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三重県四日市尾平ジャスコ冤罪事件

雑記

新潮を読んで
 

2月17日昼過ぎに一人の女性が「泥棒」と叫んだことによって、言われなき罪に問われたおじいさんが釈明する機会も与えられずに亡くなられた。

新井氏がインタビューした、事件当日にジャスコ尾平店に買い物に来ていた主婦Kさんはこう語る「だってね、柔道の山下選手みたいな躯のごつい警官が、おじいちゃんの背中に乗っかかるようにして、膝でぎゅうぎゅうと締め上げているんだもの。がっしりした体格で体重が100キロ近くありそうな警官だったわ。その下で紺色のジャンパーを着たおじいちゃんがつぶされるように”うぅー、うぅー”と喘ぎながら呻っていたけど、表情はとても苦しそうだったわ」

後に警察官のこの制圧行為は、男性が暴れたためと新聞で報道されたが、Kさんが見た限り、男性は暴れるどころか、ぐったりとして身動きひとつしていなかったと言う

また、ATM付近の宝くじ売り場の女性販売員の証言:「ドア越しに、男性が”うー、うー”と呻く声がずっと聞こえていました、時間を測ったわけではないが、20分くらい続いていたと思う」

以前に報道された様に約20分間の制圧、感覚的な誤差を+/-5分としても、少なからずとも15分は不当な制圧によっておじいさんは押さえつけられていたのである。

前述の宝くじ売り場の女性販売員の証言に対し
「時間は感覚的なもんでしょ。わずかな時間でも、長く感じることもあるんじゃないの 証拠保全の観点から、被害者と思われた女性を捜し出すまで(西浦さんを[新潮掲載上の仮名])そのままの状態にする必要があった。男性が死亡したことについては遺憾だが、逃げられてはいけないと思った署員の対応は適切で、逮捕は正当だった。」と副署長は語る

新井氏の制圧中におじいちゃんが嘔吐し、その痕跡を後に駆けつけた署員が発見した、しかし何故制圧をしていた警官がその状況に気付かなかったかの質問に対し、副署長は”そんな細かいことまで把握していない”と困惑したが、思案した後にこう片付けた「それは..現場も混乱していたので気付かなかったのでしょう」

新井氏は続ける「そもそも警官が現場に到着した時点でおじいさんを立ち上がらせ、警備室かパトカーに連れて行き、落ち着かせてから事情聴取するのが筋というべきものだろう。暴れていたとしても、相手は年配者である。まして、若い巨漢の警察官なら無理にでも引っ張って行くことなど造作も無いことではないか。」と。

いくら現場が混乱しているからと言っても眼と鼻の先で不当に制圧されているおじいさんが嘔吐したことにさえ気付かない程人ごみの中で制圧していたのだろうか。推測でしかないが、人の群れは出来たとしてもその警官の周りには多少の空間があり、間違いなく嘔吐したことを目視出来たと思われる。新井氏の言う様に普通 あってしかるべき措置がとられず、その現場では権力を持った者が弱者を痛めつけるという、ただ陰惨としか言い様の無い光景が繰り広げられたのだ

事件後、県警では女性の専従捜査班を南署に設置、防犯カメラの映像を写真にして聞き込み調査を行っている。以前にも掲示板であった様に、捜査員がつかっている2枚の写 真は不鮮明であり、新井氏の取材でも「よほど親しい人でない限り女性を特定するのは無理だろう」と写 真を見せられた住人は語っている

残念ながら捜査は一向に進展せず、電話をしてくれた方の情報通り専従捜査班の人員を4月から20人に半減させ、捜査を続けている。そして、依然として「女性は立場上、被害者。被疑者扱いには出来ないし、プライバシーの侵害にもなる」(吉水副署長)との理由で公開する事も拒んでいる。

新井氏の目伏せやボカシを入れるなど最大限人権に配慮して、公開することも可能ではないかとの問いに対しても、副署長は「そういうことはいっさい考えていないし、今後も(映像や写 真を)公開するつもりはない」と答えた。’真相解明に全力を上げる、と県警は力むが、ならばなぜ専従捜査班を縮小するのか。映像の公開にしても”考えてもいない”というのはあまりにも思慮がなさ過ぎる’と新井氏もその不可解な対応に憤りを隠すことが出来ない

おじいさんの奥様に対して未だに警察は謝罪さえもしていないのだろうか、新井氏の取材に応じられた夫人は「世間様に何ら恥じらうこと無く生きてきた主人が、なぜあんな屈辱の中で最期を迎えなければいけなかったのか。主人の最期の場面 を思うと、悔しくて。悔しくて...」と涙をこぼしている。
また、「あのとき、主人が死ぬ程の思いで反抗したのは、きっと自分の誇りを傷つけられたからです。大人しい主人が、最後の最後まで、声が出なくなって呻ってまで守ろうとしたのは、やっぱり自分の誇りだったと思うんです(後略)」

解決の兆しさえも見えないこの事件、夫人は新井氏にペットのハムスター(モルモット)を氏の帰り際に見せられこう語られたそうである。

「名前は「マロン」ちゃん。主人は仕事から帰って来ると、真っ先に”ただいまの挨拶”をしていました」

新潮45の誌上、某大型掲示板の上で消えた女性を言及しているので、割愛させて頂くが、今回、この取材記事を読んで、警察は何の為に存在するのだろう、とその存在に疑問を抱く。名誉、果 ては人命まで冤罪によって奪われた事件を眼前にして平然としていられる存在なのだろうか。スピード違反等の軽犯罪を抑制するだけで、地方が管轄する中規模の犯罪はまったく抑制出来ていない様に思える。また、この件が以前に語られた、警察の暴行が防犯カメラに納められていて、内部でこの問題をもみ消そうとするのであれば、非常に組織として自己改善する機能が完全に停止しているとしか見えない。副署長の反応からしても、今回起こった誤認逮捕防止の策が警察内で明確に取られていない様子である。この事件に類似した冤罪事件が再び起こりえるだろう。その時の被害者は貴方自身かもしれない、貴方の親族、知人かもしれない。


この事件を記事にされた新井省吾氏と新潮社に謝意と賞賛を込めて


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