作:◆I0wh6UNvl6
「じゃああんたたちも日本の、しかも東京から来たっていうわけ?」
男と女が小洒落た喫茶店の奥で話し込んでいる。
端から見ると兄と妹のようにも見えないし年の近い親子のようにも見えない。
それっぽいのはお嬢様とその護衛、または誘拐犯とその対象といったところか。
だが護衛にしては相手に対し敬意が足りないし誘拐されたものとしては緊張感が足りない。
「まあな。」
店の構造的に入口から誰かが入ってきたら音が鳴るようにできていてかつ気付かれずに非常口から外に出ることが可能なので選んだのだった。
彼らは4時頃にここにきて以来ずっと話し込んでいる。
…というよりほとんど朱巳が一方的に話しかけているだけだが。
「けどあたしたちの世界の新宿はそんなもんじゃないわよ。
あたしたちの世界の東京は…なんつーか飲み込まれそうな場所よ、流れの中心なんだけどだからこそなのか、穴ぼこの底って感じなのよね。」
「こっちも似たようなもんだ…まさに掃き溜めみたいな場所だ。」
「はあ…どこの世界も変わらないものね〜、なんか面倒くさ。」
「死にたくなったら好きにしろ、止めはしない。」
「あんたっていっつもそうなの?そんなんじゃあ…」
彼の手が言葉を遮る。
彼女も察してトーンを落とす。
『誰かきたの?』
答える前にドアが開く、カランカランと言う音が来客を告げた。
『しゃーない、退散しますか。』
非常口から出ようとする。
「そこに誰かいるのは分かっている、出てきてくれないか?」
店内に低い声が響き渡った。
「嫌だっていったら?」
朱巳は聞いてみる、特に深い意味はない。
「この状態で話を続けるだけだ。」
答えを聞いて朱巳は姿を表した、刑四郎は見えない位置の座席に座る。どうやら見学を決め込んだようだ。
「話って何?」
相手を見る、えらくファンタジーな格好をしている。どことなく騎士や侍を連想させる雰囲気を持つ男だった。
「人を探している、銀髪の髪で目元を隠す仮面をつけているんだが…。」
「この島どころかあたしのこれまでの人生でも出会ったことないわね。」
物怖じせずに答える、こういうところが彼女の強さのあらわれか。「そうか…あと十字架の形をしたものを探している。見たことないか?」
「何それ、えらくアバウトね。なんで探してんの?」
「ある男に言われてな、なんでも俺に必要な物らしい。
殻を破るとかどうとか…。」
彼女にはその話を聞いて思い当たるふしがあった。
「あんたあの単細胞に目ぇつけられたの?とんだ災難ね〜。」
相手はどうやら驚いたようだ。
「あいつを知っているのか?」
「ええ、なんつったって同僚だから。」
なんだかだるそうに答える。
「そうなのか?だがあんたが戦いに向いているようには…。」
「組織のやつがみんなあんな単細胞みたいだったら世界はとっくに滅亡よ。」
本気とも冗談ともつかない調子で言う。
「だがじゃああんたは…。」
「そう、十字架がどういうものかも知ってるわよ、組んで損はさせないわ。」
相手と同時に刑四郎も『は?』と目を丸くする。
「いいでしょ?あんた強そうだし、今のパートナーとだと話もイマイチ盛り上がりに欠けるのよね〜。」
刑四郎は深く溜め息をついた。
こんなところで話を盛り上げても意味ないだろうが。
「あたしはあんたの目当てのものを見たらすぐに教える、代わりにあんたはあたしを守る、取引よ。」
「…いいだろう、今から目標が見つかるまでの間だが。」
相手は了承した。
「あたしは九連内朱巳。で、そこにいんのが屍刑四郎。」
「なんで勝手に話を進める。」
多少怒りながら姿を表す。
「ヒースロゥ・クリストフだ、よろしく頼む。」
風の騎士は名乗った。
「さてと、とりあえず移動しましょうか。
フフン、なんだかお姫様になった気分ね。」
自分の両脇に立つ男達を見ていう。
その言葉に対し、彼らは
『まあ確かに月柴姫に通じるものはあるな。』
『お姫様より女王様のほうがあってんだろ。』
とそれぞれ心の中でつぶやいた。
【嘘つき姫とその護衛たち】
【A-2/喫茶店/一日目8:00】
残り90人
【九連内朱巳】
【状態】上機嫌
【装備】なし
【道具】パーティゲームいり荷物一式
【思考】エンブリオ探しに付き合う、とりあえず移動。
【屍刑四郎】
【状態】呆れ気味
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】とりあえずついていってみるか。
【ヒースロゥ・クリストフ】
【状態】背中に軽い打撲
【装備】鉄パイプ
【道具】荷物一式
【思考】EDを探す。九連内朱巳を守る。ffとの再戦を希望する。