずに苦悩する陽子。芳国では、王と王后である父母を目前で殺されて、貧しい境遇に落とされた元公主祥瓊。才国には、海客として流れ着き、蔑まれて辛い毎日を送る鈴がいた。少女たちは、苦しみを抱えてそれぞれ旅立つ。 祥瓊、鈴ともにかなり初めは困ったちゃんです。某女子高生の言を借りれば「(鈴は)100年生きて、これかい?」という感想は持ってしまいますが、お話ですから、二人とも今までと違う世界を見て、違う視点でものを見ることを学んでから、むちゃくちゃすごいスピードで成長します。「月の影〜」から読み始めると、陽子はなんと言ってもヒロイン、彼女の成長ぶりが嬉しい。 |
乗月 |
祥瓊の母国芳国。国民の苦しみを見かねて祥瓊の父王を倒した月渓は仮王の地位につくことを逡巡していた。ある日慶国より、王と慶国の官吏となった祥瓊からの書を携えて使いがやってくる。 |
魔性の子 |
十二国記外伝 戴王は行方不明、そして泰麒 −日本名 高里要−は麒麟の力の源である角を傷つけられ、日本に戻ってしまった。泰麒としての記憶も能力も失い、日本で生きるが、そこは本来いるべき場所ではなく、また彼の周りでは不可解で恐ろしい事件が次々と起きる。 |
黄昏の岸 暁の天 |
登極から半年、疾風(はやて)の勢いで戴国を整える泰王驍宗。しかし反乱鎮圧に赴いた先で行方不明。そして台輔泰麒も、逆賊に傷つけられ、消えてしまった。 「風の海 迷宮の岸」で登場した戴国将軍李斎が慶の陽子の許に救いを求めるところから物語は始まる。決して他国へ兵を出してはならない掟のなかで、どうしたら戴を救うことができるか、まだ国内も定まらぬ慶国に、陽子の苦闘が始まる。他国の王、麒麟も続々登場し、この世界がいよいよ広がっていきます。尚隆に対するに「天敵」氾王が出てきたり、お話は深刻ですが楽しい。 |
帰山 |
奏は600年の長きにわたって安定した治世が続き、太子利広は、始終この世界のあちこちを見て回っている。王朝の不安を感じ始めた柳の国で風漢という不思議な顔なじみと出会う。 |
短編がちらほら発表されていますが、長編を切に切に待ってます。 |
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アニメ十二国記
NHKでアニメ化されました。陽子とともに日本から十二国記世界へ飛ばされてしまうオリジナルキャラなどが登場、陽子の立ち位置がわかりやすくなったかとは思いますが、このお話のお約束を決定的に破ってしまうのはなんかなあ…と
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