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282:矛盾の中の本質

作:◆WqFkbhvlZA

 坂井悠二は次に進む場所を考える。シャナを探すため、そして物語を伝えるため

「そうなると人が多く集まりそうな場所に行くべきだよな」

 僕はMAPを取り出し、現在の位置を確認。11:00までは禁止エリアにはならないことを確認し周囲を確認する。

「一番目立つのはあの城なんだけど……あそこは危ないんだよな。
それに、僕の力は制限されててほとんど存在の力を認識できないみたいだしな」

 さっきまで追って来た化け物や助けてくれた人。
 その全ての存在をほとんど察知できず、また詳細も掴めなかった。
 これは間違いなく僕の力が制限されている。……いや、むしろ封印と言ったほうが近いのだろうか

「そういえば長門さんも機能が制限されているとか言ってたな」

 力の制限……これはどういうことだろうか
 管理者側による殺し合いをさせやすくするための制限?
 いや、それなら僕の力は存在を察知するだけの能力。ここまで強く制限する理由にはならない。
 そうなると……

「管理者は力の制限を無差別にやっている。
呪いの刻印とは関係なくこの空間全体で制限を掛けているということかな」

 そう呟き、しかし疑問がよぎる。
 この空間に制限が掛けられているとすると、管理者が僕の前からすぐに消えることができる理由が分からなくなる。
 もちろん管理者達が例外的に制限を受けない可能性もあるが、

「いや、それも無いか。制限されたこの空間ですらあんな化け物が沢山いるのに、
誤作動を起こしそうな例外を作るとは考えにくい」

 そうなると、やはり制限は個別に掛けられていることになる。
 そして、僕の力がこれだけ徹底的に制限されている理由として考えられるのは、
管理者にとって僕の力が危険な物であるということが考えられる。
 なぜ僕の力が管理者にとって危険なのか……いや、僕の力ではなく零時迷子の力が危険なのか?
 零時迷子は根源的には事象に干渉する宝具……使い手によってはこの空間を塗り替えることも可能なのかもしれない。

「そういえば……城が危険と言ったのは管理者だったよな。」

 おかしい。殺し合いをさせるために集めたのになぜ逃げろと言ったのか。
 本来その言葉は管理者側にとってはありえないはず。
 それは矛盾した行動。この矛盾する事柄に何か繋がりがあるのか?

「ひとつは、城の中が危険ではなかった可能性」

 あそこは本当は危険ではなく、僕達を動かさせるために言った言葉。

「……いや、外に出て分かったけど、あそこまで目立つ場所、このゲームに乗った人も集まるはず。
むしろ気づかずにあそこにいた方が危険だった」

 では、他に理由があるとすれば、

「あの時、あの場所で僕が死ぬことは管理者に不都合だった可能性」

 僕があそこで死ぬのは管理者にとって不味いことだった。
 何故か。なぜあそこで僕が死ぬことが不都合なのか。
 ……何が管理者にとって困ることか。まずはそこから考えるべきだ。いやその答えは簡単だ。
 
 管理者にとって最も困ることは呪いの刻印をはずし、この世界から脱出すること。

「脱出……僕が死んだ場合、そこには零時迷子が残り、それがあの城だったら必ず誰かが拾うことになる。
もし零時迷子を誰かが拾った場合はどうなる? それがもし長門さんだった場合は?」

 彼女は自身の力で周囲の空間を作り変えていた。もしそこに僕の零時迷子があったらどうなる?
 ……おそらく彼女はこの空間の事象にさらに深く干渉できるようになる。
 そしてもうひとつ。僕の零時迷子は支給品ではなく、僕の中に存在するもの。
 取り出すことはできず、しかし呪いの刻印を破る可能性はあるから、厳重に制限を行った。
 僕みたいに世界自体に影響を与えるものには、特に強い制限が掛けられているのだろう。
 
 ……個別に制限が掛けられているとしたら、その制限の原因は呪いの刻印である可能性が高い。
 そして、呪いの刻印は僕と言う存在に対し刻まれている。つまり僕が消えれば零時迷子に対する制限が消える。
 僕が消え零時迷子が他の人に渡れば、事象に干渉し、この空間を、呪いの刻印を破る可能性が高まる。
 問題は、僕が零時迷子を蔵している限りなされないということか……
 だからこそ管理者はあの場所で僕が消えることを良しとしなかった。

 ……全部僕の推論の過ぎない。本当は、この空間全体に制限が掛かっているだけかもしれない。
 零時迷子にそれだけの力は無いかもしれない。それでも、物語を広める前に僕が消えた場合のことも考える必要がある。
 今できることはすべてやる。そうしなければ帰ることはできない。

 僕はMAPの裏に力の制限に対する推論を、零時迷子のことを、そしてシャナのことを書いていく。
 これで僕が消えても、他の人が零時迷子の力を知る可能性は高くなる。

 全てはシャナを守るため。僕が消えた後もシャナが生きられるようにするため。

 一通り作業が終わった後、もう一度MAPを見る。すでに疲労は取れていた。

「まずは北上しよう。城以外にも人が集まる場所があるかもしれない。」

 ―――そして坂井悠二は北の森に踏み込む。

【D-5/森/1日目・10:00】
【残り85人】
【坂井悠二】
[状態]:疲労は回復・感染(魔女の血の入った水を飲む、水はボトルに半分残っている)
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイパック(缶詰の食料、IAI製)、地下水脈の地図 (かなり劣化)
[思考]:1.シャナ、長門の捜索。2.出来るだけこの物語を多くの人に知らせる
[備考]:悠二のMAP裏に零時迷子のこと及び力の制限に対する推論が書いてあります。
    ただし制限の推論が正しいかは不明です。
    缶詰の中身、物語・感染の詳細は後の人に任せます

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