作:◆pTpn0IwZnc
「どうやら今は誰もいないようね」
人が居た形跡は散見されるも、今現在は誰も居ないようだ。
それでも警戒を緩めず、無人の城内を歩く。
消耗が激しい。どこか休める場所を見つけなくてはならない。
途中、男の死体が放置されている部屋を見つけたが、部屋中血まみれだったのでそこは避ける。
幸い、他にもいくつか部屋は見つかった。
呪文を唱え、内側から扉に魔法の鍵を掛ける。
この扉は魔法によって鋼鉄よりも固くなり、『ラスタ』と唱えない限り決して開かない。
「竜牙兵も作っておきたい所だけど、牙が無いものね……」
もし竜の牙が有っても作れなかったかもしれない、とカーラは気付いていた。
消耗が激しい。
本来存在すべきでない世界に居るせいだろうか。
一つ一つの魔法を唱える度に、通常に倍する精神力を消費してしまう。
それでもなお多くの魔法を扱えるのは、
古代魔法王国カストゥールの生き残り、いや、亡霊たるカーラならではだ。
激しい戦いのおかげか、着ていた服は破れ、血に塗れている。
このままでは悪目立ちしてしまうと思い、城内で発見した貫頭衣に着替えていると、軽い目眩を覚えた。
冷たい床にふらりと腰を降ろす。
血が足りない。
食欲は無くむしろ嘔吐感が有る。しかし、食べねばならない。
デイパックに入っていた食物を無理矢理喉に詰め込み、咀嚼もそこそこに水で飲み下す。
意志を強く引き締め、沸き上がる嘔吐感を堪えた。
ようやく一息ついた頃、妙な事象にカーラは気がつく。
疲労は残っているのだが、先程までは不安定だった宿主の肉体が安定してきているのだ。
変質し続けていた身体が定着し、己の意志がしっかりと伝わるようになる。
同時に、何故か運動能力が落ちている。
「身体が安定するのは良いけど、運動能力まで落ちてしまうとは困ったものだわ」
……カーラには知る由も無かったが、
先の戦いで失血した事により、祐巳の躰に混ざっていた竜の血の多くが失われた。
割合が少なくなった竜の血は薄く薄く拡散し、結果、祐巳は単なる食鬼人に戻っていたのだ。
『単なる食鬼人』とはいっても、身体能力は常人を凌駕する。
もっとも、この島に集められた人間の中で、常人がどれだけいるのかは疑問だが。
疲労を回復する為、灰色の魔女は眠りにつく。
少女の額にはめられた意匠を凝らされた額冠には、人間の双眸にも似た模様が刻まれている。
閉じられた少女の目とは対照的に、額冠の目は開いたまま。
その目は片時も閉じられることはないのだ。
ロードスの空から灰色の雲が晴れぬよう、気を配らねばならないゆえに。
【G-4/城の中の一室/一日目、13:05】
【福沢祐巳(カーラ)】
[状態]:食鬼人化。精神、体力共に深刻な消耗。睡眠にて回復中。
[装備]:サークレット 貫頭衣姿
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り/食料減)
[思考]:少しの睡眠後、行動/フォーセリアに影響を及ぼしそうな参加者に攻撃
(現在の目標、坂井悠二、火乃香)
[補足]:『祐巳』は12時の放送は聞いていない
(但し、『カーラ』は聞いているので、記憶の共有により認識している可能性も)。
2005/05/23 修正スレ111-3