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193:雌伏する暗殺者、能動する殺人者

作:◆1UKGMaw/Nc

 一人、二人、三人、四人……五人。
 そして恐らくその中に、ほのちゃんはいない。

 出れなかったというのもあるけれど、この城を戦場と想定して正解だったようね。
 これほど目立つ建造物なら、放っておいても人が集まってくる。
 城の構造は把握した。
 ある程度は狙撃ポイントも割り出した。
 一時間ほど仮眠も取った。
 そして得物は使い慣れたウェポンシステム。
 用意は万全に近い。
 ……ただ、うまく気を練れないのが気がかりね。
 龍気槍は使えないかもしれない。
 龍気圏を構築するのに、恐らく普段の倍以上の時間がかかる。
 これが必要になるほどの使い手がいないことを祈るしかないわね。

 この城にはもう一人いたけど、あの赤毛の彼女は私の相手をするより外に出る道を探すことを選んだようだ。
 私の存在には気づいていたようだけど。
 私も、彼女の相手をするよりも準備を整えることを選んだ。
 彼女が外との接点を作ってくれれば、私にとっても都合が良かったから。
 彼女の気配は、今いる五人が城の中に入ってから感じ取れなくなっている。
 城門が開いているのは確認した。彼等をやり過ごして外に出たのだろう。
 タイミング的に、城門を開けたのはあの五人。
 私も一度確認したけど、アレはそう簡単に開けられるものじゃない。実際、赤毛の彼女も開けられなかった。
 返せば、あの城門を開けるだけの力を持つ者が、少なくとも一人はいるということ。
 単なる力馬鹿ならいいのだけれど。

 ……一人、別行動を取った。
 行きましょう。


 ずっしりとした重みが右手にある。
 やっぱり全弾装填されていると安心する。
 Eマグなら、もっと良かったのだけれど。

 起きたら目の前に『頭欠』の屍体があったからびっくりした。
 多分、寝る前に会ったあの男の人。
 きっと神様のバチが当たったんだ。
 俺にウソを教えて、ミラを隠そうとしたんだから。

 彼の名簿を見せてもらったら、本当にミラの名前は無かった。
 それで分かった。
 あの主催者たちがミラを隠しているんだ。
 ミラは俺のママになってあげると言ってくれたんだ。
 二人で街を出て、遠く東の国まで旅をするはずだったんだ。
 けれど、当日の朝目を覚ましたら、俺はあの会場にいた。
 あいつらが俺とミラを引き離したんだ。
 ということは、この男の人も騙されていただけなんだな。
 神様、バチを当てる相手を間違ってます。
 だから代わりに俺がバチを当てます。
 そしてミラを助け出します。

 『頭欠』の彼にお別れを言って、また森を歩いていたんだけど、まさかお城があるとは思わなかったな。
 こんなの物語の中でしか見たことないや。
 物語では、悪の大ボスは大体こういうところに隠れているものだった。
 ここにいるかな。あいつらと、ミラは。

 行ってみよう。
 待っていて……ミラ。

【残り94人】
【G-4/城の中/1日目・06:20】

【パイフウ】
[状態]健康
[装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
[道具]デイバック一式。
[思考]主催側の犬になり、殺戮開始/この五人を皆殺し/火乃香を捜したい。

【G-4/城門前/1日目・06:20】

【アーヴィング・ナイトウォーカー】
[状態]:情緒不安定/修羅モード
[装備]:狙撃銃"鉄鋼小丸"(出典@終わりのクロニクル)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:主催者を殺し、ミラを助ける(思い込み)

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