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211:白竜王の暴走

作:◆Aoc3zcD1Y

竜身いや、いまや竜人と化した竜堂終は西へと走り出す。

目の前の森に突入し、木々をなぎ倒しながらも突き進む。
森の破壊される音と時折あげる竜の咆哮は、聞く者の魂を震撼させた。

「今のは竜王の気配!?、まさか…!?」
「悲しみとやり場のない怒りのこもった叫び声だね。世界の敵となる可能性がある。」
「えっ?、藤花ちゃん何を言っているの?」
「えっ。私何か言いました?」

森をぬけ茂みを抜け、草原を疾走し、それでも竜人は止まらない。

現在位置 【E-5/草原/一日目、08:25】

【竜堂終】
[状態]:竜への不完全な変化(精神的にはかなり竜寄り)
[装備]:ブルードザオガー(吸血鬼)
[道具]:なし
[思考]:1.茉理を守る 2.それ以外の一切は動物的本能(攻撃する者は殲滅)

[侵食〜Lose Control〜]へ続く

竜人はE-4の倉庫を出た後も西へ西へと走り続ける。
一声吼えると、分厚い空気の膜を体に纏わせ、行く手を阻む木々等をなぎ払いながら突き進む。
遊園地に突入し、アトラクションの一部を破壊し、そのまま海上を突き進む。

しかし、いつ終るとも知れない竜人の暴走も唐突に終わりを告げた。

数百メートルほど海上を進んだ所で、見えない壁のような物にぶち当たる。
竜人は理解した、これが自分達を閉じ込めている檻の柵だと。

再度全力でぶち当たる。膨大なエネルギーをもった一撃。
この世界の界面がほんのわずかに揺れた。
世界の状態を感知できる能力者がいたとして、それでも感じ取れるかどうかという些細な影響。

たった、それだけ。

そして、腕の刻印が冷たい光を発し輝きだす。
刻印の効力で急速に力を減じられ、命の火が燃え尽きた竜人は海に落下していく。

薄れ行く意識の中で、終は長兄の姿を見ていた。
「ごめん始兄貴、なにがあっても暴走して意味もなく破壊して回るなんて、家訓に反するよなぁ。」

「だけど俺許せなかったんだ。こんな世界も、始兄貴の助けになれなかった自分も…。」

「茉理ちゃんを頼むって?嫌だよ、兄貴が自分でやれよ。それに俺はもう…。」




気がつくと、砂浜に打ち上げられていた。
「ここはどこだ?俺は…始兄貴に助けられたのか?」
「腹が減ったなぁ。地図も時計も何とかしないと。」

今回の件を仕組んだ相手を許してはおけない。
必ず一発殴らないと気がすまない。
だが自分1人の力では無理ということも身にしみてわかった。
腕の刻印もそのままだ。
茉理を保護し、協力者を探し、反撃の手段を考えないと。
しかしまずは15歳の健康な男子の旺盛な食欲を満足させないといけない。

現在位置【C-1/浜辺/一日目、09:30】

【竜堂終】
[状態]:通常/空腹
[装備]:ブルードザオガー(吸血鬼)
[道具]:なし
[思考]:1.食料調達 2.茉理の捜索 3.地図や時計などの入手or協力者との接触

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